【総入れ歯にする前に】歯が数本でも選べるレジリエンツテレスコープ

query_builder 2026/04/29

「もう総入れ歯にするしかありません」。そう言われてショックを受けていませんか。歯が1本でも残っているなら、抜く前に検討できる方法があります。ドイツ生まれのレジリエンツテレスコープの仕組みと、研究の数字、費用・期間まで本八幡の歯科医師が解説します。

「もう総入れ歯しかない」と言われて、あきらめていませんか

「残っている歯が少なすぎて、入れ歯を支えられません」「歯を全部抜いて、総入れ歯にしましょう」。そう説明されて、行き場をなくしたような気持ちになった方は少なくありません。

他院でインプラントは難しいと言われた方、残った歯もぐらついてきた方、やわらかい物しか噛めずに旅行や会食のお誘いも気が重い方——お子さんやご家族のお世話を優先し、ご自分の歯のことはいつも後回しにしてきた方も多いのではないでしょうか。

気づいたときには、人前で口を開けて笑うのがためらわれるようになっていた。食卓ではやわらかい物ばかりを選び、旅行や会食のお誘いにも「食べられる物があるかしら」と気が重くなる——そのお気持ちは、決してわがままではありません。噛めること、笑えることは、これからの毎日を自分らしく過ごすための土台です。

歯が1本でも残っている「今」だからこそ、選べる方法があります。それが、ドイツ生まれの入れ歯「レジリエンツテレスコープ」です。


レジリエンツテレスコープとは―仕組みをわかりやすく解説

レジリエンツとは、弾力性・しなやかさを意味する言葉です。ドイツで考案された方式で、日本でも私が所属するスタディグループIPSG(包括歯科医療研究会)などを通じて学ぶことができます。

粘膜で支え、歯は横ずれ防止だけに使うという発想

通常の部分入れ歯は、残っている歯に支えを求めます。これに対してレジリエンツテレスコープは、入れ歯を支える主役を歯ではなく歯ぐき(粘膜)に求め、噛む力を歯ぐき全体に分散させる設計です。残っている歯は、入れ歯の横揺れ防止や位置の安定という役割を担います。

基本的には、残っている歯が3本以下の場合に適応となります。ただし、残っている歯の状態や噛み合わせによっては、4本以上でも適応となる場合があります。

内冠と外冠のあいだの「隙間」がポイント

残っている歯には、内冠と呼ぶ薄い金属の冠をかぶせます。入れ歯の内側には、この内冠を包むように外冠が設置されています。入れ歯を装着したとき、内冠と外冠のあいだにはわずかな「隙間」が設けられています。

噛んだときに入れ歯は歯ぐきに向かってわずかに沈み込みます。この隙間があるおかげで、歯にかかる力の多くは歯ぐきが受け止め、歯にかかる強い力が和らげられると説明されています。歯にかかる負担を抑えながら、残った歯を長く使い続けるための工夫です。

レジリエンツテレスコープの模型:残っている歯2本に内冠をかぶせた上あご(左)と、内冠を包む外冠が入った入れ歯の内側(右) レジリエンツテレスコープの入れ歯(模型)

歯を1本でも残すことの意味

歯の根のまわりには、歯根膜と呼ばれる薄い組織があります。歯を残すと、この組織を通じて噛んだ感触の一部が伝わるとされています。総入れ歯ではすべての歯を抜くため歯根膜そのものがなくなりますが、レジリエンツテレスコープなら1本でも歯を残すことで、この感触を保てる可能性があります。

また、レジリエンツテレスコープは総入れ歯に近い大きさ・形でつくります。人工歯と人工歯ぐきの部分で唇の内側を支える形に仕上げるため、歯を失う前に近い口元のふくらみを目指せる作り方です。歯を失うことによるお顔の変化についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。


保険の入れ歯・コーヌステレスコープ・レジリエンツテレスコープを比べる

ご自身の状況にどれが向いているかを判断するために、3つの選択肢を比較します。どれが優れているというより、残っている歯の本数・状態・ご予算によって、選び方が変わるとお考えください。

項目 レジリエンツテレスコープ コーヌステレスコープ 保険の部分入れ歯
残っている歯の本数 基本的に3本以下(状態により4本以上も) 4本以上が目安 1本以上
支える方法 歯ぐき(粘膜) 歯(二重冠の摩擦) バネ(クラスプ)を歯にかける
見た目 バネがなく、総入れ歯に近い自然な形 バネがなく自然 金属のバネが見えることがある
歯の状態への対応 歯の状態が弱くても、できる限り生かす設計 歯の状態がある程度良いことが前提になりやすい 保険診療の範囲内で設計する
歯を失った後 修理して使い続けられる設計(作り直しが必要な場合もある) 修理で対応できる場合がある 調整や修理で対応する
費用目安(自費・片顎) 165万〜297万円 181万〜412万円 保険診療です

