【総入れ歯が落ちる・噛めないのはなぜ?】本八幡の歯科医師が原因を解説

query_builder 2026/08/14

総入れ歯がすぐ落ちる、レタスやイカが噛み切れない。その多くは「慣れ」の問題ではなく、入れ歯の大きさ・ふちの形・人工歯・噛み合わせに原因があります。上の入れ歯が落ちる理由と、噛める総入れ歯の条件を、市川市本八幡の歯科医師が解説します。

総入れ歯のことで、こんなお悩みはありませんか

  • □ 話している途中や食事中に、上の入れ歯が落ちてくる
  • □ レタス・イカ・タコ・お肉が噛み切れない
  • □ 入れ歯安定剤がないと外出できない
  • □ 作り直したのに、前の入れ歯と使い心地が変わらない
  • □ 「入れ歯はこういうもの」と、あきらめている

家族や友人と食事に行っても、メニューを開いて最初に探すのは「食べたいもの」ではなく「食べられそうなもの」。旅行に誘われても、食事のことを考えると気が重くなる。そうして、自分のあごの形が特別なのだ、年齢のせいなのだと、ご自身を納得させてこられた方が少なくありません。

ご家族の介護やお子さんのことを優先して、ご自分の歯を後回しにしてこられたのだと思います。今の状態は、あなたのがんばりが足りなかったからではありません。

総入れ歯が落ちる・噛めないという症状には、多くの場合、はっきりした理由があります。理由が分かれば、手の打ちようがあります。この記事では、その理由を、なるべく専門用語を使わずに整理します。


上の総入れ歯が落ちてくる理由

上の総入れ歯は、上あごの歯ぐきに吸いつくことで安定しています。入れ歯と歯ぐきのあいだに唾液の薄い膜ができ、入れ歯のふちが全周でぴたりと閉じているときに、吸盤のように吸いつきます。どこか1か所でもふちから空気が入ると、吸いつきは抜けてしまいます。

総入れ歯が安定する仕組み(唾液の吸いつき・口のまわりの筋肉・噛み合わせ)は、【総入れ歯は主に7種類あります。】で詳しくご説明しています。ここでは、この吸いつきが失われる原因を見ていきます。

いちばん多いのは、入れ歯が小さいこと

お持ちいただいた入れ歯を拝見して、落ちる原因としてもっとも多く見られるのが、入れ歯が小さいことです。入れ歯が小さいと、吸いつく面積も、ふちを閉じる長さも足りなくなります。

とくに大切なのが、上の入れ歯のいちばん後ろのふちの位置です。

上の入れ歯の後ろのふちの位置。青のラインでは短く、ピンクのラインまで伸ばす

この写真は総入れ歯ではありませんが、考え方は同じです。後ろのふちが青のラインで止まっていると、吸いつきが得られず落ちやすくなります。ピンクのラインの位置まで設計すると、外れにくくなります。

上の入れ歯の後ろのふちをピンクのラインまで伸ばした設計

上あごの奥には、骨のある硬い部分と、その後ろのやわらかい部分があります。やわらかい部分のうち、話したり飲み込んだりしても大きく動かないところまでふちを伸ばすと、口を動かしても閉じた状態が保たれます。手前の硬い部分で止めてしまうと、話す・笑う・上を向くたびに空気が入り、吸いつきが抜けます。

「後ろまで伸ばすと、気持ち悪くならないか」とご心配になる方もいらっしゃいます。最初は違和感が出ることがありますが、ふちの厚みと形を整えながら慣れていただきます。慣れるまでの期間には個人差があります。

上あごの真ん中をくりぬくと、吸いつきが失われる

上あごの広い部分は、話すときや飲み込むときに舌が触れる場所です。初めて総入れ歯を入れた方はここに違和感を覚えやすく、真ん中を削って使っている入れ歯を見かけることがあります。

上あごの真ん中をくりぬいた形の入れ歯

この写真も部分入れ歯ですが、総入れ歯で同じ形にすると、吸いつく面積が大きく減り、落ちやすくなります。安定剤でなんとか使っていても、食事中に入れ歯と歯ぐきのあいだに食べ物が入り込み、噛みにくくなります。

