【口呼吸のデメリット|脳・唾液・入れ歯への影響】市川市の歯科医師が解説

query_builder 2026/09/16

口呼吸は、体にどんな影響があるのでしょうか?


口を開けて眠ってしまう、朝起きると口がカラカラ。その口呼吸は、集中力だけでなく、むし歯や歯周病、入れ歯の安定にも関わっている可能性があります。研究で分かっていること・まだ分かっていないことを整理し、今日からできる対策まで、市川市本八幡の歯科医師がご説明します。

「口が開いているよ」とご家族に言われたことはありませんか。あるいは、朝起きたときに口の中がカラカラに乾いていて、水を飲まずにはいられない。テレビを見ているとき、家事をしているとき、気づくと口がぽかんと開いている。

多くの方が「年齢のせい」「体質だから」と考えて、そのままにしていらっしゃいます。けれど口呼吸は、お口の中で確実に起きている変化と結びついています。今日はその話を、少し丁寧にさせてください。


「気づくと口が開いている」を、年齢のせいにしていませんか?



ご家族の介護やお子さん・お孫さんのことを優先してきて、自分のことはいつも後回し。歯のことも「痛くなったらそのとき」で済ませてきた——そうした毎日を過ごしてこられた方ほど、口呼吸のようなささやかな変化は見過ごされがちです。

けれど、口呼吸には必ず理由があります。鼻がつまっている、口のまわりの筋肉が使われなくなっている、歯を失って口元の形が変わった、入れ歯が合っていない。原因が分かれば、対応できることも見えてきます。

まずお伝えしたいのは、口呼吸はあなたの努力不足でも、単なる癖でもないということです。


口呼吸のとき、脳では何が起きているのか


インターネットでは「口呼吸をすると脳が酸欠になる」といった説明を見かけます。実際のところ、研究では何が示されているのでしょうか。正確なところをお伝えします。


報告されていること


前頭前野の酸素の使われ方に差があったという報告があります。近赤外分光法という、頭の表面から脳の血液中の酸素の状態を測る方法を使った研究で、口呼吸をしているときのほうが、鼻呼吸のときよりも前頭前野(額の裏側にあり、考えたり集中したりするときに働く領域)の酸素の負荷が大きくなっていたというものです(Sano M ら、NeuroReport、2013年)。

ここは誤解が広がりやすいところなので、正確に書きます。この研究が示したのは「脳に届く酸素が減った」ということではなく、「酸素の消費・交換の負担が増えていた」ということです。そして被験者はわずか9名の短時間の実験です。「口呼吸をすると脳が酸欠になる」と言い切れるだけの根拠ではありません。

鼻から吸うことが脳のリズムと関係しているという報告もあります。鼻から息を吸っているときに、記憶や感情に関わる脳の領域の活動が呼吸のリズムに同期し、口呼吸に切り替えるとその同期が消えたという研究です(Zelano C ら、Journal of Neuroscience、2016年)。同じ研究では、鼻から息を吸っている瞬間に、表情の識別や記憶のテストの成績がわずかに良かったことも報告されています。

鼻には、鼻ならではの働きがあります。 鼻の奥の副鼻腔では一酸化窒素という物質が作られていて、鼻から吸った空気とともに肺へ届きます。これが肺の血流と換気のバランスを整えることに関わっているという生理学的な研究があります(Lundberg JO らの一連の研究)。さらに鼻は、吸った空気を加湿し、温め、ほこりや細菌をこしとる働きも担っています。エアコンでいえばフィルターと加湿器がついているようなものです。


まだ分かっていないこと


一方で、正直に申し上げておかなければならないことがあります。

・上記の脳の研究は、いずれも少人数の短時間の実験です。日常的に口呼吸を続けている人の脳が長期的にどうなるかを調べたものではありません
・「鼻呼吸にすれば集中力が上がる」「頭が良くなる」と一般化できるほどのデータはありません
・口呼吸そのものが日中の集中力を下げる、という直接の証明もまだありません


インターネット上には断定的な説明があふれていますが、現時点で言えるのは「鼻から吸うことには生理学的な利点があり、口呼吸との差を示す報告もあるが、その大きさや長期的な意味はまだはっきりしていない」というところまでです。


