糖尿病がある方は、歯周病が進みやすく、歯を失うリスクも高いといわれています。糖尿病の人はなぜ歯が抜けやすいのか、歯周病と血糖の関係、毎日のケアと定期検診でできることを、千葉県市川市本八幡の歯科医師がわかりやすくご説明します。
こんなサインに心当たりはありませんか
- □ 歯みがきをすると歯ぐきから血が出る
- □ 歯ぐきが赤く腫れている、触ると痛む
- □ 口臭を家族や周りの人から指摘されたことがある
- □ 歯がぐらぐらする、以前より歯が長く見える
- □ 糖尿病と診断されている、または健診で血糖値を指摘されたことがある
- □ 傷や口内炎が治りにくいと感じることがある
当てはまる項目がある方、特に糖尿病がある方・血糖値を指摘されたことがある方は、歯周病が進んでいる可能性があります。この記事では、糖尿病と歯周病がなぜ互いに影響し合うのか、そして歯を守るために今からできることを、当院の考え方に沿ってご説明します。
歯周病は、痛みが少なく気づきにくい病気です
歯周病は、初期のうちはほとんど痛みがありません。歯ぐきが少し赤くなったり、歯みがきのときにわずかに出血したりする程度で、日常生活に支障がないため見過ごされがちです。しかし、炎症が歯ぐきの奥深く、歯を支えている骨まで広がっていくと、歯を支える骨が少しずつやせていきます。骨が大きく失われるまで自覚症状に乏しいことが多く、歯がぐらつき始めたときにはすでにかなり進行しているケースも少なくありません。「痛くないから大丈夫」と自己判断せず、歯ぐきからの出血や口臭など、小さなサインの段階で歯科医院を受診することが、歯を残すために大切です。
糖尿病の人はなぜ歯が抜けやすいのか
糖尿病の人は歯周病にかかりやすく、約3倍かかりやすいとする報告があります。血糖の値が高い状態が続くと、細菌に対する体の抵抗力が落ち、歯ぐきの中で歯周病菌が増えやすくなります。歯周病菌が出す毒素や炎症を起こす物質が歯を支えている骨に働きかけ、骨がやせるスピードが早まりやすくなると考えられています。骨がやせて歯を支える土台が弱くなると、歯がぐらつき、最終的に抜けてしまうことにつながります。実際に、糖尿病の人は歯を失うリスクが約1.6倍という報告もあります。
もうひとつ知っておいていただきたいのが、糖尿病は傷の治りを妨げる要因のひとつとされていることです。歯ぐきの腫れや炎症も、治りにくい傷のひとつと考えることができます。また、血糖の値が高いままの状態で抜歯などの外科的な処置を行うと、感染しやすくなったり治りが遅れたりすることがあります。そのため、歯を抜く必要がある場合でも、まず内科の主治医と相談しながら血糖のコントロールを優先することがあります。「歯が痛いのにすぐ抜いてもらえない」という状況は、決して歯科医院が治療を後回しにしているのではなく、安全に治療を進めるために必要な手順であることをご理解いただければと思います。逆にいえば、血糖のコントロールが安定していれば、抜歯を含めた歯科治療は多くの場合問題なく受けていただけます。「糖尿病だから歯医者に行きにくい」と我慢を続けるより、まずは歯科医院と内科の両方に現在の状態を相談していただくことが、結果として歯を守ることにつながります。
歯周病と血糖は、互いに影響し合う関係にあります
糖尿病と歯周病の関係は、一方通行ではありません。糖尿病があると歯周病が進みやすくなる一方で、歯周病があると血糖のコントロールが難しくなることも知られています。前向きに追跡した研究をまとめた報告では、糖尿病がある人は歯周病を新たに発症しやすく、歯周病がある人は糖尿病を新たに発症しやすいという、双方向の関係が示されています。歯周病菌による炎症が続くと、体の中でインスリンの働きを妨げる物質が増えやすくなり、血糖が下がりにくくなることがあります。糖尿病と歯周病は、どちらか一方だけを治療していても十分ではなく、両方に目を向けることで初めてうまくコントロールできる関係にあると考えられています。
逆に、歯周病の治療を行うことで血糖の指標が改善したという報告もあります。歯周病治療のあと、血糖の状態を示すHbA1cの値が数か月から1年ほどかけて下がったとする研究のまとめもあり、歯周病の治療がお口だけでなく体全体の健康にも良い影響を与える可能性が示されています。歯周病の治療は、糖尿病の治療を頑張っている方にとって、決して無駄なことではありません。
糖尿病の方は、主治医と歯科医院の両方にかかることが大切です
糖尿病の治療は、内科の主治医の指示に従って進めていただくことが基本です。当院では糖尿病の薬の増減や治療方針の変更をお勧めすることはありません。そのうえで、歯周病の検査・治療は歯科医院でなければ行えないものです。糖尿病がある方は、内科での血糖コントロールと並行して、歯科でも定期的に歯周病の状態を確認していただくことをお勧めしています。当院にかかられている糖尿病の方には、以下のような情報を教えていただくようお願いすることがあります。
- ・お薬手帳(現在服用している糖尿病のお薬の種類)
- ・直近の血糖値やHbA1cの数値(わかる範囲で構いません)
- ・主治医の連絡先や、かかりつけの病院名
- ・低血糖を起こしやすいかどうかなど、体調面で気をつけていること
外科的な処置が必要な場合には、必要に応じて主治医と情報を共有しながら進めることもあります。「歯科医院に糖尿病のことを伝えるのは気が引ける」と感じる方もいらっしゃいますが、安全に治療を進めるためにとても大切な情報ですので、遠慮なくお伝えください。
歯周病の治療・毎日のケア・定期検診でできること
歯周病は、一度進行すると元の状態には戻りませんが、適切な治療とケアで進行を抑えることができます。歯科医院では、歯ぐきの中まで入り込んだ歯石やバイオフィルム(細菌のかたまり)を専用の器具で取り除くクリーニングを行います。歯磨きだけでは落としきれない汚れを定期的に除去することが、歯周病の進行を抑えるために重要です。これらの検査・クリーニングの多くは保険診療で受けていただけます。
