【保険の白い歯、銀歯と自費のセラミックの歯、どれを選べばよいの?】後悔しないように知っておくべきこと

【保険の白い歯、銀歯と自費のセラミックの歯、どれを選べばよいの?】後悔しないように知っておくべきこと

歯医者さんで治療をしたことがあるあなたのお口の中には銀歯が入っていますか?

今この銀歯の一部に使われている金属のパラジウムの価格が異常に高騰しています。

そこで国は医療費の削減のためCAD/CAM冠と称する白い被せ物を保険診療に組み入れました。

 

歯科の治療には健康保険証を使ってできる保険治療と健康保険証が使えない自費治療があります。

保険治療は国が定めた材料や料金などルールに従って行うので費用が安く済む反面、十分な時間がかけられない、品質や精度の良いものが作れないなどデメリットが多くあります。

それ故に保険治療を受けた患者様のお口の中を拝見すると粗略な治療の跡が多くみられます。

自費治療は自由に身体に安全な高品質な材料を用いて丁寧に精度の良いものを作ることができます。従って患者様にとって長持ちする口内環境を作ることができます。

保険治療と自費治療の違いを入院に例えるなら差額ベッド代が掛からない大部屋で人のいびきや会話など生活音がうるさい環境の悪い中で入院生活を送るのが保険治療、差額ベッド代は掛るが自分の部屋のような個室でゆったり、人に気兼ねなく入院生活を送るのが自費治療です。

この記事では保険の白い歯であるCAD/CAM冠、銀歯と自費のセラミックを解説します。

目次

1章:保険治療の白い歯はどのようなもの?

1-1:CAD/CAM冠のメリット、デメリット

2章:保険治療の銀歯はどのようなもの?

2-1:銀歯のメリット、デメリット

3章:自費治療のセラミックの歯はどのようなもの?

3-1:メタルセラミックのメリット、デメリット

3-2:オールセラミック1(ガラスセラミック)のメリット、デメリット

3-3:オールセラミック2(ジルコニア)のメリット、デメリット

4章:保険の白い歯、銀歯と自費のセラミックの選び方

4-1:とにかく費用の安さ重視の方

4-2:保険治療で治してダメになったらまた保険治療でやり直せばよいという考えの方

4-3:見た目が美しくなるべく長期間に渡って長持ちさせたい方

まとめ

1章:保険治療の白い歯はどのようなもの?

最近、保険でできるようになった白い被せ物をCAD/CAM冠といいます。

CAD/CAM(キャドキャム)とはコンピューターでデザインしコンピューターで作成する被せ物です。

CAD/CAMでは保険の白い歯以外にもセラミックの被せ物も作ることができます。

保険で作るCAD/CAM冠の材料は少量のセラミックを混ぜたプラスチックです。

1-1:CAD/CAM冠のメリット、デメリット

メリット>

・金属アレルギーの心配がない

・目立たない

デメリット

・色調に透明感がない

・傷が付きやすいので歯垢が付きやすい

・水分を吸う材質のため着色しやすい

・劣化しやすので長持ちしない

・金属やセラミックに比べ強度がないので割れたり欠けたりする

・歪みやすいので外れることが多い

・化学物質過敏症では発赤やかゆみなどの症状が出る可能性がある

一番のデメリットは歯のエナメル質より柔らかい材料であるので摩耗が早くそれに加えてプラスチックである故に劣化が早いことです。

摩耗が早いとかみ合わせが崩れ残っている歯の負担が過剰になり知覚過敏、歯周病による歯の喪失、虫歯、顎関節症など様々な問題が出てきます。

もうひとつの問題はCAD/CAM冠の被せ物のフィット感、歯の色、形態の再現性がいまいちなことです。

器械で作っているため早く作れますが細部まできちんと作ることは難しいのが現状です。

最近は一番奥の第二大臼歯にPEEK冠と呼ぶプラスチックの白い被せ物が保険適用になりました。こちらは性質以前に色が乳白色の単色のためお口の中に入れるのを躊躇う方が多いと思います。

2章:保険治療の銀歯はどのようなもの?

保険の被せ物に「銀歯」があります。

この銀歯の金属は12%金銀パラジウム合金と呼ぶ混ざりものです。その組成割合は国で定められています。

12%金・20%パラジウム・50%銀・16%銅です。

これが安全かどうか…。

昔、保険の詰め物で(今でも患者様のお口の中に見られます。)「アマルガム」という詰め物がありました。

今でも患者様のお口の中に入っているのを拝見します。

この組成は銀35%、スズ9%、銅6%、少量の亜鉛、残りの約40%が水銀です。

水銀は人体に有害な物質で身体に悪影響を及ぼす可能性があることはほとんどの方が知っています。

このようなことからその時代で保険で扱う材料が100%安全とは限りません。

2-1:銀歯のメリット、デメリット

メリット

・欠けたり割れたりすることがない

・噛む機能はセラミックと同等

デメリット>

・金属色が目立つ

・金属アレルギーの心配がある

・金属が溶けだし歯茎に黒くしみ込んだメタルタトゥーになる

・銀の含有量が多いので腐食しやすくその部分から虫歯になりやすく外れることがある

・金属イオンの影響で歯垢が付きやすいので歯周病、虫歯のリスクが高まる

・発がん性がある

特にパラジウムは金属の中でもアレルギー感作率37.9%と最も高く唾液に溶けてイオン化した金属が血液に入り込みます。

そして金属アレルギーの発症のリスクが高まります。金属アレルギーの症状はアトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、頭痛、めまい、喘息など多くの症例の報告があります。

また発がん性の疑いもあり口腔がんや舌癌がパラジウム合金と接触する部位に発症していることが多く観察されるためドイツではパラジウムの使用を禁止しています。

スウェーデンでは妊婦と小児には完全使用禁止です。

海外で禁止されている金属を日本では未だに使用されているのです。

3章:自費治療のセラミックの歯はどんなもの?

