【フレイルは口から始まる|噛める入れ歯で栄養と体力を守る】市川市の歯科医師が解説

query_builder 2026/08/26

半年で2〜3kgやせた、歩くのが遅くなった——それは「年のせい」ではなくフレイルのサインかもしれません。フレイルの入口には「噛めないお口」があります。千葉県市川市のイーストワン歯科本八幡が、5つの質問でできるセルフチェックと、噛める入れ歯で栄養を立て直す考え方をご説明します。


「フレイル」という言葉をご存じですか?


フレイルとは、加齢にともなって心身の力が弱まり、虚弱になっている状態を指します。健康な状態と、介護が必要な状態の中間にある段階だとお考えください。日本老年医学会が2014年に提唱した概念で、英語の frailty(虚弱)を語源としています。

大切なのは、フレイルは「戻れる可能性がある段階」だと考えられていることです。要介護状態になってからでは元に戻すことは簡単ではありませんが、フレイルの段階で栄養・運動・社会参加に取り組めば、健常な状態に近づける可能性があると報告されています。だからこそ、早く気づくことに意味があります。


5つの質問でセルフチェック


国立長寿医療研究センターが開発した「簡易フレイル・インデックス」をご紹介します。「はい」「いいえ」でお答えください。


質問 はい いいえ
体重減少:6か月で2〜3kgの体重減少がありましたか? 1点 0点
歩行速度:以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか? 1点 0点
運動:ウォーキング等の運動を週に1回以上していますか? 0点 1点
記憶:5分前のことが思い出せますか? 0点 1点
疲労感:(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする 1点 0点

合計点の見方

・3点以上:フレイル
・1〜2点:プレフレイル(フレイルの前段階)
・0点:健常


いかがでしたか?この5項目は、国際的に使われているフレイルの評価基準(体重減少・疲労感・活動量の低下・歩行速度の低下・筋力の低下)を、ご自宅で答えられる形にしたものです。


「まだ1点だから大丈夫」ではありません


ご注意いただきたいのは、プレフレイル(1〜2点)の段階が、実はいちばん取り返しがつきやすく、いちばん見逃されやすいということです。「最近ちょっと疲れやすい」「食が細くなった」——ご本人もご家族も、それを老化として受け流してしまいます。

そして、この5項目のどれとも直接には書かれていないのに、すべての土台になっているものがあります。お口です。


なぜ、フレイルの入口が「口」なのか?


東京大学高齢社会総合研究機構が千葉県柏市で行った大規模な追跡調査(通称・柏スタディ)では、「オーラルフレイル」=お口のささいな衰えが注目されました。

オーラルフレイルとは、噛む力の低下、舌の動きの低下、滑舌の悪化、残っている歯の減少、硬いものが食べにくい、むせるようになった——といった、それ単独では病気とは呼ばれない小さな変化のことです。

この調査では、オーラルフレイルに該当する方は、該当しない方に比べて、その後の身体的フレイルの発生が約2.4倍、サルコペニア(筋肉量と筋力の低下)が約2.1倍、要介護認定が約2.4倍、総死亡が約2.1倍という関連が報告されています(Tanaka T, et al. 2018)。

「歯が悪いだけ」が、数年後の体そのものに関わってくる。これがいま、歯科と老年医学の両方で共有されている見方です。


噛めなくなると、体で何が起きるのか?


順番はとてもはっきりしています


1.歯を失う・入れ歯が合わない → 硬いものが噛めない
2.やわらかいものばかりになる → お肉・魚・根菜・繊維質を避けるようになる
3.たんぱく質とエネルギーが足りなくなる → 低栄養
4.筋肉が落ちる(サルコペニア) → 歩く速度が落ちる、疲れやすい、転びやすい
5.活動量が減り、外出や人と会う機会が減る → さらに食欲が落ちる


3〜5がぐるぐる回る状態を「フレイル・サイクル」と呼びます。先ほどのチェックで「体重減少」「歩行速度」「疲労感」に点がついた方は、すでにこの輪の中に入っている可能性があります。


低栄養は、感染への抵抗力にも関わります。栄養状態が悪いと免疫の働きが落ち、かぜやインフルエンザにかかりやすくなったり、指先の小さな傷の治りが遅れて化膿しやすくなったりすることが知られています。「よく噛めない」は、風邪のひきやすさにまで、静かにつながっているのです。


