【40代からの入れ歯選びの3つのポイント】現役歯科医師が解説します!

【40代からの入れ歯選びの3つのポイント】現役歯科医師が解説します!

40代はまだまだお若く皆様お仕事やプライベートでも日々充実した生活を送っています。

歯を失ったことで噛めそうな食べ物を選んだり

入れ歯を気にしていつも口元をハンカチで覆ったり

意識がそちらに向かっていては旅行や会食で家族や友人との時間を楽しめませんよね。

また40代からの治療は20年30年先のことも考慮した治療法を選択したほうが良いでしょう。

今しっかりと治療しメインテナンスを継続して受けることにより小さな綻びを発見できます。

この綻びの治療が簡単に終る治療のほうが身体的に負担が掛かりません。

そして介護を受ける身になった場合、介護者がお手入れしやすいことも治療法を選択する際のポイントです。

これからの人生、歯のことで悩まず食事を楽しんで日常生活を送りたい。

そのような方にこの記事では入れ歯選びのポイントを解説しています。

入れ歯選びの際の参考にご活用下さい。

 

目次

1,40代からの入れ歯選びの3つのポイント

1-1 目立たない入れ歯

1-2 よく噛める入れ歯

1-3 将来を見据えた入れ歯

2,入れ歯治療の歯科医院の選び方

2-1 治療を始める前に必ず診査をする

2-2 かみ合わせを重視してくれる

2-3 すぐに歯の神経を取らない

2-4 すぐに歯を抜かない

3,まとめ

1:40代からの入れ歯選びの3つのポイント

入れ歯を選ぶ際、様々な不安や疑問があると思います。

こちらの章では選ぶ際のポイントを解説します。

1-1:目立たない入れ歯 

お友達に入れ歯だと気づかれたくないと感じている方は少なくありません。

自然な口元に近くなるような入れ歯を選びましょう。

一般的な入れ歯(保険)では入れ歯を外れないようにするために

金属のバネ(クラスプと呼びます)を残っている歯に引っ掛けます。

このような入れ歯ですと笑うとバネの金属がみえて入れ歯であることがわかってしまいます。

だから目立たない入れ歯が良いと思います。

目立たない入れ歯には主に2種類あります。

1-1-1 ノンクラスプデンチャー(自費)

ノンクラスプデンチャーは金属のバネ(クラスプと呼びます)の部分が

人工歯を並べるピンク色の床(しょう)と一体化になっています。

金属を使用しないので目立ちません。

 

ただしノンクラスプデンチャーは以下のような欠点があります。

・クラスプにより歯を揺さぶるため早期に歯がぐらついてダメになってしまう。

・誤った設計による歯のない部分の顎の骨が異常に吸収する。

・ピンク色の素材は汚れや臭いが付きやすく細菌が繁殖しやすい。

・ピンク色の素材は劣化しやすい。

1-1-2:テレスコープ義歯(自費)

テレスコープ義歯は残っている歯に二重冠構造を仕込み、入れ歯を外れないようにする入れ歯です。

金属のバネ(クラスプと呼びます)を使用しないので目立ちません。

 

一般的な入れ歯(保険)では金属のバネは見えています。

テレスコープ義歯で治療しました。クラスプがないので目立ちません。

1-2:良く噛める入れ歯

金属のバネが見えない、目立たない入れ歯を入れても

噛むことができなければお食事を楽しむことができません。

痛くなく噛める入れ歯を選びましょう。

入れ歯が乗っかる歯茎部分は弾力があり噛むと沈みます。

一般的な入れ歯やノンクラスプデンチャーは多くの場合失った歯の本数よリ少ない本数の歯にクラスプが掛かっています。

またクラスプは歯に密着していません。

入れ歯の部分にかかる噛む力に対して支える本数が少なく、歯に密着していないクラスプの入れ歯は不安定で

噛んだ時に入れ歯が沈み込んで力が入らないことが

噛めない原因のひとつに挙げられます。

下の写真は右側の4本が欠損しノンクラスプデンチャーを使用していました。

欠損した4本に対してバネを掛ける支えの歯は2本でした。

そのうちの1本の歯が折れて取れてしまい当院に来院されました。

そしてテレスコープ義歯で治療しました。

使用していたノンクラスプデンチャーと折れてしまった歯です。

テレスコープ義歯の二重冠構造である一つ目の冠を歯に装着します。

テレスコープ義歯の内面に二つ目の冠が仕込まれています。

 

