【総入れ歯は主に7種類あります。】現役歯科医師が総入れ歯の特徴について解説します!

【総入れ歯は主に7種類あります。】現役歯科医師が総入れ歯の特徴について解説します!

「歯が数本しかない」「歯が1本もない方」で

・食べ物が飲み込みにくくなった

・軟らかいものばかり食べている

・見た目が悪いのでマスクを外すのが怖い

・人と会いたくない

・歯医者さんで総入れ歯にしないとダメと言われて憂鬱

などのお悩みはありませんか?

このようなお悩みを早く解決して友人や家族と会食や旅行を楽しみたいですよね。

歯を失うとお口周りの筋肉の衰えによってお顔が老けた印象に変わります。

また発音や嚥下機能にも影響を及ぼします。

足を失った方が義足を装着して歩けるように歯を失っても総入れ歯を入れて噛めるようになります。

きちんとお食事ができるようになるとお顔の表情豊かになって日常生活が楽しくなります。

 

この記事では総入れ歯の種類と特徴を解説、皆様が良くご質問されることに回答しています。

目次

1章:総入れ歯とは

2章:総入れ歯の種類

2-1:一般的な入れ歯(保険)

2-2:マグネットデンチャー(一部保険)

2-3:金属床の入れ歯(自費)

2-4:上下顎同時印象法の総入れ歯(自費)

2-5:BPSデンチャー(自費)

2-6:シリコンデンチャー(自費)

2-7:インプラント併用の総入れ歯(自費)

3章:見た目が良い、噛める総入れ歯の3つのポイント

4章:総入れ歯に関するQ&A

まとめ

1章:総入れ歯とは

総入れ歯の構造は床(しょう)と呼ぶ歯茎部分と人工歯からなります。

一般的な総入れ歯では床はピンク色のレジンと呼ぶプラスチックから出来ています。

人工歯もプラスチックから出来ています。

1-1:総入れ歯が外れない仕組み

2枚のガラス板の間に水滴を垂らして重ねるとなかなか剝がれません。

この現象をウオーターフィルム現象といいます。

総入れ歯は主にこのウオーターフィルム現象のように

総入れ歯の内面と歯茎の間に唾液を介することによって

入れ歯が歯茎に吸盤のようにくっ付いています。

またお口周りの筋肉で入れ歯をサポートすることによって

入れ歯が外れないようにしています。

1-2:総入れ歯の床(しょう)の重要性

総入れ歯の歯茎部分の床は総入れ歯の機能や見た目において重要な役割を担っています。

噛む、話すなどの動きによって筋肉が動くと

総入れ歯の縁から空気が入り入れ歯が動いて外れることがあります。

入れ歯が外れないようにする為には

患者様のお口の大きさに適正にあった総入れ歯の床の大きさ、縁の厚みが重要になります。

また歯茎部分の顎の高さや幅によって総入れ歯のくっ付き具合が大きく左右されます。

顎の骨の高さがあり幅がある方が総入れ歯は外れにくいです。

患者様ご本人の感覚で床の大きさは決められません。

1-3:総入れ歯の人工歯の種類とかみ合わせの重要性

人工歯は素材によって以下に分けられます。

・レジン歯:プラスチックからできており人工歯の中で一番軟らかい。

      すり減りやすく変色しやすい。

・硬質レジン歯:プラスチックとセラミックの混合したもの。

        レジン歯よりすり減りにくい。

        保険適用の商品と保険適用外の商品があり品質に差がある。

・陶歯:陶材でできている。

    変色しにくいが床との接着が弱い。

 

多くの場合で硬質レジン歯が使用されます。

総入れ歯は上下のかみ合わせが安定すると床と歯茎の間の空気が抜け、外れないようになります。

かみ合わせが不安定になるとかたつきが生じ縁から空気が入るため外れやすくなります。

総入れ歯を食事や会話中に外れにくくするためにはかみ合わせを安定させることが重要です。

2章:総入れ歯の種類

総入れ歯は用いる材料や作製方法によって主に7種類あります。

それぞれの特徴について説明します。

2-1:一般的な総入れ歯(保険)

一般的な総入れ歯は床(しょう)はプラスチックの一種であるレジンで出来ています。

人工歯は

プラスチックのレジン歯

プラスチックとセラミックを混合した硬質レジン歯

陶歯

の3種類あります。

床(しょう)と人工歯は保険適用のものを使用します。

2-2:マグネットデンチャー(一部保険)