表を見ておわかりいただけるとおり、レジリエンツテレスコープは残っている歯が少ない方・歯の状態が弱い方のための設計です。コーヌステレスコープは、ある程度の本数と状態が整った歯が必要になります。一方でレジリエンツテレスコープは、その条件を満たさない方にも選択肢になり得る設計です。

総入れ歯との違い

総入れ歯との違いは、「歯を抜くかどうか」です。総入れ歯は残っている歯をすべて抜いてから作製しますが、レジリエンツテレスコープは1本でも歯が残せるなら、その歯を生かして作ります。将来その歯を失うことになっても、入れ歯を修理して使い続けられる設計です(作り直しが必要になる場合もあります)。まだ抜かずに済む選択肢があるなら、先に検討していただきたいというのが私の考えです。

一度抜いてしまった歯は元に戻せません。今は「もう抜くしかない」と言われていても、歯の状態や噛み合わせによっては、レジリエンツテレスコープが選択肢になる場合があります。判断のためにも、抜歯の前に一度、当院でお口の状態を確認させてください。


レジリエンツテレスコープのメリット

メリット① 弱った歯でも抜かずに使える

少しぐらついている歯でも、レジリエンツテレスコープの内冠に使える可能性があります。強く支える役割を担うのではなく、横ずれ防止として限定的な役割を果たせれば十分だからです。

メリット② 歯を失っても、修理して使い続けられる設計

万が一、内冠をかぶせた歯を失うことになっても、入れ歯を修理して同じ入れ歯を使い続けられるように設計されているのが、レジリエンツテレスコープの特徴です。ただし、支えの歯の状態や本数によっては、作り直しが必要になる場合もあります。研究でわかっている具体的な数字は、後述します。

メリット③ インプラントが難しいと言われた方の選択肢に

インプラントは、骨の量や全身の状態によって、適応が難しいと判断される場合があります。なお、骨粗しょう症などで使う薬を服用中というだけで、インプラントを一律に行ってはならないとする医学的な根拠はないとされています。持病やお薬の状況によって判断は異なりますので、詳しくは歯科医師にご相談ください。

レジリエンツテレスコープは大きな外科的手術を伴わないため、インプラントが難しいと言われた方の選択肢のひとつになります。インプラントについて詳しくはこちらの記事、他院でインプラントが難しいと言われた方向けの解説はこちらの記事もご覧ください。

メリット④ お口の状態によっては、就寝時も装着できる場合がある

入れ歯は、外して寝るのが基本です。当院の自費の総入れ歯・テレスコープ義歯は、お口の状態を確認したうえで、装着したまま眠っていただける場合があります。ご高齢で誤嚥や肺炎が心配な方は、事前にご相談ください。詳しくはこちらの記事で解説しています。


研究でわかっていること

良いことばかりをお伝えするのではなく、研究で報告されている数字もそのままお伝えします。

義歯が使えていた期間

ドイツの大学病院で、歯が1〜3本しか残っていない状態でつくられたレジリエンツテレスコープ263例(大学の臨床実習で作製されたもの)を、後から追跡した研究があります。入れ歯がそのまま使えていた割合は、5年で62%、8年で38%でした。支えにしている歯が1〜2本の場合は、3本の場合に比べて、内冠が外れる・歯が折れるといった不具合が多く起こったと報告されています。

支えの歯を失う割合、修理の頻度

別のドイツの大学病院で、支えの歯が3本以下のカバーデンチャー(レジリエンツテレスコープと同じ考え方の入れ歯)227例、平均年齢67歳の方を調べた研究では、5年間使い続けられた割合は64.5%でした。平均3.4年の追跡期間中に、1本以上の支えの歯を失った方は28.7%、内冠が外れる不具合がもっとも多く見られ36.6%に起こったと報告されています。この研究は「すべての歯を抜く代わりの、妥当な選択肢である」と結論づけています。