この写真のテレスコープ義歯は残っている歯に二重冠構造を取り入れることにより

お茶筒の蓋と胴体部と同じような仕組みで入れ歯を外れないようにしています。

冠を被せた歯(お茶筒の胴体部)と入れ歯の内面の冠(お茶筒の蓋)が

はまり込んで入れ歯を固定しています。

冠を被せた歯を入れ歯の内面に取り込むことよりご自分の歯を固定することができますので

右側の歯のない部分で噛んでも左側の歯によって沈み込みを少なくすることができます。

従って力が入るので硬い物でも噛むことができます。

使用していたノンクラスプデンチャーは

バネがかかる歯が2本と少ない本数だったこと。

バネと歯の表面には多少の隙間がありがっちり固定されていないこと。

これらにより噛む力をしっかり受け止めることができず沈み込みが大きくなり

支えの歯を揺さぶったので折れてしまうのです。

 

一般的な入れ歯やノンクラスプデンチャーとテレスコープ義歯の違いは

靴で譬えると一般的な入れ歯やノンクラスプデンチャーは足にしっかりフィットしてなくても近所に出掛けるくらいの距離なら歩ける「サンダル」

テレスコープ義歯は足にしっかりフィットし頑丈で山道も歩ける「登山靴」です。

テレスコープ義歯は頑丈でしっかり固定されるので噛むことができます。

 

良く噛める入れ歯を作るには噛みあう相手側(下の治療なら上の歯、上の治療なら下の歯)の状態も非常に重要になります。

なぜなら「噛む」という動きは上下が1対として機能するからです。

2枚貝のように噛んだ時に2枚がぴったり合うように作らなければうまく噛めません。

テレスコープ義歯を治療する前には全体的な診査を必ず行います。

必要であればかみ合う相手の治療も行い噛んだ時にしっかり上下で噛めるようにします。

このように上下のかみ合わせを整えることによって良く噛めることができます。

1-3:将来を見据えた入れ歯

40代からの治療はこれから30年後40年後のことを考慮した治療法を選択されることをお勧めします。

現在では広く知られているインプラントと比べてみましょう。

インプラントは残っている歯を削らず負担を掛けないのが利点とされています。

しかし将来残っている歯が抜歯になった場合の再治療の選択肢がインプラントしかない場合が少なくありません。

またインプラントも歯と同じように歯周病になります。そうなると再度インプラントができないこともあります。

仮にインプラントが可能であっても身体的な病気が理由でインプラントができないこともあります。

インプラントを施した被せ物は清掃しにくい形になりやすいのでご自身でのブラッシングを丁寧に行うこと

月に1度の歯科医院でのメインナンスは欠かせません。

もし将来ご自身が介護されることになったら

介助者に歯ブラシや歯間ブラシを使って丁寧に磨いてもらうことが困難になります。

さらに定期的に歯科医院に清掃に行くのも困難になるでしょう。

入れ歯であれば介助者でも取り外して洗え残っている歯の清掃も難しくないのでとても衛生的です。

インプラントの被せ物が壊れたときは修理がほとんどの場合不可能ですが

入れ歯の場合はほとんどが修理が可能なことが多いです。

他院で20年前に作ったテレスコープ義歯が折れて来院されました。この患者様は70代の方です。

お預かりして入れ歯の人工歯がすり減っていたので同時に修理しました。

このようにテレスコープ義歯は最初の診査診断によって修理しながら長く使用できるよう設計しますので安心です。

2章:入れ歯治療の歯科医院の選び方

2-1:治療を始める前に必ず診査をする

患者様が来院してレントゲンを撮影しお口の中を診て

すぐ入れ歯の型どりをする歯科医院は避けた方が良いでしょう。

レントゲン撮影、お口の中を診て虫歯、歯周病の検査はどの歯科医院でも行っています。

精密な長持ちする入れ歯を作るには

さらにお口の中の写真、顔貌の写真、現状のかみ合わせを診るための型どりと石膏模型作りが必要です。

その模型を咬合器(こうごうき)という器械に取り付けてかみ合わせをチェックしていきます。

 

 