眠っている間の口呼吸は、いびきのサインであることがあります


日中よりも注意していただきたいのが、眠っている間の口呼吸です。

口を開けて眠ると舌が喉のほうへ落ち込みやすくなり、空気の通り道が狭くなって、いびきが起こりやすくなります。もし大きないびき、呼吸が止まっていると指摘されたことがある、日中に強い眠気があるという場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

こちらは歯科ではなく医科(呼吸器内科・睡眠外来など)の領域です。睡眠時無呼吸では深い睡眠が取れず、日中の眠気や注意力の低下が起こることが知られており、治療によって改善が報告されています(厚生労働省 e-ヘルスネット)。心当たりのある方は、まず医科の受診をご検討ください。歯科でお作りするマウスピースが治療の選択肢になる場合もあり、その際は医科と連携して進めます。


それより先に、確実に起きているのが「口の乾き」です


脳のことは、まだ分からない部分が多くあります。けれど歯科医師として、確実に起きているとお伝えできる変化があります。それが、口の乾きです。

口を開けたまま呼吸をすれば、口の中の水分は乾いていきます。特に眠っている間は6〜8時間ずっと空気が通り続けます。


唾液が減ると、むし歯と歯周病が進みやすくなります


唾液は、ただの水ではありません。

・食べかすや細菌を洗い流す(自浄作用)
・酸性に傾いた口の中を中性に戻す
・溶けかけた歯の表面を修復する手助けをする
・細菌の増殖を抑える成分を含む


唾液が減ると、これらの働きが弱まります。唾液の分泌が低下した状態では、むし歯や歯周病のリスクが高まることが公的な資料でも示されています(厚生労働省 e-ヘルスネット、日本歯科医師会)。そして、むし歯と歯周病は成人が歯を失う二大原因です。

また、口が乾くと歯ぐきの表面も乾き、前歯の歯ぐきに炎症が起きやすくなることが歯科臨床ではよく知られています。朝起きたときだけ歯ぐきが腫れぼったい、前歯のまわりだけ歯石がつきやすいという方は、夜間の口呼吸が関係していることがあります。


そして、悪循環が始まります
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

歯を失うと、口元の形が変わります。前歯を失えば口を閉じにくくなり、奥歯を失って噛み合わせの高さが低くなると、口元がすぼまって唇が閉じづらくなる——歯科の臨床では、こうした説明がよくなされます。断定できる大規模な研究があるわけではありませんが、解剖学的には理にかなった変化です。

つまり、

口呼吸 → 口が乾く → むし歯・歯周病が進む → 歯を失う → 口が閉じにくくなる → さらに口呼吸に

という輪ができあがってしまうのです。この輪は、どこかで断ち切らないかぎり回り続けます。


入れ歯をお使いの方へ:唾液が減ると、入れ歯は外れやすくなります


もうすでに入れ歯をお使いの方には、さらに直接的な影響があります。

総入れ歯が歯ぐきにぴたりと吸いつくのは、接着しているからではありません。入れ歯と歯ぐきのあいだにある、ごく薄い唾液の層が、コップとガラス板が水で貼りつくのと同じ原理で入れ歯を保持しています。

ですから、唾液が減ると、

・入れ歯が浮きやすく、外れやすくなる
・乾いた歯ぐきは傷つきやすく、入れ歯が擦れて痛みや潰瘍が生じやすい
・話しているとき、笑ったときに動く感じがする


といったことが起こりやすくなります。「入れ歯が合わない」と感じていらっしゃる原因が、入れ歯の形だけでなく、口の乾きにもあるかもしれない、ということです。

「入れ歯が合わない→噛みにくい→やわらかい物ばかり食べる→口のまわりの筋肉を使わなくなる→ますます口が閉じにくくなる」という流れも、日々の診療でよく拝見します。


セルフチェック:こんなサインはありませんか?