上あごを覆う形の入れ歯

上あごを覆う形の入れ歯は、最初は違和感があっても、吸いつきを保ちやすい形です。違和感が強い場合は、削ってしまう前にご相談ください。厚みや形の調整で和らげられることがあります。

ふちの形を、頬や舌の動きに合わせる

もうひとつ大切なのが、入れ歯の内側、歯ぐきに触れる面とふちの形です。

入れ歯の内面。黄色のラインがふちの部分

黄色のラインで示したふちは、頬・舌・唇の動きに合わせて形を整える必要があります。ここが筋肉の動きとぶつかると、しゃべった瞬間に外れる、食事の途中で落ちてくる、ということが起こります。

そのため当院では、お口の形を大まかに写したあと、その方専用のトレーを作り、頬や舌を実際に動かしていただきながら、もう一度型を採ります。動いているときのお口の形を写し取るためです。

大きすぎても外れる

小さすぎる入れ歯は落ちやすいのですが、大きすぎても、筋肉に押されて外れます。入れ歯の大きさは、前に作った入れ歯と比べて決めるものではありません。その方のあごの大きさと、口のまわりの筋肉の動きに合わせて決め、調整していくことが大切です。


入れ歯やお口の変化で、落ちやすくなることもあります

作ったときには合っていた入れ歯でも、次のような変化で外れやすくなります。

あごの骨がやせる

歯を失ったあと、あごの骨は少しずつやせていきます。総入れ歯を使っている方を25年間追いかけた研究でも、骨の減少は途中で止まらずに続いていました(Tallgren 1972)。土台の形が変われば、入れ歯とのあいだにすき間ができ、吸いつきが弱まります。誰にでも起きる自然な変化で、使い方が悪いからではありません。

唾液が少ない

お薬の影響などで唾液が減ると、吸いつきに必要な膜ができにくくなります。飲んでいるお薬がある方は、ご相談のときにお知らせください。

下の総入れ歯は、もともと吸いつきにくい

下あごは、上あごのように広く吸いつく面がありません。舌と頬のあいだで、筋肉に押されても動きにくい位置に歯を並べられているかが、安定の決め手になります。

人工歯がすり減る

長く使ううちに人工歯がすり減ると、噛み合わせが低くなり、上下の当たり方が崩れます。片側だけが当たるようになると、反対側が浮いて外れやすくなります。口元にしわが寄りやすくなるのも、このためです。


同じ総入れ歯でも「噛める・噛めない」が分かれる理由

落ちない入れ歯ができても、それだけで噛めるようになるとは限りません。噛めるかどうかは、別の2つで決まります。

人工歯の、噛む面の形

ご自身の歯の噛む面には、細かい溝や山があります。上下が噛み合うとき、この山と溝が点で当たり、食べ物をはさみのように切り分けています。溝の浅い人工歯や、すり減って平らになった人工歯では、面と面で押しつぶす動きしかできません。レタスやイカのように、押しつぶしても切れない食べ物が苦手になるのはこのためです。

健康保険で使える人工歯は、使える種類が決められています。これは制度の仕組みで、保険の入れ歯が悪いという意味ではありません。自由診療では、すり減りにくく、噛む面の形を細かく作った人工歯を選ぶことができます。

噛み合わせ、とくに横に動かしたとき

総入れ歯は、上と下が別々に動く装置です。まっすぐ噛んだときに上下が均等に当たることに加えて、あごを左右に動かしたときにも入れ歯が浮き上がらないことが必要です。歯ぎしりのような動きがある方、片側でばかり噛む癖がある方は、この横の動きで外れたり、傷ができたりしやすくなります。