今日からできるセルフケア
- ・毎食後、特に就寝前は丁寧に歯を磨く
- ・デンタルフロスまたは歯間ブラシを1日1回は使う(歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを落としきれません)
- ・歯ブラシの選び方や当て方は自己流にせず、歯科医院で確認してもらう
- ・血糖値やHbA1cの数値をできるだけ把握しておく
- ・歯ぐきの出血や腫れ、口臭の変化があれば早めに歯科医院に相談する
ご自宅でのケアに加えて、かかりつけの歯科医院で定期的に歯ぐきの状態を確認してもらうことで、変化に早く気づくことができます。糖尿病がある方は、そうでない方よりも歯周病が進みやすい分、この積み重ねがより大切になります。
歯を失うことは、その先の生活にも関わってきます
歯を失うと、硬いものが食べにくくなったり、人前で笑いにくくなったりと、日々の生活に影響が出てきます。また、歯を失ったまま噛む機能が低下した状態が続くことは、認知症など、お口以外の健康とも関わりがあるとする報告があります。詳しくは入れ歯と認知症の関係についての記事でご説明していますので、あわせてご覧ください。糖尿病の治療を続けながら、お口の健康も守っていくことが、これから先も元気に過ごすための土台になると当院は考えています。ご家族に糖尿病がある方、ご自身の血糖値が気になっている方は、歯ぐきの状態にも目を向けていただくきっかけにしていただければと思います。
すでに歯を失った方へ——入れ歯という選択肢
「もっと早く歯医者に行っていれば」と感じている方もいらっしゃると思います。しかし、すでに歯を失ってしまった場合でも、今の状態に合った入れ歯で、しっかり噛める生活を取り戻せる可能性があります。入れ歯にはいくつかの種類があり、残っている歯の本数や状態によって合う選択肢が変わります。まずは部分入れ歯・総入れ歯の基本を知りたい方は入れ歯の種類についての記事をご覧ください。糖尿病がある方の入れ歯治療では、歯ぐきの状態や治りやすさを確認しながら、無理のない計画を一緒に考えていきます。
よくあるご質問
Q. 糖尿病があると、歯周病の治療は受けられませんか?
A. 血糖のコントロール状況によりますが、多くの場合クリーニングなどの治療は受けていただけます。抜歯など外科的な処置が必要な場合は、内科の主治医と連携しながら進めることがあります。
Q. 糖尿病があるとインプラントはできませんか?
A. 血糖のコントロール状況やお口の状態によって異なりますので、診察と検査のうえでご案内します。まずはご相談ください。
Q. 歯周病は完全に治りますか?
A. 歯周病は、進行を抑えてコントロールしていく病気です。治療とその後のメインテナンスを続けることで、良い状態を維持しやすくなります。
Q. 血糖値が高いと歯科の治療を断られますか?
A. 断るということはありませんが、外科的な処置の前には血糖の状態を確認させていただくことがあります。まずは主治医の指示に従って血糖コントロールを整えてから、歯科での処置に進むことをお勧めする場合があります。
Q. すでに歯を失っています。今からでも入れ歯は作れますか?
A. 年齢や糖尿病の有無を理由に諦める必要はありません。お口の状態を確認したうえで、無理のない入れ歯の計画をご提案します。
Q. 定期検診はどのくらいの頻度で受ければよいですか?
A. 歯ぐきの状態によって変わるため、かかりつけの歯科医院と相談して決めていただくのがよいでしょう。糖尿病がある方は歯周病が進みやすいため、気になる症状がなくても定期的に確認してもらうことをお勧めします。
費用について
歯周病の検査・クリーニングなどの治療の多くは保険診療で受けていただけます。入れ歯をご検討の方に行う精密検査(レントゲン・口腔内写真・お見積り)の費用(税込)は33,000円です。かぶせ物のみのご相談では、模型・お口の中の写真・お見積りによる簡易診査(16,500円)をご案内する場合があります。自費の入れ歯・被せ物の製作は自由診療です。個別の治療内容ごとの費用は料金ページをご覧ください。
主なリスク・副作用:歯を削る、抜く必要がある場合があります。糖尿病がある方は、血糖のコントロール状況によって治療の進め方や治癒の期間が変わることがあります。治療期間が数か月〜1年以上に及ぶ場合があります。定期検診を怠ると歯周病が再び進行することがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療の効果を保証するものではありません。糖尿病の治療は、必ず内科の主治医の指示に従ってください。歯周病や歯の症状にはほかの原因がある場合もありますので、必要に応じて他の診療科の受診もご検討ください。治療内容・費用・期間には個人差があります。ご不安な点がある方は、必ず歯科医師の診察を受けたうえでご相談ください。
糖尿病があり歯ぐきや歯のぐらつきが気になる方、すでに歯を失ってお困りの方は、まずご相談ください。お口の状態を拝見したうえで、歯周病の状態、治療の選択肢、費用と期間をご説明します。その日に治療を決める必要はありません。ご相談は、院長が直接お答えする無料メール相談と、レントゲンでお口全体を確認する来院相談(5,500円)をご用意しています。ホームページの予約フォーム、またはお電話でご予約ください。
イーストワン歯科本八幡
住所:千葉県市川市八幡3-19-1
京成八幡WESTCOURT 2F
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