当てはまる項目が多いほど、口呼吸が習慣になっている可能性があります。


□朝起きたとき、口の中がカラカラに乾いている
□起きたときに喉がヒリヒリする、痛む
□唇がよく乾く、荒れる
□気づくと口が開いている、と家族に言われる
□いびきをかくと言われたことがある
□前歯のまわりだけ、歯ぐきが腫れやすい・歯石がつきやすい
□口臭が気になるようになった
□入れ歯が朝いちばんは外れやすい、痛い
□鼻がつまりやすい、花粉症やアレルギー性鼻炎がある
□食事のとき、あまり噛まずに飲み込んでしまう


今日から、ご自身でできること


1.鼻がつまっているなら、まず耳鼻咽喉科へ


これがいちばん大切です。鼻で息ができない状態のまま「口を閉じましょう」と言われても、閉じられません。 アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔の曲がりなど、治療で改善するものが原因のことがあります。順番として、まず鼻の通りを確保することです。

2.口のまわりの筋肉を動かす



口を閉じ続けるには、唇と舌の筋肉が働いている必要があります。「あー」「いー」「うー」「べー」と口を大きく動かす、いわゆる「あいうべ体操」は、その手軽な方法として広く知られています(考案:みらいクリニック 今井一彰医師)。

ただし正確に申し上げると、この体操そのものを検証した比較試験は確認できていません。より広い枠組みである口腔筋機能療法については、睡眠時無呼吸に対する効果を調べた研究が集まりつつある、という段階です。「必ず良くなる方法」としてではなく、「お金がかからず、害のない範囲で試せる方法」としてお考えください。

3.よく噛んで食べる



噛むこと自体が、唾液を出す最も確実な刺激です。やわらかい物ばかりの食事が続いていると、唾液の分泌も口のまわりの筋肉も使われません。逆に言えば、噛める状態を取り戻すことは、口の乾きへの対策にもなります。

4.寝室の乾燥を防ぐ



冬場やエアコンをつけたままの就寝時は、加湿を。それだけでも朝の口の乾き方は変わります。



歯科でできること


今の入れ歯の見直し


歯を失ったまま、あるいは合わない入れ歯のままで口を閉じ続けるのは、なかなか難しいことです。噛み合わせの高さを適切に戻し、噛める状態にすることは、口元を自然に閉じやすくする土台になります。

鼻呼吸のトレーニング器具「エントレ」


当院では、口にくわえて口のまわりの筋肉と舌を動かす訓練器具「エントレ」をお取り扱いしています。元日本歯科大学教授の稲葉繁先生が、正しい呼吸と飲み込みの機能を保つことを目的として考案されたものです。

効果には個人差があり、すべての方の口呼吸が改善するとお約束できるものではありません。また、鼻がつまっている方はまず耳鼻咽喉科の治療が先です。ご興味のある方には、診察のうえで適応と費用(自由診療・保険適用外)をご説明します。


入れ歯の選択肢について


歯を失った部分を補う方法には、いくつかの選択肢があります。


種類 費用 主な利点 主な注意点
保険の入れ歯 保険適用 費用の負担が小さい。短期間で作れる。修理もしやすい 床が厚く、熱を感じにくい。バネが目立つことがある。支えの歯への負担がかかりやすい
ノンクラスプデンチャー 自由診療 金属のバネがなく見た目が自然 たわみやすく、支えの歯や歯ぐきへの負担が生じることがある。修理や調整に制約がある
金属床の入れ歯 自由診療 床が薄く、熱が伝わりやすい バネで支える構造そのものは保険の入れ歯と同じ
ドイツ式テレスコープ義歯 自由診療 バネを使わず、残った歯に茶筒のように被せて支える。安定性が高い 支えの歯を削る必要がある。費用と治療期間がかかる。支えの歯を将来失う可能性はゼロではない

「高いものが良い」という話ではありません。 今の入れ歯の調整で噛める状態に戻る方もいらっしゃいますし、保険の入れ歯で長く問題なくお使いの方もいらっしゃいます。

一方で、支えの歯が減ってきた方、何度作り直しても合わなかった方、他院でインプラントが難しいと言われた方には、残っている歯を活かして噛む力を取り戻す設計として、テレスコープ義歯という選択肢があります。


当院での治療の流れ・費用・期間・リスク


ご相談の段階


・無料メール相談:ホームページのフォームから。費用はかかりません
・来院相談 5,500円(税込):
レントゲン(パノラマ)を含み、お口の状態と考えられる選択肢をご説明します

自由診療の費用の目安(すべて税込)


精密検査・診断 33,000円(税込):型取り・かみ合わせの記録などをもとに、治療計画を確定します。(ドイツ式テレスコープ義歯の治療に進まれる場合、この費用は治療費に含まれます)


ドイツ式テレスコープ義歯:片あご 1,650,000円〜4,120,000円(種類・支えとなる歯の本数によって変わります)


