【上顎がザラザラする】その正体と、受診を考えたいサインを歯科医師が解説

query_builder 2021/04/24

上顎(上あご)の前の方がザラザラする。その正体は「口蓋皺壁」です

上顎の前の方にあるザラザラ・でこぼこは「口蓋皺壁(こうがいすうへき)」という、誰にでもある正常な構造です。発音や食事を助ける大切な部分で、多くの場合は心配いりません。ただし例外もあります。受診を考えたいサインと、入れ歯で失われる意外な役割まで、市川市本八幡の歯科医師が解説します。

「上顎がしわしわしている」「ボコボコして気になる」「口の中の上のほうがザラザラする」——表現はさまざまですが、多くは同じものを指しています。

上あごの前方にある口蓋皺壁。横向きのひだが並んでいる

上あごの前方にある横向きのひだ。これが口蓋皺壁です

結論:そのざらざらは、正常な構造です

舌の先で上顎(上あご)をなぞると、前歯の少し後ろあたりに、洗濯板のような横向きのしわを感じませんか。これが口蓋皺壁(こうがいすうへき)です。硬い部分にあるので「硬口蓋のザラザラ」と呼ばれることもあります。

  • ・場所:上あごの前方、硬い部分の前3分の1くらい
  • ・形:真ん中の線をはさんで左右に、3〜7本ほどの横しわが並ぶ
  • ・感触:やわらかい粘膜の下に、波打つような盛り上がりがある

赤ちゃんの頃から備わっていて、生涯にわたってほとんど形が変わりません。しかも並び方には非常に大きな個人差があり、指紋のように個人を見分ける手がかりとして研究されているほどです。つまり、あなたの上あごのざらざらは、あなただけの模様ということになります。

「ざらざらしているから異常なのでは」と心配して来院される方は少なくありませんが、左右にほぼ対称の横しわで、痛みも出血もなく、以前から変わらないのであれば、まず心配のない構造です。

口蓋皺壁は、飾りではなく「働く」構造です

なぜ、わざわざこんな凸凹が付いているのでしょうか。口蓋皺壁は、舌と組み合わさって次のような役割を果たしていると考えられています。

① 食べ物をまとめて、奥へ送る

舌の先に乗せた食べ物を口蓋皺壁に押し付けることで、バラバラの食べ物がひとかたまりにまとまり、奥歯の噛む面へ、そして喉へと送られます。「舌のまな板」のような役割です。

② 発音を助ける

サ行・タ行・ラ行は、舌先を上あごの前方に触れさせて出す音です。口蓋皺壁は舌が当たる位置の目印になり、はっきりした発音を支えています。

③ 飲み込みを助ける

飲み込む瞬間、舌は上あごに強く押し付けられます。凸凹があることで舌が滑らず、力が伝わりやすくなります。

④ 味わいを広げる

飲み物が口蓋皺壁に当たると流れが乱れ、霧のように舌全体へ広がります。同じ飲み物でも、舌の一部にしか触れないのと全体に広がるのとでは、感じる味が変わります。

食べる・話す・飲み込む・味わう。私たちが無意識にしている動作のすべてに、この小さな凸凹が関わっています。

セルフチェック:様子見でよいか、受診したほうがよいか

とはいえ、上あごの違和感すべてが口蓋皺壁とは限りません。ご自身で確認するときの目安を挙げます。

まず心配の少ない特徴

  • □ 左右対称に横しわが並んでいる
  • □ 痛みやしみる感じがない
  • □ 数か月〜数年、大きさや形が変わっていない
  • □ 前歯のすぐ後ろの、限られた範囲にある

早めに歯科医院で確認したい特徴

こんなとき 考えられること(あくまで一般論です)
上あごの真ん中に、骨のように硬いこぶがある 口蓋隆起(骨の膨らみ)。多くは無害ですが、入れ歯を作る際に配慮が必要です
ヒリヒリ痛む、赤くただれている 熱い食べ物によるやけど、粘膜の炎症など
白い苔のようなものが付いている カンジダ症など。免疫の低下や口の乾燥、入れ歯の清掃不足が関わることがあります
入れ歯を入れている側だけ赤い、当たって痛い 入れ歯が合っていない可能性。放置すると粘膜も骨も傷みます
2週間以上治らない潰瘍、しこり、出血がある 自己判断は禁物です。速やかに受診してください
急に大きくなった、片側だけ盛り上がってきた 同上。早めの確認をおすすめします

