【奥歯の入れ歯を入れたい方、必見!】現役歯科医師が奥歯の入れ歯について解説します。

【奥歯の入れ歯を入れたい方、必見!】現役歯科医師が奥歯の入れ歯について解説します。

前歯を失った時と違って奥歯を失っても「見えないからそのままでも良いか」と放置する方が少なくありません。

しかし

・前歯でしか食べられない

・お顔の印象が変わった

・お食事が楽しめない

などと感じることはありませんか?

奥歯がないことによって不便を感じながらごはんを食べなければならないって憂鬱ですよね。

奥歯に入れ歯を入れることで食事ができるようになるとお顔も若返り健康な生活を送ることができます。

なぜなら奥歯で噛むことにより頬の筋肉が動き血流が良くなるからです。

 

この記事で入れ歯について知ることで「どの入れ歯が良いのか」を知ることができます。

それでは「奥歯の入れ歯」について解説します。

目次

1章:奥歯の入れ歯について最初に必ず知っておくべきこと

1-1:奥歯の必要性

1-2:奥歯がないまま放置するリスク

1-3:奥歯の入れ歯のメリット、デメリット

1-3-1:奥歯の入れ歯のメリット

1-3-2:奥歯の入れ歯のデメリット

2章:奥歯の入れ歯の種類と特徴

2-1:一般的な入れ歯(保険)

2-2:テレスコープ義歯(自費)

2-3:金属床の部分入れ歯(自費)

2-4:ノンクラスプデンチャー(自費)

2-5:マグネットデンチャー(自費)

3章:奥歯の入れ歯に慣れて快適な生活を送るコツ

3-1:発声練習

3-2:軟らかい食べ物から徐々に慣らしていく

4章:奥歯の入れ歯以外の治療法もある

4-1:ブリッジ

4-2:インプラント

5章:奥歯の入れ歯が適切な人は?

5-1:「ブリッジ」ができない方

5-2:「インプラント」ができない方

5-3:「ブリッジ」「インプラント」はできるが他の歯に問題を抱えている方

5-4:将来のことを考慮して治療を考えたい方

6章:奥歯の入れ歯に関するQ&A

6-1:入れ歯は1本だけでできるのですか

6-2:部分入れ歯は好きなものは何でも食べられますか

6-3:痛くても慣れるまで装着した方が良いのですか

6-4:夜寝るときは外さないといけませんか

まとめ

1章:奥歯の入れ歯について最初に知っておくべきこと

1-1:奥歯の必要性

奥歯は食べ物を「かみ砕く」のに必要です。

また椅子から立ち上がる、荷物を持ち上げるなどの日常の動作の際にも必要です。

例えば

重い荷物を地面から持ち上げるときに奥歯を食いしばることで

身体全体に力が入り持ち上げることができます。

この時奥歯には場合によってはご自分の体重以上の力が入ります。

奥歯はこのような力に耐えられるよう他の歯と違い噛む面が広く根っこの本数も2〜3本あります。

また奥歯があることにより左右の顎の関節(耳の前辺りにあります。)に過度の力が入らないように顎の関節を守っています。

このように奥歯は噛むだけでなく身体にとって重要な役割を担っています。

1-2:奥歯がないまま放置するリスク

奥歯がないまま放置すると

・虫歯になりやすい。

→歯が移動して歯ブラシが届かない場所ができるので

 虫歯になりやすいです。

・歯が抜ける。

→残っている歯に噛む力が掛かり過ぎてしまうので

 歯を支えている骨が痩せて歯がぐらつきやがて抜けます。

・かみ合わせがずれる。

→歯が移動するのでかみ合わせがずれてくる。

 治療の際は移動した歯を元に戻す治療が必要となることがあり

 戻せない場合は抜歯することもあります。

・顔が変形する。

→奥歯で噛むときには頬の辺りにある咬筋と呼ぶ太い筋肉を使いますが

 奥歯がないとこの筋肉は使われませんので衰えてたるんできます。

・胃腸に負担がかかる。

→食べ物をかみ砕くことができないので

 胃腸に負担が掛かります。

・肩こりや頭痛が起きる。

→奥歯は身体のバランスを維持することに関わっているので

 奥歯がないと姿勢が崩れ肩こりや頭痛が起こることがあります。

1-3:奥歯の入れ歯のメリット、デメリット

1-3-1:奥歯の入れ歯のメリット

・取り外しができるので残っている歯の清掃が行いやすい

・1本の欠損から適応できる

・入れ歯が壊れても修理可能な場合が多い

1-3-2:奥歯の入れ歯のデメリット

・慣れるまで時間が必要

・入れ歯の種類によっては残っている歯に過度の負担が掛かる

2章:入れ歯の種類と特徴

奥歯の入れ歯には主に5種類あります。

1、一般的な入れ歯(保険)