取り付ける際に重要なことは型どりした模型とお顔の位置関係を実際の位置関係と同じく器械に取り付けることです。

そのために一番上の写真のような器具をお顔に設置していきます。

そして模型を咬合器(こうごうき)と呼ぶ器械に取り付けます。

こうすることにより顎の動きやかみ合わせが実際の動きと近い状態で診ることができ診断ができます。

これらの診査資料等を基に診査診断し治療計画と入れ歯の設計をします。

家を建てる時にも最初に方角や地盤を検査して設計図を作って建築を開始しますよね。

これと同じようになるべく長く壊れにくい入れ歯を作るにはこのような診査診断と治療計画と入れ歯の設計が重要です。

2-2:かみ合わせを重視してくれる

見た目の良い入れ歯を入れても噛むことができなければ意味がないですよね。

私たちの歯の前歯と奥歯にはそれぞれ役割があり

その仕事をしていない歯と仕事をしすぎている歯があるとかみ合わせ全体に支障をきたします。

この場合は自覚症状はほとんどありません。

治療を始める前にかみ合わせを診断しこれから作る入れ歯でかみ合わせが整うよう入れ歯の設計をします。

ご自分の歯が揃っている場合のかみ合わせと入れ歯のかみ合わせは多少異なり「入れ歯」という人工臓器がお口の中でうまく機能できるようにかみ合わせを作ります。

これを作るには歯科医師だけではなく実際に入れ歯を作る歯科技工士と共に入れ歯の知識を共有しなければいけません。

歯科医師と歯科技工士がそれぞれ違う入れ歯の知識では良い入れ歯はできません。

 

かみ合わせを整えると思わぬ二次的な効果を得ることができます。

例えば顔が斜めに傾いていたのが改善されお顔の表情が明るくなったなど様々な二次的な効果を患者様から頂いています。

2-3:すぐに神経を取らない

歯の中の神経を取ると枯れ木のように脆くなってしまいます。

そのような歯に過度の力が掛ると根っこが割れてしまい抜歯しなければなりません。

虫歯が神経にまで及んでいたり強い痛みがある場合は神経を取らないといけませんが

できるだけ神経を残す努力をしてくれる歯科医院で治療を受けましょう。

2-4:すぐに歯を抜かない

ご自分の歯の根の周囲に歯根膜というものがあり歯の感覚をここで感じています。

硬い、軟らかいという感覚です。

また「これ以上噛むと歯が割れそう」と感じることがあると思いますがこのような噛む力の制御も担っています。

ちなみにインプラントはこのような感覚がありませんので

力が入り過ぎてインプラントや被せ物のセラミックが壊れることがあります。

基本的にインプラントとご自分の歯を被せ物で繋げることができませんので

「数本しか残っていない歯を抜いて全てインプラントにしましょう。」と言われることがあるようです。

話を戻します。

入れ歯治療の場合、歯をそのまま残せない場合は根っこだけ残すなど

なるべく歯を残す努力をしてくれる歯科医院で治療しましょう。

3 まとめ

40代からの入れ歯選びの3つのポイントは

目立たない入れ歯

良く噛める入れ歯

将来を見据えた入れ歯

です。

一番のポイントは「将来を見据えた治療」を考えて頂きたいのです。

一般的な入れ歯やノンクラスプデンチャーは支えとなる歯が早期に抜ける傾向にあり

入れ歯と残っている歯を共に寿命を長くすることはできません。

インプラントの場合はマイナスの変化があったときの対処が困難なことがあります。

私は訪問歯科を経験し脳梗塞で倒れ入院された方のご家族から「歯茎から出血しているので診てほしい」と依頼され

拝見したところお口の中のほとんどにインプラントが施されており

その周囲の歯茎が腫れて膿が出てインプラントがグラついていました。

一般の歯科医院では見たことがないのでかなり衝撃的でした。

この患者様に全部のインプラントを撤去して入れ歯を作ることは困難です。

インプラントを否定しているわけではなく

インプラントが少数でご自分の歯に虫歯や歯周病のリスク、かみ合わせにほとんど問題がない場合は

インプラント治療が適していると思いますが本数が増えるとそれだけリスクも増えてしまいます。

30年後40年後は年齢的に体力が衰え糖尿病などの病気を患っているかもしれません。

その時に外科処置のある大掛かりな治療にならないような最適な入れ歯治療を選ぶことも一つの考えではないでしょうか。

当院でお勧めしているテレスコープ義歯(ホームページではドイツ式入れ歯となります)に

関心のある方は以下のサイトをご覧ください。

 

筆者プロフィール

著者

イーストワン歯科本八幡
東 郁子

■経歴
  • 平成6年 鶴見大学歯学部 卒業
  • 平成7年 鶴見大学付属病院研修医 修了
  • 平成7年 都内の歯科医院 勤務
  • 平成30年 イーストワン歯科本八幡 開院
■所属学会/スタディグループ
  • ●IPSG包括歯科医療研究会
  • 第2回咬合認定医コース受講 咬合認定医 取得
  • 総義歯の基礎と臨床 受講
  • 顎関節症ライブ実習コース 受講
  • パーシャルデンチャーとテレスコープシステム 理論と実習コース 受講
  • 咬合治療の臨床 受講
  • ●日本臨床歯科医学会
  • レギュラーコース 受講
  • ●顎咬合学会