上あごは自分では見えにくい場所です。スマートフォンのライトと鏡で撮影しておくと、変化の比較にも、受診時の説明にも役立ちます。

「2週間以上治らない」「硬いしこりがある」「急に変化した」——このいずれかに当てはまるなら、様子を見ずにご相談ください。

意外と知られていない話:入れ歯になると、このざらざらは「消える」

ここからが、多くの方が知らないお話です。

総入れ歯は、上あごをぴったり覆う「床(しょう)」で吸着します。つまり、あの口蓋皺壁は入れ歯のプラスチックで完全に覆われてしまうのです。

そして保険適用の総入れ歯では、床の裏側は多くの場合つるつるに仕上げられます。舌が触れるのは、凸凹のない、のっぺりとした平面です。

すると、何が起きるでしょうか。

  • ・食べ物がまとまりにくい……舌で押し付けても滑ってしまい、飲み込むまでに時間がかかる
  • ・発音が変わる……サ行・タ行がはっきりせず、「入れ歯を入れてから話しづらい」と感じる
  • ・味の感じ方が変わる……飲み物が舌全体に広がらず、「食事が味気ない」と訴える方も
  • ・疲れる……舌が余計に働くため、食事の後にぐったりする

「入れ歯にしたら、どうも食事が楽しくない」——その理由を、入れ歯の吸着や噛み合わせだけに求めてこられた方は多いのではないでしょうか。実は、舌が触れる面から情報が消えてしまったことも、原因のひとつなのです。

介護やお仕事、ご家族のことを優先して、ご自身の歯を後回しにされてきた方ほど、気づいたときには残せる歯が少なくなっています。人前で口を開けて笑えない。やわらかい物しか食べられず、旅行や会食が気が重い。そうしてようやく入れ歯を作ったのに、食事が味気ないままでは、あまりに報われません。

「義歯」は、失われた機能を取り戻すための装置です

総入れ歯は「総義歯」と呼びます。この「義」の字は、義足・義手と同じです。見た目を埋めるだけでなく、失われた機能をできる限り元に戻すことが本来の目的です。

だからこそ当院では、自費の総入れ歯に口蓋皺壁を再現(付与)しています。歯があった頃に舌が感じていた凸凹を、入れ歯の内面に彫り込むのです。舌の「まな板」を返してあげる、と言い換えてもいいかもしれません。

仮の入れ歯に付与した口蓋皺壁

仮の入れ歯に付与した口蓋皺壁

完成した入れ歯に付与した口蓋皺壁

完成した入れ歯に付与した口蓋皺壁

これは特別な魔法ではありません。人のからだが元々持っていた形に、できるだけ近づけるという当たり前の考え方です。ただ、その当たり前を実行するには、型どりから完成まで一つひとつの工程に手をかける必要があり、卓越した技術を持つ歯科技工士との連携が欠かせません。

なお、保険の総入れ歯に口蓋皺壁が付与されているものを、私はほとんど見たことがありません。これは保険の義歯が「悪い」ということではなく、制度上の時間的・材料的な制約の中で、すべての細部まで個別に再現することが難しいという事情によるものです。

当院の総入れ歯ができるまで(3つのステップ)

ステップ1:型どりと噛み合わせ

まず、お口の大きさに合わせた専用のトレー(個人トレー)を製作します。既製品のトレーではなく、その方のあごの形に合わせて作るところから始めます。

お口に合わせて作製した個人トレー

個人トレー。この道具で噛み合わせと型どりを行います

そのトレーで噛み合わせの位置を記録し、寸法変化の少ないシリコン印象材で上下の型を採ります。ここで当院が大切にしているのは、「噛んだ状態で型を採る」ことです。

一般的には、口を開けた状態で型どりをします。しかし入れ歯は、上下で噛むために使う道具です。噛んだときの歯ぐきの沈み込み、頬や舌の筋肉の動き——その情報を型に反映させたい。だから、噛んだ状態で採るのです。