2、テレスコープ義歯(自費)

3、金属床の部分入れ歯(自費)

4、ノンクラスプデンチャー(自費)

5、マグネットデンチャー(自費、一部保険)

それぞれの特徴について説明します。

2-1:奥歯の入れ歯の種類と特徴

2-1-1: 一般的な入れ歯(保険)

 

残っている歯にクラスプ(金属のバネ)を引っ掛けて入れ歯を外れないようにする入れ歯です。

歯の欠損部に歯肉部分のピンク色の床(しょう)を張り人工歯を並べます。

床(しょう)はレジンと呼ぶプラスチックです。

<メリット>

・安価である

・修理が可能

<デメリット>

・クラスプを掛けている歯の寿命が短くなる

・入れ歯に臭いや汚れが付きやすい

・耐久性がない

<費用の相場>

約1万円~

<オススメ度>★

2-1-2:テレスコープ義歯(自費)

テレスコープ義歯は130年以上の歴史があるドイツ発祥の入れ歯です。

テレスコープ義歯の基本構造は入れ歯を支える歯に二重冠構造を用いて入れ歯を外れないようにしています。

主に3種類あるテレスコープ義歯のひとつである

「コーヌステレスコープ」は

一つ目の冠を入れ歯を支える歯に装着し二つ目の冠は入れ歯に仕込み、

お茶筒の蓋と胴体の仕組みで外れないようにします。

特徴は

・残っている歯を守りながら使用でき万が一、歯が抜けたとしても修理しながら使用できる

・かなり頑丈なので他の入れ歯に比べ良く噛めて見た目が良い

・就寝時は外さずに休める

・残っている歯に二重冠構造を用いるため歯を削って冠を作製する必要がある

です。

<メリット>

・残っている歯を守ることができ全体として歯の寿命を延ばせる

・残っている歯にクラスプを掛けないので見た目が自然

・床(しょう)と呼ぶピンク色のプラスチックの材料(レジン)が高品質であるため汚れや臭いが付きにくいため誤嚥性肺炎などのリスクが軽減

・修理が可能

・他の入れ歯に比べ違和感が少なく良く噛める

<デメリット>

・作製時間がかかる

<費用の相場>

約100万円〜

<オススメ度>★★★

2-1-3:金属床の部分入れ歯(自費)

金属床の部分入れ歯は残っている歯にクラスプ(金属のバネ)を掛けて外れないようにする仕組みは

一般的な入れ歯(保険)と同じですが糸切り歯やその奥の歯には目立たないような形のクラスプにすることができます。

床の部分に金属を使用して薄くても噛む力に耐えられるようにすることができます。

薄くできるため一般的な入れ歯(保険)より違和感が少ないです。

金属床義歯と併せて作製されるクラスプには

目立たずなるべく歯に負担をかけないRPIクラスプと呼ばれるものがあります。(歯によって作れない場合もあります。)

基本的にRPIクラスプに合わせた被せ物を作製すると精密なものが仕上がります。

<メリット>

・一般的な入れ歯より薄くできるので違和感が少ない

・一般的な入れ歯に比べ壊れにくい

<デメリット>

・クラスプを残っている歯に掛けるので目立つことがある

・クラスプを掛けている歯が抜歯となったとき修理が困難

・入れ歯の着脱が緩くなる(外れやすくなる)ことがある

・寝るときに外す場合が多い

<費用の相場>

約30万円~

<オススメ度>★★

2-1-4:ノンクラスプデンチャー(自費)

ノンクラスプデンチャーは一般的な入れ歯のクラスプ(金属のバネ)がピンク色の床(しょう)と

一体化になっている入れ歯です。

ピンク色の床の素材は特殊な素材の樹脂で一般的な入れ歯の床と違い弾力があります。

この弾力を利用して入れ歯を外れないようにします。

一番の特徴は金属のバネを利用しないため目立つことがありません。

<メリット>

・クラスプを使用しないため目立ちにくい

<デメリット>

・床(しょう)の部分が劣化しやすい

・臭いや汚れが付きやすく経年的に汚れが落ちにくくなる

・修理が困難な場合が多い

・耐久性がない(3~4年程度)

・適用できる症例に制限がある

<費用の相場>

約15万円から

<オススメ度>★

2-1-5:マグネットデンチャー(自費、一部保険)

 