当院では、上下のあごの位置関係を記録し、お口の外であごの動きを再現できる装置(咬合器)に取り付けて、横の動きまで確かめながら歯を並べます。


こんなサインがあれば、入れ歯を見直す時期かもしれません

  • □ 話している途中で、上の入れ歯が落ちてくる
  • □ 入れ歯安定剤が毎日欠かせない
  • □ 噛み切れない食べ物を、最初から選ばなくなった
  • □ いつも同じ場所に傷ができる、痛みが出る
  • □ 違和感があって、入れ歯を自分で削ったことがある
  • □ 慣れるのを待ったまま、数年が過ぎている
  • □ 口元にしわが増えた、口元が縮んだように見える

当てはまる項目が多いほど、慣れを待つより、原因を確かめるほうが近道です。入れ歯安定剤を毎日お使いの方は、【入れ歯安定剤を毎日使っている方へ】もあわせてご覧ください。


作り直す前に、原因を確かめる

「落ちる・噛めない=作り直すしかない」ではありません。原因によっては、今の入れ歯の調整や裏打ちで改善できることがあります。

  • ・調整…当たって痛い所を削る、噛み合わせの当たり方を整える
  • ・裏打ち…やせた歯ぐきに合わせて、入れ歯の内側に材料を足す

一方で、入れ歯の大きさやふちの形、噛み合わせの位置そのものに原因がある場合は、調整や裏打ちだけでは変わりにくいことがあります。どちらが合っているかは、今の入れ歯を拝見してご説明します。


総入れ歯の選択肢を比べる

費用が高いほど良い入れ歯、ということではありません。ご希望・お口の状態・ご予算によって、合う選択は変わります。

種類 特徴 費用
保険の総入れ歯 費用の負担が軽く、期間も比較的短い。どこの歯科医院でも作れて、修理や作り直しがしやすい。使える材料と工程に決まりがある 健康保険が使えます。窓口のご負担は負担割合によって異なります
上下顎同時印象法の総入れ歯(当院の自費) 専用トレーで噛んだ状態で上下同時に型を採り、あごの動きを記録し、仮合わせで確認してから仕上げる。通院回数が多く、期間が長い 自由診療。上下 2,750,000円(定額)/片あご 1,430,000円
レジリエンツテレスコープ 歯が1〜3本ほど残っていて、支えに使える場合の方法。残った歯にかぶせた内側の装置で、入れ歯を支える 自由診療。1,650,000円〜2,970,000円(片あご)

当院の総入れ歯の作り方や、ほかの種類(金属床・シリコン・インプラントで支える総入れ歯など)は、【総入れ歯は主に7種類あります。】で詳しくご説明しています。歯が残っている方は、【レジリエンツテレスコープとは何か】もご覧ください。


自由診療の費用の目安(すべて税込)

保険の総入れ歯は保険診療です。以下は自費をご検討になる場合の目安です。正確な金額は、診察と検査のうえでお見積りをお出しします。

項目 費用
無料メール相談 無料
来院相談(レントゲンでお口全体を確認) 5,500円
精密検査・治療計画・お見積り 33,000円
総入れ歯(上下顎同時印象法) 上下 2,750,000円/片あご 1,430,000円
レジリエンツテレスコープ(歯が数本残っている場合) 1,650,000円〜2,970,000円(片あご)
  • ・総入れ歯は上下2,750,000円の定額です
  • ・むし歯・歯周病の治療や抜歯が必要な場合は、別途保険診療の費用がかかります
  • ・完成後の調整は3回まで費用に含まれます。4回目以降の調整と、噛み合わせが安定したあとの定期メインテナンスは別途費用がかかります
  • ・お支払いは一括のほか、3回に分けてお支払いいただくこともできます
  • ・自由診療の費用は、医療費控除の対象になります

※2026年9月時点の費用です。改定する場合があります。

治療期間の目安

  • ・保険の総入れ歯 … おおむね1〜2か月
  • ・上下顎同時印象法の総入れ歯 … およそ6か月〜1年(むし歯・歯周病の治療、抜歯後の治りを待つ期間を含む場合はさらにかかります)