残っている歯の本数による差

支えの歯が3本以下の場合と4本以上の場合とで、支えの歯を失うリスクを比較した研究もあります。支えの歯1本あたりの失うリスクは、3本以下では5年で10%・10年で24%、4本以上では5年で4%・10年で15%でした。すべての支えの歯を保てていた患者さんの割合を比べると、両者に統計的な差はなく、「3本以下でも、支えの歯を失うリスクがはっきり高まるわけではない」と結論づけられています。

顎の骨への影響

支えの歯を残した入れ歯(オーバーデンチャー)を使った方は、総入れ歯を使った方に比べて、下あごの骨の高さの減り方が少なかったという5年間の研究もあります。

これらの数字は、研究ごとに対象者の年齢や条件が異なり、同じ結果がすべての方に起こることを示すものではありません。支えの歯を失っても修理で使い続けられる設計ですが、支えの歯の状態によっては作り直しが必要になる場合もあります。


レジリエンツテレスコープが向いている方・向いていない方

このような方にお勧めしています

  • ・残っている歯が3本以下程度の方(目安です)
  • ・「歯を全部抜いて総入れ歯に」と言われた方
  • ・歯が弱っているが、できれば残したい方
  • ・インプラントが骨の量や全身状態で難しいと言われた方
  • ・入れ歯を外さずに眠りたい方(お口の状態の確認が必要です)

別の選択肢が適切な場合もあります

レジリエンツテレスコープは、すべての方に適しているわけではありません。残っている歯がまったくない場合、残っている歯が5本以上で状態が良い場合、重度の歯周病がある場合などは、別のご提案をすることがあります。向いているかどうかは、お口の状態を拝見しなければ判断できません。まずはカウンセリングで現状をお伝えください。


レジリエンツテレスコープの治療例:下の歯が3本残存のケース

当院の治療例をご紹介します(ドイツ式入れ歯(部分入れ歯)のページに掲載している症例です。治療当時の価格です。現在の料金は料金ページをご確認ください)。

治療内容下顎 ドイツ式部分入れ歯(レジリエンツテレスコープ)
治療期間約1年(抜歯後の治癒期間を含む)
治療回数10〜15回
費用総額:1,614,900円(税込)
内訳 診査診断:11,000円/仮歯:8,800円×3本=26,400円/仮義歯:220,000円/内冠:192,500円×3本=577,500円/精密印象:55,000円/ドイツ式入れ歯:725,000円
※治療当時の価格です。現在の料金は最新の料金ページをご覧ください。
リスク・天然歯を削ります。しばらく凍みることがあります。
・入れ歯は慣れるまで少し時間を要します。
・入れ歯の出し入れの練習が必要です。
・定期的な検診とクリーニングが必要です。
・噛む感覚は自分の歯と異なります。

費用の目安と治療の流れ

費用の目安

レジリエンツテレスコープは自由診療(保険適用外)です。費用は、残存歯の本数や前処置の範囲などによって変わります。最新の料金は料金ページでご確認いただけます。

項目 費用
来院相談5,500円
精密検査・治療計画・お見積り33,000円
レジリエンツテレスコープ(自費・片顎)1,650,000円〜2,970,000円
コーヌステレスコープ(自費・片顎)1,810,000円〜4,120,000円
総入れ歯(片顎)1,430,000円
総入れ歯(上下)2,750,000円
保険の部分入れ歯保険診療です

なお、自費の入れ歯治療は医療費控除の対象です。年間の医療費の合計が一定額を超えた場合、確定申告で税金の一部が戻る場合があります。当院ホームページの医療費控除のご案内もご活用ください。

治療の流れ

  1. 初診カウンセリング
    現在の歯・入れ歯の状態を確認し、レジリエンツテレスコープを含む選択肢と費用・期間を丁寧にご説明します。この場で治療を決めなくても構いません。
  2. 前処置(必要な場合)
    歯周病やむし歯など、先に対処が必要な問題があれば処置を行います。
  3. 仮の入れ歯の作製
    型どり・噛み合わせの確認を行い、仮の入れ歯を作製します。
  4. 内冠の作製
    精密な型どりを行い、歯科技工士と連携して内冠を製作します。
  5. 内冠の試適・精密な型どり
    出来上がった内冠を歯に入れ、精密な型どりと噛み合わせの記録を行います。
  6. 人工歯を並べて仮合わせ
    人工歯を並べて仮合わせし、見た目や噛み合わせを確認します。
  7. 装着・調整・メインテナンス
    本装着を丁寧に行います。長く安定して使っていただくために、定期メインテナンスをご案内します。