上あごの型どり

上あごの型どり

下あごの型どり

下あごの型どり

ステップ2:仮合わせ

仮に歯を並べた状態でお口に入れ、確認します。見るのは歯だけではありません。

  • ・口元の張り、ほうれい線の出方
  • ・お顔全体とのバランス、歯の見える量
  • ・発音のしやすさ
  • ・上下の噛み合わせ

ここでご希望を伺い、調整します。完成してから「思っていたのと違う」を防ぐための、大切な工程です。

ステップ3:完成・装着

口蓋皺壁を付与した入れ歯をお入れし、噛み合わせを微調整します。装着後も、粘膜や骨の状態は少しずつ変化しますので、定期的な確認が必要です。

歯並びが整うことで口元が自然になり、写真で口を開けて笑えるようになった——そう話してくださる方は少なくありません。

総入れ歯の選択肢を、公平に比べてみます

どの方法にも、向き不向きがあります。


保険の総入れ歯 当院の自費の総入れ歯
費用 保険適用 自由診療
口蓋皺壁 再現されないことがほとんど 再現できる
床の材質 レジン(プラスチック)。厚みが必要 金属補強を選択でき、薄く作れる
型どり 既製トレー・アルジネートが中心 個人トレー・シリコン印象。噛んだ状態で採得
温度の伝わり方 厚みがあるため伝わりにくい 食事の温度を感じやすい
製作期間 比較的短い 約6か月
向いている方 費用を抑えたい 食事・発音・見た目まで含めて取り戻したい

保険の入れ歯が悪いわけではありません。費用を抑えて機能を回復できる、とても大切な選択肢です。一方で、「もう一度、家族と同じものを食べたい」「人前で気にせず話したい」というご希望が強い方には、精密な自費の総入れ歯という選択肢があることを知っていただきたいのです。

費用・治療期間・リスク(自由診療)

ご相談の段階

  • ・無料メール相談:ホームページのフォームから。費用はかかりません
  • ・来院相談 5,500円(税込):レントゲン(パノラマ)を含み、お口の状態と考えられる選択肢をご説明します

自由診療の費用の目安(すべて税込)

  • ・精密検査・診断:33,000円
    型取り・噛み合わせの記録などをもとに治療計画を確定します。
  • ・総入れ歯:片あご 1,430,000円/上下 2,750,000円
    設計・材料により変動します
  • ・ドイツ式テレスコープ義歯(部分入れ歯):片あご 1,650,000円〜4,120,000円
    歯が残っている場合の選択肢です

診断のうえで総額を確定してご提示し、治療開始後に追加のご請求はいたしません。最新の料金は料金ページをご確認ください。ご契約後、3回に分けてのお支払いをご案内しています。抜歯などで仮の入れ歯が必要な場合は、別途費用がかかります。

治療期間の目安

約6か月(来院回数・お口の状態により前後します)。仮合わせの工程を丁寧に行うため、この期間が必要です。

リスク・副作用(必ずお読みください)

  • ・初めて入れ歯を使う方は、出し入れや発音に練習が必要で、慣れるまでに時間がかかります
  • ・装着当初は、痛み・違和感・唾液の増加・吐き気が出ることがあります
  • ・精密な総入れ歯であっても、天然の歯とまったく同じ感覚にはなりません
  • ・歯ぐきや骨の形は年月とともに変化するため、調整・修理・作り替えが必要になる場合があります
  • ・定期的な噛み合わせのチェックとお手入れを怠ると、残っている歯や粘膜を傷めることがあります
  • ・お口の中の状態によっては、ご希望の設計を選択できない場合があります
  • ・使用する材料によっては、金属アレルギーが生じる可能性があります
  • ・自由診療のため、治療費は全額自己負担となります
  • ・自由診療は医療費控除の対象となる場合があります。詳しくは所轄の税務署にご確認ください