マグネットデンチャーは磁性アタッチメント義歯とも呼びます。

入れ歯の内面に磁性アタッチメント(磁石)、ご自身の歯に適切な処置を行いその頭の部分にキーパーと呼ぶ磁性ステンレス鋼を装着します。

磁石の力で入れ歯が外れにくくなります。

一般的な入れ歯のような金属のバネを使用しないので見た目がよくなり外れにくくなります。

保険適用範囲は「多数歯欠損において9本以上歯がない方。」となっています。

<メリット>

・クラスプを使用しないので見た目が良い

<デメリット>

・キーパーと呼ぶ磁性ステンレス鋼を装着装着するため健康な歯の神経をとる必要がある

・キーパーと呼ぶ磁性ステンレス鋼を装着する歯の高さを歯茎の縁あたりまで短くしないといけない

・キーパーを装着した歯が割れることがある

・入れ歯が横にずれる

・MRI撮影時にアーチファクト(歪んだ像)を出す可能性があるので撮影の際はキーパーを撤去する可能性がある

・心臓にペースメーカーを入れている方は作製できない

<費用の相場>

キーパー 1個 約5万円~

入れ歯 約30万円~

<オススメ度>★

3章:奥歯の入れ歯に慣れて快適な生活を送るコツ

入れ歯を装着した直後は違和感がありますので痛みがなければ常に装着することで早く慣れます。

 

この章では早く慣れて頂くために行って頂きたいことを解説します。

3-1:発声練習

特に上の入れ歯で上の前歯の裏側を覆うタイプの入れ歯は

サ行、タ行の音が発音しにくくなります。

1、2週間で慣れますが本やスマホの文章を音読したり歌を歌うなどの発声練習をすることでより早く慣れます。

3-2:軟らかい食べ物から始める

残念ながら新しい入れ歯を装着した直後から何でも食べられるというわけにはいきません。

今まで力が掛かっていない歯のない部分の歯茎に強い嚙む力が加わると

痛みを感じたり靴擦れのような傷ができたりするので柔らかめのお食事から徐々に慣らして下さい。

通常1,2週間で普通にお食事ができます。

4章:奥歯の入れ歯以外の治療法もある

奥歯がない場合の治療法は「入れ歯」のほかに「ブリッジ」「インプラント」があります。

それぞれの治療の特徴について説明します。

4-1:ブリッジ

ブリッジは歯がない部分の両隣の歯を削り繫がった被せものをセメントで装着するものです。

一番奥の歯とその手前の歯の大臼歯2本ない場合はブリッジはできません。

その場合は「入れ歯」か「インプラント」が選択肢となります。

ブリッジはブリッジにするための歯が健康でブリッジの土台としての条件が揃っている方に適しています。

ブリッジの土台となっている歯が万が一、抜歯となった場合はブリッジを撤去し再治療となり修理をすることは困難となります。

4-2:インプラント

インプラントは歯がない部分の歯槽骨に

人工歯根(フィクスチャー)を埋入しその上に支台(アバットメント)を建てそこに被せ物を装着するものです。

インプラントを埋入するための歯槽骨が十分あり解剖学的に可能な方、

インプラントが不可能な糖尿病、骨粗鬆症、リウマチなどの疾患にかかっていない方、

喫煙していない方に適しています。

インプラントが万が一、脱落や撤去となった場合は歯槽骨の状態によっては

再度インプラントができないことがあります。

また他の歯が抜歯となった場合その部位にインプラントが可能かどうかはその時の診断結果に依ります。

5章:奥歯の入れ歯が適切な人は?

「奥歯がない」といっても

「何本ないのか」

「場所はどこなのか」

「ほかの歯の状態はどうなのか」など

どのような状態なのか

また患者様のご年齢、ご希望によって治療の選択が違ってきます。

 

この章では、大まかにどのような方が「奥歯の入れ歯」に適しているのか説明します。

5-1:「ブリッジ」ができない方

一番奥の歯とその手前の歯の大臼歯2本がない場合ブリッジはできません。

一番奥の歯が残っていてもその状態が悪い、その手前の歯が2本以上ない場合などは長持ちするブリッジはできません。

ブリッジはその条件によってその可否や寿命が変わってきます。

ブリッジで長期の予後が望めない場合は入れ歯が良いでしょう。

5-2:「インプラント」ができない方

インプラント埋入予定の歯槽骨がない、全身疾患によってインプラントができない方は入れ歯が良いでしょう。

5-3:「ブリッジ」「インプラント」はできるが他の歯に問題を抱えている方

失った歯の部分に「ブリッジ」や「インプラント」の治療が可能な場合でも

ほかの歯がグラついているなど状態が悪い部分がダメになった時のことを見据えた

治療方法を考えなければなりません。

そのことを考えずにインプラントやブリッジを装着してしまい1年も経たずに壊れてしまうのなら

最初からきちんとした「入れ歯」治療を選択することをお勧めします。

 