日本の高齢者は、放っておくと低栄養になります


ここは強くお伝えしたいところです。


日本では文化的に、「高齢者は腹八分目がよい」「肉より魚」「野菜中心が健康的」という考えが根強く刷り込まれています。若い頃はそれで正解でした。けれど、70代・80代の体は、若い頃と同じ引き算をすると、あっという間に材料不足になります。

『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、65歳以上のたんぱく質の目標量が、若い世代より高めに設定されています。フレイルやサルコペニアの予防という観点からは、体重1kgあたり1日1.0g以上のたんぱく質が推奨されることが多く、体重50kgの方なら1日50g以上——卵1個・魚1切れ・肉100g・豆腐半丁・牛乳コップ1杯を、毎日きちんとというイメージです。

先ほどのチェックでフレイル・プレフレイルに当てはまった方は、減らすのではなく、増やしてください。(ただし、腎臓病などで医師から食事制限を受けている方は、必ず主治医の指示を優先してください。)


そして——「増やしたくても噛めない」方へ


ここまで読んで、こう思われた方がいらっしゃるはずです。

「それができるなら苦労していない」

お肉が体にいいことは知っている。でも噛み切れない。ステーキ屋さんに行っても自分だけハンバーグ。りんごは丸かじりできないから、すりおろすか、食べない。会食や旅行の予定が入ると、料理の心配が先に立って気が重くなる。人前で入れ歯が外れたらと思うと、大きな口を開けて笑えない。

栄養の話の手前に、噛める口という前提があります。 そこを飛ばして「たんぱく質を摂りましょう」と言われても、実行できません。


「歯の数」より「使える入れ歯があるか」


もうひとつ、重要な研究をご紹介します。

日本老年学的評価研究(JAGES)による大規模調査では、歯が20本以上残っている方に比べ、歯がほとんどなく、かつ入れ歯も使っていない方では、認知症の発症リスクや転倒のリスクが高いという関連が報告されています。一方で、歯が少なくても入れ歯を使っている方では、そのリスクが低い傾向が示されました(Yamamoto T, et al. 2012 ほか)。

つまり、分かれ目は「歯を失ったかどうか」だけではありません。失ったあとに、噛める状態を取り戻しているかどうかです。

歯を失うことは、年齢を重ねれば起こりえます。問題は、そのまま放置するか、噛める状態に戻すか。ここは、ご自身で選べる部分です。


こんなサインは要注意(入れ歯が合っていない可能性)


いま入れ歯をお使いの方は、次のリストをご確認ください。


□硬いものを無意識に避けている(お肉、たくあん、いか、りんご、せんべい)
☐ 食事に時間がかかるようになった/食べる量が減った
☐ 入れ歯安定剤を使わないと不安になった
☐ 話していると外れる、笑うと浮く
☐ 食べ物が入れ歯の下に入り込む
☐ バネをかけている歯がぐらついてきた/その歯が痛む
☐ 入れ歯のバネが見えるのが気になって、口元を手で隠す癖がついた

☐ 作り直しても「こんなものだ」と言われた


3つ以上当てはまる方は、入れ歯の性能ではなく、設計そのものが合っていない可能性があります。


とくに注意していただきたいのが、バネをかけている歯のぐらつきです。保険の部分入れ歯は、残った歯にバネ(クラスプ)をかけて支えます。噛むたびにその歯は横方向に揺さぶられ、支えている歯のほうが先に傷んでいくことがあります。1本抜けるたびに入れ歯が大きくなり、また次の歯にバネがかかる——この連鎖で歯を失っていく方は少なくありません。


入れ歯の選択肢を、公平に比べてください


入れ歯には大きく4つの方向性があります。どれが優れているという話ではなく、目的が違います。



保険の入れ歯 ノンクラスプデンチャー 金属床義歯 ドイツ式テレスコープ義歯
費用 保険適用 自由診療 自由診療 自由診療
見た目 金属のバネが見える 金属のバネは見えない 金属のバネが見えることがある 金属のバネは見えない
支える仕組み 残った歯にバネ 歯ぐきと樹脂で覆う 残った歯にバネ 支えの歯に内冠をかぶせ摩擦の力
残った歯への影響 バネの歯に横向きの力がかかりやすい 歯ぐきや歯に力が集中する場合がある バネの歯に力がかかる 力を分散させる設計を重視
修理・調整 しやすい 破損時に修理が難しいことがある 破損時に修理が難しいことがある 歯を失った際も修理で対応できる場合が多い
向いている方 まず早く噛めるようにしたい 見た目を優先したい 薄く快適にしたい 残った歯を長く使いたい/作り直しを繰り返してきた