よくあるご質問

Q. 口蓋皺壁のざらざらは、加齢でなくなりますか。
A. 基本的に形はほとんど変わらないとされています。「最近ざらざらが強くなった/なくなった」と感じる場合は、粘膜の乾燥や炎症、入れ歯の当たりなど別の要因が関係していることがあります。

Q. 舌でこすると気になります。触っても大丈夫ですか。
A. 通常の構造ですので、軽く触れる分には問題ありません。ただし、気にして繰り返し強くこすると粘膜を傷めることがあります。痛みや出血があれば触るのをやめてご相談ください。

Q. 上あごに硬いこぶがあります。これも口蓋皺壁ですか。
A. 上あごの真ん中にある硬い骨の膨らみは「口蓋隆起」で、口蓋皺壁とは別のものです。多くは治療の必要がありませんが、入れ歯を作る際には当たりやすく、設計上の配慮や処置が必要になることがあります。

Q. 今の保険の入れ歯に、口蓋皺壁を後から付けられますか。
A. 既存の入れ歯への追加加工は、床の厚みや合い具合によっては難しい場合があります。基本的には、新しく作製する際に付与するものとお考えください。

Q. 入れ歯を入れると味がわからなくなると聞きました。
A. 味を感じる細胞の多くは舌にありますので、味覚そのものがなくなるわけではありません。ただし、上あごが覆われることで温度や食感の情報が減り、「味気ない」と感じる方はいらっしゃいます。床の材質や内面の形で軽減できる場合があります。

Q. 歯が数本残っていますが、総入れ歯になりますか。
A. 残せる歯があれば、それを土台として活かす設計(テレスコープ義歯など)を検討します。安易に抜いて総入れ歯にする前に、残す方法があるかを診査します。

Q. 他院でインプラントは難しいと言われました。
A. 骨の量や全身の状態でインプラントが適応外となる方でも、精密な入れ歯という選択肢があります。当院はそうしたご相談を多くお受けしています。

Q. 相談だけでも大丈夫ですか。
A. もちろんです。すぐに治療を決める必要はありません。今のお口の状態と、選べる方法をご説明します。

まとめ

  • ・上あごの前方のざらざらは口蓋皺壁という正常な構造です
  • ・食べ物をまとめる・発音・飲み込み・味わいを支える、働きのある凸凹です
  • ・ただし、2週間以上治らない・硬いしこり・急な変化があれば早めに受診を
  • ・総入れ歯ではこの凸凹が覆われて失われるため、当院では自費の総入れ歯に口蓋皺壁を再現しています
  • ・型どり・噛み合わせ・仮合わせの一つひとつに、患者様からは見えない工夫があります

歯医者選びで比べられるのは、たいてい費用と通いやすさです。けれど本当に差が出るのは、見えない部分にどれだけ手をかけているかだと考えています。

当院では、ご相談を2つの段階に分けています。

  • 1.無料メール相談 … 費用はかかりません。今のお悩みをお送りください
  • 2.来院相談(5,500円・パノラマレントゲン込み) … お口を拝見し、考えられる方法と概算をお伝えします

「上あごのざらざらが気になる」でも、「今の入れ歯が合わない」でも構いません。すぐに治療を決める必要はありません。まずは現状を確認し、選べる方法を一緒に整理するところから始めましょう。

千葉県市川市・本八幡のイーストワン歯科本八幡です。成田市・佐倉市・市原市・江戸川区など、少し離れた地域からもお越しいただいています。ご予約・ご相談は、当院ホームページの予約フォーム、無料メール相談、またはお電話で承っております。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療効果を保証するものではありません。症状の感じ方や治療結果には個人差があります。気になる症状がある場合は自己判断せず、歯科医院を受診してください。記載の費用は自由診療(保険適用外)の目安であり、治療内容により変動します。実際の費用・期間・適応は、診査・診断のうえでご案内いたします。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

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