知っておいていただきたいリスク

  • ・慣れるまで時間がかかります…装着当初は、違和感や発音のしにくさ、歯ぐきの痛みが出ることがあります。調整を重ねて合わせていきます
  • ・あごの骨の変化は止まりません…年月とともに調整や、将来的な作り直しが必要になります
  • ・ご自身の歯と同じようには噛めません…食べ物によっては、小さく切るなどの工夫が必要です
  • ・安定剤なしで使えるかには個人差があります…あごの骨の量や形、唾液の量によって変わります
  • ・破損することがあります…落としたり強い力が加わったりすると割れることがあります
  • ・お手入れが必要です…毎日の洗浄を怠ると、口臭や歯ぐきの炎症の原因になります
  • ・自由診療全般…保険が使えず、費用は全額ご負担になります。ごく一部の金属で金属アレルギーが生じることがあります

よくあるご質問

Q. 入れ歯安定剤を使えば落ちないので、このままでもよいですか

安定剤は、一時的な補助としては役に立ちます。ただ、毎日欠かせない場合は、入れ歯の大きさやふちの形、噛み合わせに原因が隠れていることがあります。一度、原因を確かめることをおすすめします。詳しくは【入れ歯安定剤を毎日使っている方へ】をご覧ください。

Q. 何度も作り直しましたが、どれも合いませんでした

同じ作り方で作り直すと、同じ結果になりやすいのは事実です。どこに原因があるのかを確かめて、型の採り方や噛み合わせの決め方を変える必要があります。これまでお使いの入れ歯は、合わなかった理由を教えてくれる材料になるので、すべてお持ちください。

Q. 新しい入れ歯に慣れるまで、どのくらいかかりますか

個人差がありますが、話す・食べるを少しずつ練習しながら、調整を重ねて慣れていただきます。慣れていく過程や練習の仕方は、【「総入れ歯はもう仕方ない」と諦める前に。義足・義手と同じリハビリで取り戻す快適な毎日】でご紹介しています。

Q. 年齢的に、もう遅いでしょうか

年齢だけで決めることはありません。あごの骨や歯ぐきの状態、全身のご状況、通院していただけるかを伺ったうえでご説明します。

Q. 歯が数本残っています。総入れ歯にするしかないですか

残っている歯を支えとして使える場合があります。抜いた歯は元に戻りませんので、抜く前に一度ご相談ください。

Q. 相談だけでも大丈夫ですか

はい。その日に治療を始めることはありません。院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


まとめ

  • 1.上の総入れ歯が落ちる原因でもっとも多いのは、入れ歯が小さいこと。とくに後ろのふちの位置が大切です
  • 2.上あごの真ん中を削ると、吸いつきが失われます。違和感は削る前にご相談ください
  • 3.ふちの形を頬や舌の動きに合わせることで、外れにくくなります。大きすぎても外れます
  • 4.噛めるかどうかは、人工歯の噛む面の形と、横に動かしたときの噛み合わせで変わります
  • 5.今の入れ歯の調整や裏打ちで改善できることもあります。原因を確かめてから選びましょう

これから先の毎日を、食べたいものを我慢せずに過ごしていただきたいと考えています。今お使いの入れ歯を拝見すれば、何が原因で落ちているのか、噛めていないのかを具体的にお伝えできます。

ご相談の流れ

  • 1.ホームページの予約フォーム、またはお電話でご予約ください
  • 2.今お使いの入れ歯と、これまでに作った入れ歯があればお持ちください
  • 3.レントゲンでお口全体を確認し、入れ歯が落ちる・噛めない原因と、考えられる選択肢をご説明します(来院相談 5,500円)
  • 4.考えられる治療それぞれの費用・期間・困る点をお伝えします。お持ち帰りいただき、ご家族とご相談のうえでお決めください

まずはメールでという方のために、院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


参考文献

  • ・Tallgren A. The continuing reduction of the residual alveolar ridges in complete denture wearers: a mixed-longitudinal study covering 25 years. J Prosthet Dent. 1972;27(2):120-132.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応や結果には個人差があります。実際の診断・治療方針は、必ず歯科医師の診察を受けたうえでお決めください。

----------------------------------------------------------------------

イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

----------------------------------------------------------------------

NEW

VIEW MORE

CATEGORY

ARCHIVE

TAG