治療期間の目安は、前処置の内容にもよりますが、カウンセリングから本装着までおおむね6か月〜1年程度です。


よくあるご質問

Q. レジリエンツテレスコープとコーヌステレスコープは何が違うのですか

大きな違いは、入れ歯を支えているのが歯なのか、歯ぐき(粘膜)なのかです。コーヌステレスコープは、残っている歯の内冠と入れ歯側の外冠が、お茶筒のような摩擦で入れ歯を支えます。レジリエンツテレスコープは歯ぐきで支え、歯は横ずれを防ぐ役割だけを担います。残っている歯が少ない方、歯の状態が弱い方には、レジリエンツテレスコープが選択肢になります。

Q. 歯が1本しか残っていませんが、対象になりますか

残っている歯が1本でも、レジリエンツテレスコープの適応になる可能性があります。ただし、残っている歯の状態(歯周病の程度、歯の位置など)によって判断が変わります。まずはカウンセリングで現状を確認させてください。

Q. 内冠をかぶせた歯を将来失った場合はどうなりますか

その歯を失った場合でも、入れ歯を修理して、そのままレジリエンツテレスコープを使い続けられるように設計されています。ただし、支えの歯の状態や本数によっては、作り直しが必要になる場合もあります。研究で報告されている具体的な数字は、本文の「研究でわかっていること」でご紹介したとおりです。

Q. 就寝時も装着したままでいいですか

入れ歯は外して寝るのが基本です。当院の自費の総入れ歯・テレスコープ義歯は、お口の状態を確認したうえで、装着したまま眠っていただける場合があります。ご高齢で誤嚥や肺炎が心配な方は、事前にご相談ください。

Q. インプラントと比べて、どちらが良いですか

インプラントは骨に固定して噛む力を回復させる治療で、当院でも行っています。ただし骨の量や全身状態によっては、適応に制約がある場合があります。レジリエンツテレスコープは、外科手術を避けたい方、インプラントが難しいと言われた方の選択肢のひとつです。どちらが合うかは、お口の中の状態やご希望によって異なりますので、当院では両方の選択肢を正直にご説明したうえでご判断いただいています。

Q. 保険の入れ歯とどちらを選べばいいですか

保険の入れ歯は保険診療です。バネを歯にかけて固定する仕組みで、短期間で作製できます。レジリエンツテレスコープは自由診療で、費用と治療期間はかかりますが、バネを使わない見た目と、歯ぐき全体で支える安定性を目指す設計です。どちらが優れているというより、費用・見た目・通院回数のうち何を優先したいかで選ぶものとお考えください。ご予算やご希望を伺ったうえで、当院からご提案します。


まとめ

この記事でお伝えしたことを整理します。

  • ・レジリエンツテレスコープは、残っている歯が基本的に3本以下の方のためのドイツ式入れ歯です。歯ぐきで支え、歯には横ずれ防止の役割を担わせる設計で、弱った歯でも抜かずに生かせる可能性があります。
  • ・総入れ歯との違いは、すべての歯を抜かないこと。研究では、義歯が使えていた割合は5年で6割前後という報告があります(研究により幅があります)。
  • ・支えの歯を失っても修理で使い続けられる設計ですが、作り直しが必要になる場合もあります。
  • ・費用は自費で片顎165万〜297万円(税込)。医療費控除の対象です。正確な費用はカウンセリングでご確認ください。

もう総入れ歯しかないと思っている方に、もう一つの選択肢があることを知っていただけたら幸いです。諦める前に、一度ご相談ください。


ご相談について

当院では、今の歯や入れ歯のお悩み、費用のご不安など、どんなことでもお気軽にお話しいただける相談の場をご用意しています。ご自身のお口の状態に合った進め方を、順を追ってわかりやすくご説明いたします。

当院のご相談は次のとおりです。

  • ・無料メール相談:ホームページのフォームからお気軽にお問い合わせください。診察・レントゲン撮影は行いません
  • ・来院相談 5,500円(税込):パノラマX線撮影を含み、現状と考えられる選択肢、おおよその費用をご説明します
  • ・精密検査・診断 33,000円(税込):詳しい検査と確定した治療計画のご提案

ご予約はホームページの予約フォーム、またはお電話で承っております。今ある歯を生かせるうちに、一度ご検討ください。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療効果を保証するものではありません。効果や経過には個人差があります。紹介した研究結果は集団の傾向を示すものであり、個々の方に同じことが起こることを示すものではありません。掲載の費用は自由診療(保険適用外)の目安であり、実際の費用は検査・診断のうえでご案内します。最新の料金はホームページの料金ページをご確認ください。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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