【部分入れ歯のバネ(クラスプ)の種類】エーカース・キャスト・ワイヤー・RPIの違いと、支えの歯を守る設計を歯科医師が解説

query_builder 2025/04/09

部分入れ歯のバネ(クラスプ)には、金属を型に流して作るキャストクラスプと、ワイヤーを曲げて作るワイヤークラスプがあり、形によってエーカース、ダブルエーカース、RPIなどに分かれます。種類ごとの特徴と、支えの歯を傷めないための設計を歯科医師が解説します。

部分入れ歯のバネで、こんなことが気になっていませんか

  • □ 「クラスプ」「エーカース」など、説明で聞いた言葉の意味を知りたい
  • □ バネをかけている歯が、揺れてきた気がする
  • □ バネが緩んで、入れ歯が外れやすくなった
  • □ バネが折れてしまった
  • □ 笑ったときに、金属のバネが見えるのが気になる

部分入れ歯のバネは、小さな部品ですが、入れ歯の安定と、支えにしている歯の寿命に大きく関わっています。この記事では、バネの種類と特徴を写真でご紹介したうえで、支えの歯を長く守るために、どこを確かめればよいのかをご説明します。


部分入れ歯の「バネ」は、3つの仕事をしています

部分入れ歯は、歯のない場所の歯ぐきに人工の歯を並べ、残っているご自身の歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定します。バネは単に「引っかけて外れないようにする」だけの部品ではありません。

部分 仕事
歯のふくらみの下に入る腕 入れ歯が浮き上がって外れないように押さえる
反対側から歯を支える腕 入れ歯が横に揺れないように支える
歯の上に乗る小さな受け皿(レスト) 噛んだときに入れ歯が歯ぐきへ沈み込むのを止め、噛む力を歯の根の方向へ伝える

なかでも大切なのが、レストです。歯は、根の方向(縦)の力には強く、横に揺さぶる力には弱いつくりをしています。レストがあると、噛む力が縦に伝わりやすくなり、入れ歯が沈み込んで歯ぐきが痛むことも防げます。


作り方による違い:キャストクラスプとワイヤークラスプ

種類 作り方 特徴
キャストクラスプ(鋳造鉤) 歯の型をもとに形を作り、溶かした金属を型に流し込んで作る 歯の形に合わせて作れ、丈夫。レストと一体に作れる。しなりにくいため、あとから曲げて調整できる幅は小さい
ワイヤークラスプ(線鉤) 金属のワイヤーを曲げて作る しなやかで、締まり具合を調整しやすい。細いぶん、変形しやすい
コンビネーションクラスプ キャストとワイヤーを組み合わせて作る それぞれの性質を、歯の状態に合わせて使い分ける

保険診療の部分入れ歯でも、キャストクラスプ(2本の腕のもの、隣り合う2本の歯にかけるもの)、ワイヤークラスプ(レストのないものを含む)、コンビネーションクラスプを使うことができます。


形による種類

エーカースクラスプ(二腕鉤)

金属のバネが付いた部分入れ歯。左はエーカースクラスプ、右はダブルエーカースクラスプ

もっとも基本的な形のバネです。1本の歯を、外側と内側の2本の腕で抱えるように囲み、歯の上にはレストが乗ります。外側の腕が入れ歯の浮き上がりを押さえ、内側の腕が横揺れを支えます。写真の左側がエーカースクラスプです。

ダブルエーカースクラスプ(双子鉤)

隣り合う2本の歯に、それぞれ2本ずつの腕をかける形です。2本の歯の間にレストが乗ります。写真の右側がダブルエーカースクラスプです。歯のない場所から離れた位置で、入れ歯を安定させたいときなどに使います。

RPIクラスプ

お口の中のRPIクラスプ(矢印)。歯ぐき側から伸びた細い金属の腕が歯に触れる形で、目立ちにくい

写真の矢印の部分が、RPIクラスプです。

「R(レスト)」「P(隣の面に沿う板)」「I(Iバー)」という3つの部分からできたバネです。奥の歯がなく、後ろに支えのない部分入れ歯で、手前の支えの歯をねじる力を減らすために考えられた設計です。

奥に支えのない入れ歯は、噛むたびに後ろ側が沈み込み、手前の支えの歯を後ろへ引き倒すような力がかかります。RPIクラスプは、レストの位置や腕の形を工夫して、この力を歯に伝えにくくしています。Iバーは歯ぐき側から細い腕が伸びて歯に触れる形のため、歯を大きく囲むバネより目立ちにくい場合があります。

ただし、歯の形や歯ぐきの状態によっては作れないこともあります。


バネをかけた歯は、なぜ傷みやすいのか

「部分入れ歯のバネをかけた歯から、どんどん抜けていく」と聞いたことがあるかもしれません。実際に、部分入れ歯のバネをかけた歯は、ほかの歯に比べて失われやすいという調査があります。