自費のセラミックは大きく分けて3種類あります。

金属を使用したメタルセラミックと金属を使用しないオールセラミックが2種類があります。オールセラミックは材料の違いによりガラスセラミックとジルコニアがあります。

3-1:メタルセラミックのメリット、デメリット

メタルセラミックは金属のフレームに陶材を盛って焼き付けるもので金属焼付ポーセレンとも呼びます。わかり易く例えるなら「七宝焼き」のようなものです。七宝焼きは金、銀、銅など金属を下地にした焼き物です。

 

※右端はゴールドクラウン(金歯)です。

メリット

・前歯の他に金属のフレームが内側にあるため強い力が奥歯やブリッジにも使用できる

・天然歯の色に近い

・変色しない

・歯垢が付着しにくいので虫歯や歯周病になりにくい

・金属アレルギーが少ない

デメリット

・強い力で割れることがある

・表面の明るさがマットな感じになる

・金属アレルギーの可能性もある

3-2:オールセラミック1(ガラスセラミック)のメリット、デメリット

オールセラミックのひとつは二ケイ酸リチウムガラスを主成分にしたセラミックです。

メリット

・ガラスでできているため透明感があり自然な色調を再現できる

・虫歯になりにくい

・金属アレルギーの心配がない

デメリット

・ブリッジなど適応できないケースがある

・割れる可能性がある

3-3:オールセラミック2(ジルコニア)のメリット、デメリット

もう一つのオールセラミックはジルコニアが材料のセラミックです。

 

メリット

・割れにくい

・金属アレルギーの心配がない

・変色しない

・歯垢が付着しにくいので虫歯や歯周病になりにくい

・強度があるのでブリッジやインプラント体にも使える

デメリット

・割れることがある

・研磨と調整が難しい

・メタルセラミックやオールセラミック1に比べて外れやすい

4章:保険の白い歯、銀歯と自費のセラミックの選び方

どのような基準で選ぶのかは患者様によって異なります。大まかなタイプ別に分けて解説します。

4-1:とにかく費用の安さ重視の方

費用を掛けたくない方は保険治療がお勧めです。

歯科医療で最低価格でできる治療は保険治療です。しかし保険治療が国で決めているからといって安全で長持ちするものとは限りません。却ってご自分の健康な歯を害することもあります。

2章でも書きましたが「アマルガム」という詰め物が昭和30年頃の保険治療にたくさん使用されてきました。私も今から30年ほど前の歯科大学の実習で「アマルガム充填」を習ったことがあります。

このアマルガムの中には「水銀」が含まれており現在では体に良くないことはほとんどの方が知っています。その時代に保険治療に取り入れられた材料が安全安心なものとは限らないのです。

4-2:保険治療でダメになったらまた保険治療でやり直せばよいという考えの方

保険治療した歯の寿命は長くありません。

平均して4,5年で再治療になる可能性が高いです。

実は保険治療を短いサイクルでやり直す治療には限界があります。

最終的に抜歯に至る時期が早くやってきます。

そもそも歯の治療は「もとに戻す治療」ではなく人工物で補う治療です。

例えば風邪で熱が出たり鼻水、咳が出るといった症状が治ると身体は風邪をひく前の元の状態に戻りますが歯の治療は虫歯になってしまったら元の歯の状態には戻せません。

詰め物など何かしらの人工物で補う治療です。お口の中は熱い物や冷たい物、酸っぱい物など色々な温度変化や食物の性質の異なるものが入ってきます。また歯周病菌などの細菌もいます。このような過酷な状況の中で耐えられる天然歯と性質や物性などが全く同じ人工物はありません。

保険治療を繰り返しても良いというタイプの方は歯の寿命が短くなることを理解した上で選択してください。

4-3:見た目が美しくなるべく長期間に渡って長持ちさせたい方

このタイプの方は自費のセラミックがお勧めです。

セラミックは天然歯と同じような白さを再現でき変色しにくいので見た目が美しくなります。また汚れが付きにくいので歯周病や虫歯にもなりにくいです。

定期的に歯科医院でのクリーニングを行いご自宅でも歯ブラシの他に歯と歯の間の清掃道具をお使いいただくことによりさらに虫歯、歯周病の予防効果が高まります。

セラミックは硬さやその厚みによって適応が異なりますのでどのセラミックが自分に合うのか歯科医院で相談すると良いでしょう。

まとめ

安さ重視の方は保険の白い歯をお勧めします。

美しい白い歯でなるべく長期間持たせたい方は自費のセラミックの歯をお勧めします。

自費のセラミックは

・メタルセラミック

・オールセラミック1(ガラスセラミック)

・オールセラミック2(ジルコニア)

の3種類です。

見た目が美しくなるべく長期間に渡って長持ちさせたいタイプの方は患者様のお口の状態によって選択するセラミックが異なりますので歯科医院で相談しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆者プロフィール

著者

イーストワン歯科本八幡
東 郁子

■経歴
  • 平成6年 鶴見大学歯学部 卒業
  • 平成7年 鶴見大学付属病院研修医 修了
  • 平成7年 都内の歯科医院 勤務
  • 平成30年 イーストワン歯科本八幡 開院
■所属学会/スタディグループ
  • ●IPSG包括歯科医療研究会
  • 第2回咬合認定医コース受講 咬合認定医 取得
  • 総義歯の基礎と臨床 受講
  • 顎関節症ライブ実習コース 受講
  • パーシャルデンチャーとテレスコープシステム 理論と実習コース 受講
  • 咬合治療の臨床 受講
  • ●日本臨床歯科医学会
  • レギュラーコース 受講
  • ●顎咬合学会