マグネットデンチャーは数本の歯が残っている場合、

その歯の神経を取る処置をして歯の高さを歯茎の縁近くまで短くし磁性キーパーと呼ぶ金属を設置します。

入れ歯の裏側に磁石を仕込み磁石の引き合う力で入れ歯を外れないようにする入れ歯です。

歯の欠損が多く総入れ歯に相当するものは保険適用になります。

残っている歯が歯周病や虫歯で状態が悪い方、

磁性キーパーを入れるスペースが不足している方にはできません。

MRIを撮影すると像が乱れることがあります。

2-3:金属床の総義歯(自費)

金属床の総入れ歯は床の一部に金属のプレートを使用したものです。

金属は主にコバルト、チタン、金合金を使用します。

金属床にすることで強度が上がり、床を薄くできるので

一般的な入れ歯より違和感が少なくなります。

2-4:上下顎印象法による総入れ歯

こちらは当院で行っている総入れ歯です。

通常の総入れ歯は上下を別々に型採りし固まるまで術者の手で押さえますが

この方法は上下を同時に型採りし患者様に固まるまで噛んでもらいます。

そもそも総入れ歯は上下で噛むことによって食べ物をかみ砕く道具ですから

噛んだ時の歯茎の形を採って作ることが重要です。

型採りの際は口唇の形も採り前歯の歯並びの指標にします。

また上下で噛んで型採りするので患者様の舌のスペースと頬の内側の筋肉のスペースがわかります。

このスペースの邪魔をせず適正な位置に歯を並べると

舌や頬を嚙むことはほとんどなく

入れ歯が筋肉によってサポートされ

ウオーターフィルム現象も加わって安定した総入れ歯ができます。

このような方法で金属床の総義歯を作製します。

人工歯は前歯には自然な色の硬質レジン歯、奥歯には機能性に優れた硬質レジン歯を使用します。

 

2-5:BPSデンチャー

スイスのIvociar Vivadento社が提供するBPSシステム(Biofunctional Prosthetic System の略)(生体機能的補綴システム)

を活用して作製する総入れ歯です。

2-6:シリコンデンチャー(自費)

シリコンデンチャーとは床の内面をシリコンで覆った総入れ歯のことです。

シリコンは軟らかい為、歯茎への違和感が少ないとされています。

金属を使用していないため金属アレルギーの心配はありません。

シリコンが経年的に劣化しやすいのでかみ合わせが変化しやすいこと、

汚れが停滞しやすく細菌の温床になりやすい欠点があります。

2-7:インプラント併用の総入れ歯(自費)

インプラントを併用した総入れ歯は2本や4本のインプラントを顎の骨に埋入して

入れ歯を外れない仕組みを取り入れたものです。

入れ歯が大きくずれることなく噛むことができ取り外しが可能なので衛生的です。

インプラントは顎の骨が十分ない方や糖尿病など持病のある方はできないことがあります。

3章:見た目が良い噛める総入れ歯を作る歯科医院を選ぶ5つのポイント

総入れ歯は歯科治療の中でも難しい治療です。

歯科医師のみならず歯科技工士の技量に依るところが多いからです。

見た目が良くて噛める入れ歯を作製している歯科医院を見極めるのに参考になるポイントを挙げてみました。(自費の総入れ歯の場合です。)

3-1:総入れ歯専用の型採りのトレーがあるか

型採りの際のトレーは既成のトレーで無歯顎用トレーといって総入れ歯専用のトレーがあります。

こちらを使用することによって総入れ歯の仕上がりの精度が違います。

写真は当院で使用している総入れ歯用のトレーです。

 

3-2:患者様のお口の大きさに合ったトレーを作製して使っているか

個人トレーとは総入れ歯用の既成トレーで型採りし作製した石膏模型から

患者様の顎の大きさの合ったトレー(個人トレー)を作製します。

このトレーでシリコン印象材という寸法変化の少ない材料で型採りすると

総入れ歯の仕上がりの精度が違います。

写真は次に説明しているゴシックアーチトレーサーと一体した個人トレーです。

 

3-3:かみ合わせを採る際、顎の動きを印記する道具(ゴシックアーチトレーサー)を使っているか

総入れ歯のかみ合わせは皆さんが想像するよりとても難しいです。

なぜなら歯がないからかみ合わせが定まりません。

ゴシックアーチトレーサーという道具を使用することで

顎の関節が安定した位置=正しいかみ合わせ

を採ることができます。

(難しいと思いますがこの道具を使ってかみ合わせを採ることが重要です。)