その調査で、支えの歯を失いやすくする要因として挙げられていたのは、次のようなものでした。

  • ・骨に埋まっている根の長さに比べて、歯の頭が長い
  • ・神経を取った歯である
  • ・歯周病で、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)が深い
  • ・奥歯で上下がしっかり噛み合う場所が少ない

つまり、バネの歯が傷むかどうかは、保険か自費かで決まるのではなく、支えにする歯の状態と、その歯に合った設計になっているかで大きく変わります。

バネの歯に負担がかかる理由には、次のようなものがあります。

  • ・着け外しのたびに、歯が押し広げられる…バネは歯のふくらみを乗り越えて着け外しします
  • ・噛むたびに、入れ歯が沈み込む…レストがなかったり、入れ歯が歯ぐきに合わなくなったりすると、支えの歯が揺さぶられます
  • ・バネのまわりに汚れがたまりやすい…清掃が不十分だと、支えの歯がむし歯や歯周病になりやすくなります
  • ・弱っている歯に、無理な力がかかる…根が短い歯や歯周病の歯を支えにすると、傷みが早く進みます

バネが折れる・緩むのは、なぜ?

金属のバネが折れた部分入れ歯。写真の左側のバネが途中で折れている

バネは、毎日の着け外しのたびに、少し広がっては戻ることをくりかえしています。針金を何度も曲げ伸ばしするといつか折れるのと同じように、長く使ううちに金属が疲れて、折れることがあります。写真は、型に金属を流して作ったバネが折れた入れ歯です。

また、使ううちにバネが少しずつ広がって、締まりが緩くなることもあります。

  • ・ご自分でバネを曲げないでください…締めすぎると歯に強い力がかかり、折れる原因にもなります
  • ・折れたバネは、修理できることが多い…入れ歯をお持ちになってご来院ください
  • ・緩み・痛み・揺れは、早めに調整を…そのまま使い続けると、支えの歯に負担がかかります

支えの歯を守るために、確かめたいこと

部分入れ歯を作るとき、作り直すときには、次の点を担当の歯科医師に確かめてみてください。

  • □ バネにレスト(沈み込みを止める受け皿)が付いているか
  • □ 支えにする歯の根の長さ、神経の有無、歯周病の状態を、レントゲンなどで調べてもらったか
  • □ 奥歯の噛み合わせを確認したうえで設計されているか
  • □ 弱っている歯に無理な力がかからないよう、何本の歯で支えるかが考えられているか
  • □ 完成したあとも、定期的に調整と点検を受けられるか

金属床の部分入れ歯を模型にのせたところ。支えの歯にかぶせた冠にレストの受け皿を作り、入れ歯の力を受け止めている

写真は、自費の金属床の部分入れ歯です。支えの歯にかぶせた冠に、レストがしっかり乗るための受け皿を作り、入れ歯の力を受け止められるようにしています。完成後の点検がなぜ大切かは、【入れ歯は入れて終わりではない】でご説明しています。


金属のバネを使わない部分入れ歯もあります

ノンクラスプデンチャー(自費)

金属のバネの代わりに、歯ぐきに近い色のやわらかい樹脂で歯を抱え込んで固定する入れ歯です。金属が見えないのが利点です。ただし日本補綴歯科学会は、この入れ歯について、適応を誤った場合には、入れ歯が乗っている歯ぐきの下の骨が異常にやせたり、支えの歯が動いたりする重大な問題を起こしうるという見解を示しています。見た目を優先してレストを省いた設計になっていることがあるためです。自費の入れ歯です。費用は診察のうえでご案内します(【ノンクラスプデンチャーの5年後】)。

ドイツ式入れ歯(テレスコープ義歯・自費)

ドイツ式入れ歯(テレスコープ義歯)。右は支えの歯にかぶせる金属の冠(内冠)、左は内冠にはめ込む入れ歯

支えにする歯に金属の冠(内冠)をかぶせ、入れ歯の側には、それにぴったりはまる冠(外冠)を組み込んだ入れ歯です。バネで歯のふくらみを乗り越えて着け外しするのではなく、冠で歯を包み込んで支えるため、噛む力を歯の根の方向へ伝えやすく、支えの歯を横に揺さぶる力がかかりにくくなります。支えの歯を失った場合でも、多くは入れ歯を修理して使い続けられます。

一方で、支えの歯を削って冠をかぶせる必要があり、費用が高く、治療期間も長くかかります。種類と症例はドイツ式入れ歯(部分入れ歯)のページ、入れ歯の種類ごとの写真の比較は【奥歯の入れ歯|写真で見る種類と選び方】と【前歯の入れ歯|写真で見る4つの種類と選び方】でご覧いただけます。


自由診療の費用の目安(すべて税込)

