【歯医者さんでよく薦められるノンクラスプデンチャー】現役歯科医師が注意点を解説します

【歯医者さんでよく薦められるノンクラスプデンチャー】現役歯科医師が注意点を解説します

歯を失って入れ歯にしなければならない時に歯医者さんで「ノンクラスプデンチャー」を薦められると思います。ノンクラスプデンチャーは自費ですのでなるべく長持ちするものを選びたいですよね。この記事を参考にしてノンクラスプデンチャーを選ぶ際の参考にして下さい。

1章:ノンクラスプデンチャーとは

一般的な入れ歯の構造は歯のない部分の歯茎となる床(しょう)、床の上に乗せる人工歯、入れ歯を外れないように残っている歯に掛ける金属のバネのクラスプから成ります。

一般的な入れ歯に使用されるクラスプは金属色が目立つためその代わりにピンク色の床(しょう)を延長して歯に架けることで入れ歯を外れないようにしています。このような入れ歯をノンクラスプデンチャーといいます。床(しょう)に使用される素材が特殊で弾力があるために入れ歯を出し入れすることができます。

 

一般的な入れ歯

ノンクラスプデンチャー

2章:ノンクラスプデンチャーの種類と特徴

ノンクラスプデンチャーは様々な商品名がたくさんあります。使用される素材によって大きく分けて4種類あります。

2-1:商品名「バルプラスト」「ルシトーン」「スマイルデンチャー」

これらはポリアミド(ナイロン系)で作られています。

特徴は

・柔らかく破折しにくい

・着色しやすく調整や修理がしにくい

・痛みが出にくく装着感が良い反面柔らかいため噛む力を歯肉に伝えにくい

2-2:商品名「エステショット」

ポリエステル系の素材で出来ています。ポリアミドより硬い素材です。

特徴は

・ノンクラスプデンチャーの中では修理がしやすい

・適合精度(フィット感)が良い

・少し厚みがある

・やや硬いので噛む力を歯肉に伝えやすい利点がある

・表面が傷つきにくく劣化しにくい

2-3:商品名「ショットカーボ」

ポリカーボネートで出来ています。

特徴は

・修理がしやすい

・適合精度はポリエステル系より劣る

2-4:商品名「デュラフレックス」

ポリプロピレンで出来ています。

特徴は

・修理がしにくい

・破折しにくい

3章:ノンクラスプデンチャーのメリット、デメリット

3-1:ノンクラスプデンチャーのメリット

・見た目が一般的な入れ歯より目立たない

・落としても割れにくい

3-2:ノンクラスプデンチャーのデメリット

・クラスプの掛かる歯に負担が掛かる

・素材自体の弾力が次第になくなり外れやすくなる

・傷がつきやすく汚れが付着しやすいためばい菌の温床になる

・修理や調整が困難

・適応できる症例に制限がある

4章:ノンクラスプデンチャーの注意点

ノンクラスプデンチャーの構造は一般的な入れ歯の構造と同じでクラスプが金属ではなく目立たなくしただけの入れ歯です。これではクラスプを掛けた歯の寿命は短くなりますし良く噛めることはないでしょう。

ノンクラスプデンチャーに使用される素材は使用していくうちに艶がなくなるため汚れが付着しやすくばい菌の温床になります。そのばい菌を食事のたびに飲み込むことになるのです。劣化しやすい素材のため耐久性がなく3,4年程度で作り直す必要があると言われています。

私の考えではノンクラスプデンチャーを20年30年と使用する入れ歯ではなく治療過程で使用する仮の入れ歯として使用するのに適しているのではないかと思います。

5章:まとめ

ノンクラスプデンチャーは一般的な入れ歯より目立たず早く作れるため受け入れやすいと思います。

注意点として

・クラスプは目立たないがクラスプを掛けた歯は揺さぶられるため早期にダメになりやすい

・入れ歯自体に弾力があるので噛む力が歯肉に伝わりにくく結果良く噛めないことが多い

・適応する症例を守らないと歯のない部分の顎の骨が異常に吸収しやすい

などが挙げられますのでこの記事を参考によく歯科医師と相談して選びましょう。

 

筆者プロフィール

著者

イーストワン歯科本八幡
東 郁子

■経歴
  • 平成6年 鶴見大学歯学部 卒業
  • 平成7年 鶴見大学付属病院研修医 修了
  • 平成7年 都内の歯科医院 勤務
  • 平成30年 イーストワン歯科本八幡 開院
■所属学会/スタディグループ
  • ●IPSG包括歯科医療研究会
  • 第2回咬合認定医コース受講 咬合認定医 取得
  • 総義歯の基礎と臨床 受講
  • 顎関節症ライブ実習コース 受講
  • パーシャルデンチャーとテレスコープシステム 理論と実習コース 受講
  • 咬合治療の臨床 受講
  • ●日本臨床歯科医学会
  • レギュラーコース 受講
  • ●顎咬合学会