総入れ歯:片あご 1,430,000円/上下 2,750,000円


※これらはすべて自由診療(保険適用外)で、費用は全額自己負担となります。診断のうえで総額を確定してご提示いたします。最新の料金は料金ページをご確認ください。


治療期間の目安


おおむね半年〜1年程度が目安です。むし歯や歯周病の治療から始める場合はさらに期間がかかります。お口の状態によって大きく変わりますので、診断のうえで具体的な見通しをお伝えします。


ドイツ式テレスコープ義歯


当院の総入れ歯(自由診療)




リスク・副作用(必ずお読みください)


・テレスコープ義歯では、支えとなる歯を削る必要があります
・支えとなる歯も天然の歯である以上、将来的にむし歯・歯周病・破折などで失われる可能性があります
・新しい入れ歯に慣れるまで数週間かかることがあり、その間は複数回の調整が必要です
・装着当初は違和感や発音のしにくさが生じることがあります
・清掃が不十分だと、支えの歯にむし歯や歯周病が起こります。定期的な検診と清掃が欠かせません
・あごの骨は年月とともに変化するため、将来的に調整や修理、作り替えが必要になる場合があります
・使用する材料によっては、金属アレルギーが生じる可能性があります
・口呼吸の改善や訓練器具の使用は、効果に個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるものではありません
・自由診療は医療費控除の対象となる場合があります。詳しくは所轄の税務署にご確認ください


よくあるご質問


Q. 口呼吸を治せば、集中力は上がりますか。


A. 「必ず上がります」とはお答えできません。研究で示されているのは、鼻から吸うときと口から吸うときで脳の酸素の使われ方や活動のリズムに差があった、という限られた範囲の結果です。ただし、鼻には空気を加湿・加温し、ほこりをこしとる働きがあり、口が乾かないことは口の中の健康にとって確かな利点です。

Q. 鼻がつまっていて、口を閉じたくても閉じられません。


A. その場合は、まず耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。鼻で呼吸ができる状態を作ることが先で、歯科の対応はその後になります。


Q. 口が乾くので、入れ歯安定剤を毎日使っています。よくないでしょうか?


A. 一時的にお使いになるのは差し支えありませんが、毎日手放せない状態は、入れ歯が今のお口に合っていないサインでもあります。一度、調整が必要かどうかを確認されることをおすすめします。

Q. もう歯がほとんど残っていません。今さら気にしても遅いのでは。


A. そんなことはありません。残っている歯の本数にかかわらず、噛める状態を作ることはできます。歯がボロボロで受診をためらっていらっしゃる方を、私たちは日常的に拝見しています。その状態を責めることは決してありません。


最後に


口呼吸は、それ自体が病気ではありません。けれど、口が乾くことは、むし歯・歯周病・入れ歯の不安定さと確かにつながっています。そしてその先には、歯を失い、噛めなくなり、また口が閉じにくくなるという輪があります。

脳への影響については、まだ分からないことがたくさんあります。それでも、口の中で起きていることは、今日から確かめられます。

朝起きたときの口の乾き、家族に言われた「口が開いているよ」のひとこと。それを手がかりに、一度お口の状態を確認してみませんか。これからの時間を、食べたいものを食べて、人と会って、笑って過ごすために。

ご相談は、当院ホームページの予約フォーム、無料メール相談、またはお電話で承っております。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療効果を保証するものではありません。治療の適応・効果・リスクは個人差があり、診察のうえで判断いたします。記事中の費用はすべて自由診療(保険適用外)の税込価格で、変更となる場合があります。実際の費用は診断後にお見積もりとしてご提示します。

参考文献

・Sano M, et al. Increased oxygen load in the prefrontal cortex from mouth breathing: a vector-based near-infrared spectroscopy study. NeuroReport. 2013;24(17):935-940.
・Zelano C, et al. Nasal Respiration Entrains Human Limbic Oscillations and Modulates Cognitive Function. Journal of Neuroscience. 2016;36(49):12448-12467.
・Lundberg JO, et al. Nitric oxide in exhaled air / Nasal nitric oxide in man. Acta Physiologica Scandinavica ほか.
・厚生労働省 e-ヘルスネット「歯周病」「睡眠時無呼吸症候群」
・日本歯科医師会「テーマパーク8020」ドライマウス

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住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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