5-4:将来のことを考慮した治療を希望される方

「ブリッジ」の治療後にその土台となっている歯や土台にしていない歯が抜歯となった場合は「ブリッジ」を壊して再治療が必要となります。

再度同じようにブリッジができるという保証はありません。

「インプラント」の治療後に他の歯を抜歯した場合やインプラントが脱落した場合には再度インプラントができないことがあります。

奥歯のない方の治療のスタートのご年齢が特に40代以降の方は将来のことを考慮して治療したほうが良いと思います。

たとえば40代以降で「ブリッジ」「インプラント」の治療を行い

10年20年後に他の歯がダメになった

あるいはブリッジ、インプラントの再治療をしなければならなくなった場合、

数回の治療で終わることは少ないからです。

再度ブリッジにする場合では既存のブリッジを外して新たなブリッジを作ることもあります。

再度インプラントにする場合では外科処置が必要ですが

もしかしたら骨がない、全身疾患のためインプラントができないこともあります。

またお口の中にインプラントが多く入っている方が脳梗塞やパーキンソン病などで介護が必要になった場合

介護士ではお口の中を綺麗にすることは困難です。

インプラントが歯周病のようにインプラント周囲炎になって脱落することもあります。

インプラントが脱落するとその治療も難しくなります。

 

病院の看護師や介護施設の介護士は患者様や施設利用者の

メインテナンスができなくなったインプラントのお口の中の悲惨な状態を

たくさん目にしているのでこれらの職業の方のほとんどはインプラントは希望しません。

取り外し可能な「入れ歯」を選択します。取り外せることでお口の中を清潔にできるからです。

ただし「入れ歯」にも前述したような特徴がありますので慎重に選んで下さい。

なるべく残っている歯の寿命を延ばし万が一抜歯となっても修理しながら使用できる入れ歯をお勧めします。

6章:奥歯の入れ歯に関するQ&A

6-1:入れ歯は1本だけでできるのですか

1本歯がない場合でも入れ歯は作れます。

しかし支えとなる歯や相手側の歯の状態に依っては作れないことがあります。

6-2:部分入れ歯は好きなものは何でも食べられますか

部分入れ歯を装着して暫く慣れてきましたら普通に食べられるようになります。

ただし入れ歯の種類によって食べにくいものがあります。

6-3:痛くても慣れるまで装着した方がよいのですか

痛みがある場合は我慢せず外し歯科医院で調整してもらいましょう。

ただし長期間外しておくと歯が移動して入らなくなりますから早めに受診しましょう。

6-4:寝るときは外さないといけませんか

基本的には寝るときに外します。

しかしテレスコープ義歯は寝るときもはめたままで大丈夫です。

まとめ:奥歯の入れ歯について

奥歯の入れ歯は主に5種類あります。

1,一般的な入れ歯

2,テレスコープ義歯

3,金属床の部分入れ歯

4,ノンクラスプデンチャー

5、マグネットデンチャー

です。

奥歯の入れ歯のお勧めは「テレスコープ義歯」です。

特徴として以下が挙げられます。

・クラスプ(金属のバネ)が見えないので見た目が自然

・他の入れ歯と比べ良く噛める

・就寝時に外さなくてよい

・トラブルが生じても修理しながら使える

・残っている歯を守ることができ寿命を延ばせる

奥歯に歯がないと他の歯に負担が掛かり残せる歯が早期にダメになってしまうケースが少なくありません。

放置せず早く歯科医院を受診しましょう。

当院では部分入れ歯の治療に「テレスコープ義歯」(ホームページでは「ドイツ式部分入れ歯」となります。)を行っております。

入れ歯でお悩みの方、テレスコープ義歯に関心のある方は当院の入れ歯相談のご予約もしくはメール、LINEでの無料相談を活用して下さい。

 

 

 

筆者プロフィール

著者

イーストワン歯科本八幡
東 郁子

■経歴
  • 平成6年 鶴見大学歯学部 卒業
  • 平成7年 鶴見大学付属病院研修医 修了
  • 平成7年 都内の歯科医院 勤務
  • 平成30年 イーストワン歯科本八幡 開院
■所属学会/スタディグループ
  • ●IPSG包括歯科医療研究会
  • 第2回咬合認定医コース受講 咬合認定医 取得
  • 総義歯の基礎と臨床 受講
  • 顎関節症ライブ実習コース 受講
  • パーシャルデンチャーとテレスコープシステム 理論と実習コース 受講
  • 咬合治療の臨床 受講
  • ●日本臨床歯科医学会
  • レギュラーコース 受講
  • ●顎咬合学会