【災害時、入れ歯がないと食べられない|今日からできる口の備え】本八幡の歯科医師が解説

query_builder 2026/08/21

地震は、あなたが入れ歯を外して眠っている時間にも起こります。はめる間もなく避難し、避難所で食べられずに苦労された方がいたと報告されています。災害に備えて口のためにできることを、市川市本八幡の歯科医師がお話しします。

非常持ち出し袋の中身を思い浮かべてみてください。水、乾パン、常備薬、懐中電灯、モバイルバッテリー。ご家族の分まで用意されている方も多いと思います。

では、入れ歯のことは入っていますか?


その地震、あなたが入れ歯を外している時間に来るかもしれません


入れ歯をお使いの方の多くは、夜、寝る前に外して洗浄剤に浸けておられると思います。翌朝、洗ってから口に入れる。毎日のあたりまえの習慣です。

けれど災害は、その「あたりまえ」が通用しない時間に起こります。

阪神・淡路大震災は、多くの方がまだ眠っていた早朝に発生しました。当時、入れ歯をお使いだった方の中には、はめる余裕もないまま avoiding 家を飛び出し、そのまま避難所での生活に入られた方が少なくなかったと報告されています。倒壊した自宅に戻れず、洗面所に置いたままの入れ歯を取りに行けなかった方もおられたそうです。

そして避難所で配られるのは、おにぎり、パン、カップ麺。入れ歯がなければ、噛めません。

支援物資が届いても食べられない。周りの人は食べているのに、自分だけ食べられない。しかも「入れ歯がなくて」とは言い出しにくい。人前で口を開けることもためらわれる。そうした状況が、数日ではなく数週間、数か月と続くことがあります。

これは特別に運の悪い方に起きた話ではありません。夜、入れ歯を外して眠っている方のほとんどに、同じ可能性があります。


「自分のことは後回し」の方ほど、備えが抜け落ちています


こうしたお話をすると、多くの方がこうおっしゃいます。

「そこまで考えていませんでした」

無理もないと思います。当院にいらっしゃる方には、長いあいだご家族の介護をされてきた方、お子さんやお孫さんのお世話に時間を使ってこられた方が本当に多くいらっしゃいます。ご家族の薬は把握していて、備蓄も家族の人数分そろえてある。それなのに、ご自分の歯のことだけは何年も後回しになっている。

「痛くなったらその時に行けばいい」
「もう歳だから、このままでいい」

そう思っているうちに、噛める歯が少しずつ減っていく。やわらかいものばかり選ぶようになり、旅行や会食に誘われても気が重くなる。写真を撮るときは口を閉じて笑う。

そうやってご自分を後回しにしてきた方ほど、いざというときに困りやすい状況に置かれている——それが、私がこのお話をしたい理由です。


災害時、口の中で起きること


① 食べられない
まず、噛めないことによる問題です。

災害時の食事は、どうしても炭水化物に偏ります。おにぎり、パン、麺類。これらは入れ歯がなくても飲み込めてしまうため、「なんとかなっている」ように見えます。けれど噛めないまま食事を続けると、たんぱく質や野菜を十分にとることが難しくなり、体力の低下につながっていきます。

避難生活は、それ自体が体にこたえます。眠れない、寒い、落ち着かない。そこに栄養不足が重なれば、持病のある方ほど影響を受けやすくなります。


② 口の中が不潔になり、肺炎のリスクが高まる
もうひとつ、あまり知られていない問題があります。

災害時は水が貴重になり、歯みがきや入れ歯の洗浄が後回しになります。すると口の中で細菌が増えます。この細菌が、唾液や食べ物とともに気管へ入り込むと、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の原因になることがあります。

過去の大きな災害では、避難生活の中で亡くなった方——いわゆる災害関連死——のうち、肺炎が占める割合が高かったという報告があります。これを受けて、災害時の口腔ケアの重要性が広く指摘されるようになりました。

口を清潔に保つことは、単に虫歯を防ぐという話ではなく、命に関わる問題として扱われているということです。


今日からできる「入れ歯の防災」5つ


まず、今お使いの入れ歯のままでもできる備えをお伝えします。今夜からできることばかりです。


1. 入れ歯ケースを枕元に置く
洗面所ではなく、寝室の手の届くところに。夜間の地震で、真っ暗な中を洗面所まで取りに行くのは危険です。倒れないよう、引き出しや箱の中にしまうのがおすすめです。


2. 非常持ち出し袋に「口のセット」を入れる
歯ブラシ、入れ歯用ブラシ、洗浄剤、入れ歯安定剤、そしてウェットティッシュ。水が少ない状況では、少量の水でうがいをして拭き取るだけでも違います。義歯洗浄剤は場所をとらないので、ぜひ加えてください。


3. 入れ歯に名前を入れておく

避難所では、同じような入れ歯が並んで取り違えが起こることがあります。義歯に氏名を入れておく方法があります。


4. 予備の入れ歯があれば、持ち出し袋へ

作り替えて使わなくなった古い入れ歯をお持ちの方は、念のために捨てずにとっておいてください。今の口には合わなくても、何もない状態よりはずっとましです。


5. 合わなくなったまま使い続けない

これが一番大切です。ぐらつく入れ歯、痛くて外している入れ歯は、いざというときに頼りになりません。平時に合わせておくことが、そのまま災害への備えになります。


こんなサインがある方は、今のうちに一度点検を


ひとつでも当てはまる方は、災害の前に確認しておかれることをおすすめします。

・入れ歯を入れると痛くて、外している時間のほうが長い
・話しているときや笑ったときに、入れ歯が浮く・落ちる
・入れ歯安定剤を使わないと不安で外出できない
・バネ(クラスプ)がかかっている歯がぐらついてきた
・お肉やお漬物など、噛みごたえのあるものを避けるようになった
・入れ歯を作り直したが、前のほうがまだよかったと感じている