一番下の写真の赤矢印の頂点(青の点)がかみ合わせの位置です。

3-4:総入れ歯を作製する歯科技工士は信頼できるか

総入れ歯を作製する歯科技工士は年々減少しており

私たちは腕の良い信頼できる歯科技工士さんと出会うのにとても苦労します。

歯科医院を受診し患者様が歯科技工士のことを知ることは難しいと思いますが

ホームページに提携の歯科技工所さんの情報が掲載しているかどうかだけでも

判断材料になるかと思います。

3-5:総入れ歯の仮合わせの時に写真や動画を撮影しているか

総入れ歯を作製する過程で人工歯を並べた段階で

実際にお口の中に入れて前歯の歯並びを確認して頂きます。

これを仮合わせといいます。

その際に写真撮影しその情報を歯科技工と共有することで

より患者様の要望に沿ったものに仕上がります。

4章:総入れ歯に関するQ&A

4-1:総入れ歯は必ず入れ歯安定剤が必要ですか?

きちんと作製し調整した総入れ歯はピッタリ合っているため入れ歯安定剤は必要ありません。

入れ歯安定剤は入れ歯が合わなくなり緩くなってきた時に使用するものです。

ただし入れ歯が緩くなってきた場合でも一時的に使用するようにして下さい。

入れ歯安定剤は粘着性があるため汚れやすく細菌が繁殖しやすいです。

またかみ合わせがずれやすく噛んだ力が顎の骨に適切に伝わらないので

顎の骨の吸収が進みやすくさらに入れ歯が合わなくなるという悪循環になります。

入れ歯が合わない時は歯科医院で診てもらうと良いでしょう。

4-2:総入れ歯を作る際に歯がない期間はどれくらいですか?

数本の歯が残っておりその歯を抜いて総入れ歯を作る場合は

歯を抜く前に総入れ歯を作製しておき抜歯と同時に装着する「即時義歯」があります。

事前に即時義歯を作製しておくことで歯のない期間はないことになります。

即時義歯は歯を抜いた後の歯茎が治癒する過程で

歯茎の形が変化するので裏打ちを

都度、修正する必要があります。

4-3:総入れ歯を入れないとどうなりますか?

総入れ歯を入れずに歯がないままでいると

・お食事が軟らかい食べ物(白米、麺類、パンなど)ばかりになり栄養状態が偏ります。

 また食べる量が減るため筋肉が衰え日常生活に支障が生じます。

・上記の軟らかい食事は炭水化物=糖質の多い食事となるため

 血糖値が上昇して糖尿病のリスクが高まります。

・噛むことは筋肉や舌などを反射的に反応させ脳や身体に刺激を与え

 脳の活動を促進させ脳の老化を防ぐ一因となります。

 総入れ歯を入れないと脳への刺激が減り認知症のリスクが高まります。

まとめ

総入れ歯の種類は主に7種類あります。

1,一般的な入れ歯(保険)

2,マグネットデンチャー(一部保険)

3,金属床の総義歯(自費)

4,上下顎同時印象法の総義歯(自費)

5,BPSデンチャー(自費)

6,シリコンデンチャー(自費)

7,インプラント併用の総義歯(自費)

です。

使用する材料、作製方法により分けられます。

 

総入れ歯の噛む力は顎の骨を覆う歯茎で受け止めます。

合わない入れ歯や動く入れ歯を使用していると顎の骨の吸収が進み

ますます入れ歯が合わなくなりさらに動くようになってしまいます。

合わない入れ歯を使用している方、歯がなくて困っている方は

早めに歯科医院を受診して下さい。この記事をその際の参考にご活用下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆者プロフィール

著者

イーストワン歯科本八幡
東 郁子

■経歴
  • 平成6年 鶴見大学歯学部 卒業
  • 平成7年 鶴見大学付属病院研修医 修了
  • 平成7年 都内の歯科医院 勤務
  • 平成30年 イーストワン歯科本八幡 開院
■所属学会/スタディグループ
  • ●IPSG包括歯科医療研究会
  • 第2回咬合認定医コース受講 咬合認定医 取得
  • 総義歯の基礎と臨床 受講
  • 顎関節症ライブ実習コース 受講
  • パーシャルデンチャーとテレスコープシステム 理論と実習コース 受講
  • 咬合治療の臨床 受講
  • ●日本臨床歯科医学会
  • レギュラーコース 受講
  • ●顎咬合学会