「保険の入れ歯を作り直したが、やはり噛めなかった」

「バネの歯が次々に抜けてきた」

という段階まで来た方には、入れ歯の材料ではなく、力のかけ方の設計を変えるという選択肢があります。それがドイツ式テレスコープ義歯です。


当院がテレスコープ義歯を扱っている理由


テレスコープ義歯は、支えとなる歯に内側の冠(内冠)をかぶせ、入れ歯側の外冠と茶筒のように重ね合わせて固定する構造です。バネで一点を引っかけるのではなく、面で支え、噛む力を分散させる設計を重視してきた方式です。

イーストワン歯科本八幡では、「インプラントは骨の状態や持病の関係でおすすめできない」と言われた方、「残っている歯が数本しかない」と言われた方のご相談を多くお受けしています。残っている歯を、できるだけ活かす設計を目指す——これが当院の考え方です。

一方で、すべての方に適応があるわけではありません。

歯周病の進行度、残った歯の位置と本数、噛み合わせ、清掃を続けられるかによって、適さない場合があります。適応は診査のうえで慎重に判断しています。


ドイツ式テレスコープ義歯

治療の費用・期間・リスク(自由診療)


ドイツ式テレスコープ義歯および精密な総入れ歯は、自由診療(保険適用外)です。


費用の目安(税込)


・ドイツ式テレスコープ義歯(部分入れ歯タイプ・片顎)

  1,650,000円〜4,120,000円
・総入れ歯

  片顎 1,430,000円/上下 2,750,000円
・ご相談・検査

 無料メール相談 0円 /来院相談 5,500円(パノラマX線撮影込み)

   /精密検査・診断 33,000円


種類・支えとなる歯の本数によって金額が変わります。

実際の費用は診査・診断後にお見積もりでご提示し、契約時に総額を確定します。


治療期間の目安


おおむね半年〜1年程度。

仮の入れ歯で噛み合わせを確かめながら進めるため、お口の状態(歯周病治療や根の治療が必要な場合など)により前後します。


リスク・副作用


・支えとなる歯を削る必要があります
・慣れるまで違和感や発音のしにくさが出ることがあります
・支えとなる歯が、むし歯や歯周病になるおそれがあります。毎日の清掃と定期的な検診が欠かせません
・支えとなる歯を失った場合、修理や作り直しが必要になることがあります
・金属を使用するため、金属アレルギーのある方は事前にお申し出ください
・強い力がかかった場合、破損することがあります
・自由診療のため全額自己負担となり、医療費控除の対象にはなりますが健康保険は使えません


よくあるご質問


Q. 80代ですが、いまから作る意味はありますか?


A. フレイルの観点からは、残された時間が短いほど、栄養状態を保つ意味は大きくなります。ただし通院回数や体力のご負担もありますので、まずご相談ください。

Q. 歯が数本しか残っていません。


A. 残っている歯が少ない場合でも、その歯を支えとして活かせることがあります。逆に、その歯の状態によっては総入れ歯のほうが安定することもあり、診査のうえでご説明します。

Q. 途中で歯が抜けたらどうなりますか?


A. 構造によっては、修理をしながらお使いいただける場合があります。作り直しが必要になる場合もありますので、事前にご説明します。

Q. 家族に相談してから決めたいのですが。


A. その場でお決めいただく必要はありません。治療計画書やお見積もりをお持ち帰りいただけます。


最後に


冒頭のチェックで1点でもついた方へ。

フレイルは、栄養で戻せる可能性がある段階です。そして栄養は、噛める口から入ってきます。

「もう年だから」「入れ歯なんてこんなもの」と言われ続けてきた方こそ、一度、いまのお口の状態を確認してみてください。ご自身のために時間を使ってこなかった方が、これから先の10年を、食べたいものを食べて過ごすための相談です。

ご相談・ご予約は、ホームページのご相談フォーム、またはお電話で承っております。



※本記事の治療に関する記載は、当院で実際に行っている診療内容にもとづくものです。効果には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。ドイツ式テレスコープ義歯・精密総義歯は自由診療(保険適用外)です。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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