「外さずに使える入れ歯」という選択肢


ここからは、入れ歯そのものの選び方のお話です。

一般に、保険の入れ歯は就寝時に外していただくのが基本とされています。残っている歯や歯ぐきの粘膜に力がかかり続けるのを避けるためです。バネがかかっている歯には特に負担が集中しますので、夜のあいだ休ませる必要があるのです。

一方、当院で扱っているテレスコープ義歯(ドイツ式入れ歯)は、残っている歯に金属の内冠をかぶせ、その上から入れ歯側の外冠をはめ込む構造をしています。バネで引っかけるのではなく、茶筒のふたのように差し込んで固定する仕組みです。

この構造のため、力が一部の歯に集中しにくく、お口の状態によっては就寝中も装着したままお使いいただける場合があります。当院でも、診査のうえでその方針をお伝えすることがあります。
この場合は就寝前にご自身の歯と入れ歯をきれいに磨き装着してお休みしていただきます。

なお、テレスコープ義歯は日常の使い勝手を重視した設計で、見た目にバネが見えないという特徴もあります。人前で笑うことをためらってきた方から、ご相談をいただくことの多い治療です。


テレスコープ義歯の写真




入れ歯の4つのタイプ ― 公平に比べてみます


どれが優れているという話ではなく、それぞれに向き・不向きがあります。



保険の入れ歯 ノンクラスプデンチャー 金属床義歯 テレスコープ義歯
費用 安い(保険適用) 自由診療 自由診療 自由診療
作製期間 短い 比較的短い 中程度 長い
見た目 バネが見えることがある バネが見えない バネが見えることがある バネが見えない
支えとなる歯への負担 バネのかかる歯に集中しやすい 支えとなる歯にかかる 保険の入れ歯に比較しすると緩和 分散させる設計
就寝時 外すのが基本 装着したまま外すのが基本装着したまま

修理・調整 しやすい 素材により制限あり 比較的しやすい 可能だが専門的な対応が必要
主な注意点 合わなくなりやすい 支えとなる歯の保護効果は限定的 費用がかかる 支えとなる歯を削る必要がある

費用を抑えて早く作りたい方には、保険の入れ歯という選択肢があります。


費用・期間・リスクについて(自由診療)


テレスコープ義歯および自由診療の総入れ歯は、健康保険が適用されない自由診療です。ご検討にあたって必要な情報をお伝えします。


費用の目安(税込)


・テレスコープ義歯(片顎)

  165万円〜412万円
・総入れ歯(上下)

  275万円/(片顎)143万円


残っている歯の本数や設計により金額が変わります。診査・診断のうえで総額をお示しいたします。


治療期間の目安


おおむね半年〜1年程度。お口の状態や、治療前に必要な処置(虫歯・歯周病の治療など)の量によって前後します。来院回数も多くなりますので、通える見通しが立つかどうかも含めてご相談ください。


リスク・副作用


・支えとなる歯を削る必要があります。削った歯は元には戻りません
・支えとなる歯の状態によっては適応とならない場合があります
・装着後、慣れるまでに違和感や発音のしにくさを感じることがあります
・清掃が不十分だと、支えとなる歯が虫歯や歯周病になることがあります。定期的な検診と清掃が必要です
・強い力がかかると、破損や外れが起こることがあります
・加齢やお口の変化に伴い、調整や修理が必要になることがあります


向いている方/慎重に判断する方


ご相談をおすすめしたい方


・今の入れ歯が合わず、外している時間が長い方
・残っている歯を、これ以上減らしたくないとお考えの方
・他院でインプラントは難しいと言われた方
・人前で笑うこと、外食や旅行をあきらめたくない方


慎重に判断が必要な方


・支えとなる歯の状態が良くない場合(まず歯周病の治療が必要です)
・通院の回数を確保することが難しい場合
・費用のご負担が生活に無理を生じる場合


よくあるご質問


Q. 今の入れ歯をつけたまま寝ても大丈夫ですか?


A. お使いの入れ歯の種類と、歯ぐきや残っている歯の状態によります。自己判断で装着したまま眠るのはおすすめできません。一度、診させてください。

Q. 高齢なのですが、今から作り直す意味はありますか?


A. 何歳からでも、噛めるようになることの意味は小さくありません。ただし治療期間や通院回数を考えると、無理のない範囲での選択が大切です。ご事情をうかがったうえで一緒に考えます。

Q. 予備の入れ歯だけを作ることはできますか?


A. ご希望に応じて対応できる場合があります。ただし保険には回数の制限がありますので、詳しくはご相談ください。

Q. 相談だけしてもよいですか?


A. はい。当院ではメールでの無料相談を承っています。まずは今の状況をお聞かせください。


備えは、平時にしかできません


災害が起きてから入れ歯を作ることはできません。避難所には歯科医院はありません。

今、噛める状態にしておくこと。今、合う入れ歯を持っておくこと。それがそのまま、いざというときの備えになります。

そして、これは災害のためだけの話ではありません。しっかり噛めることは、毎日の食事のおいしさであり、人前で笑える自信であり、これから先の健康の土台です。ご家族のために時間を使ってこられた方に、今度はご自分のためにその時間を使っていただきたいと思っています。

入れ歯のこと、噛み合わせのこと、どんな小さなことでもかまいません。まずはホームページのご相談フォーム、またはお電話からお声がけください。


本記事で紹介したテレスコープ義歯および自由診療の総入れ歯は、健康保険が適用されない自由診療です。費用・治療期間は目安であり、お口の状態により異なります。治療の効果には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。実際の治療方針は、診査・診断のうえでご説明いたします。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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