保険の部分入れ歯は保険診療です。以下は自費をご検討になる場合の目安です。正確な金額は、診察と検査のうえでお見積りをお出しします。

項目 費用
無料メール相談 無料
来院相談(レントゲンでお口全体を確認) 5,500円
精密検査・治療計画・お見積り 33,000円
金属床の部分入れ歯 880,000円〜1,320,000円
コーヌステレスコープ 1,810,000円〜4,120,000円
リーゲルテレスコープ 2,190,000円〜3,670,000円
レジリエンツテレスコープ(残っている歯が少ない場合) 1,650,000円〜2,970,000円
  • ・上下両方のあごにドイツ式入れ歯を作る場合は、合計金額から10%を割り引きます
  • ・むし歯・歯周病の治療や抜歯が必要な場合は、別途保険診療の費用がかかります
  • ・完成後の調整は3回まで費用に含まれます。4回目以降の調整と、噛み合わせが安定したあとの定期メインテナンスは別途費用がかかります
  • ・お支払いは一括のほか、3回に分けてお支払いいただくこともできます
  • ・自由診療の費用は、医療費控除の対象になります

※2026年9月時点の費用です。改定する場合があります。

治療期間の目安

  • ・金属床の部分入れ歯 … およそ6か月〜10か月(抜歯した場合はさらにかかります)
  • ・ドイツ式入れ歯 … およそ6か月〜1年(むし歯・歯周病の治療、抜歯後の治りを待つ期間を含む場合はさらにかかります)

知っておいていただきたいリスク

  • ・慣れるまで時間がかかります…装着当初は、違和感や話しにくさ、歯ぐきの痛みが出ることがあります。慣れるまでの期間には個人差があります
  • ・ご自身の歯と同じようには噛めません…噛む感覚や力の加減は、ご自身の歯とは異なります
  • ・支えの歯に負担がかかります…歯の状態や設計によっては、支えの歯がぐらついたり、むし歯や歯周病になったり、根が割れたりすることがあります
  • ・バネや入れ歯が破損することがあります…長く使ううちにバネが折れたり緩んだりすることがあり、修理や調整が必要になります
  • ・ドイツ式入れ歯は支えの歯を削ります…削ったあと、しばらくしみることがあります
  • ・お手入れと定期的な検診が必要です…入れ歯と支えの歯の清掃を怠ると、むし歯や歯周病、口臭の原因になります
  • ・お口の状態によっては適さない方法があります…診査のうえで判断します
  • ・自由診療全般…保険が使えず、費用は全額ご負担になります。ごく一部の金属で金属アレルギーが生じることがあります

よくあるご質問

Q. バネが折れてしまいました。作り直すしかありませんか

折れたバネは、修理できることが多いです。ただし、支えの歯の状態が悪くなっていたり、入れ歯が歯ぐきに合わなくなっていたりする場合は、作り直しをご提案することもあります。入れ歯をお持ちになってご来院ください。

Q. バネが緩くなりました。自分で締めてもよいですか

おすすめしません。締めすぎると支えの歯に強い力がかかり、バネが折れる原因にもなります。歯科医院で調整を受けてください。

Q. バネをかけた歯が揺れてきました

入れ歯の沈み込み、噛み合わせの変化、歯周病などが考えられます。そのまま使い続けると揺れが進むことがありますので、早めにご相談ください。入れ歯の調整で力のかかり方を変えられる場合もあります。

Q. 金属のバネが見えるのが気になります

バネの形や位置を工夫すると、目立ちにくくできる場合があります。金属のバネを使わない方法もありますが、それぞれに注意点があります。見た目と、支えの歯への負担の両方から、合う方法をご説明します。

Q. 相談だけでも大丈夫ですか

はい。その日に治療を決める必要はありません。院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


まとめ

  • 1.部分入れ歯のバネは、外れないように押さえる・横揺れを支える・沈み込みを止める(レスト)の3つの仕事をしています
  • 2.作り方でキャストクラスプとワイヤークラスプ、形でエーカース・ダブルエーカース・RPIなどに分かれます
  • 3.バネの歯が傷むかどうかは、支えの歯の状態と、その歯に合った設計・清掃・噛み合わせで大きく変わります
  • 4.バネが折れた・緩んだ・歯が揺れてきたときは、自分で直さず、早めに調整を受けてください

今お使いの部分入れ歯のバネや、支えの歯のことで気になることがあれば、お聞かせください。入れ歯と支えの歯の状態を拝見し、調整でよいのか、作り直したほうがよいのかをご説明します。

ご相談の流れ

  • 1.ホームページの予約フォーム、またはお電話でご予約ください
  • 2.今お使いの入れ歯があれば、お持ちください
  • 3.レントゲンでお口全体を確認し、今のお困りごとの原因と、考えられる方法をご説明します(来院相談 5,500円)
  • 4.考えられる治療それぞれの費用・期間・困る点をお伝えします。お持ち帰りいただき、ご家族とご相談のうえでお決めください

まずはメールでという方のために、院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


参考文献

  • ・Tada S, Ikebe K, Matsuda K, Maeda Y. Multifactorial risk assessment for survival of abutments of removable partial dentures based on practice-based longitudinal study. J Dent. 2013;41(12):1175-1180.
  • ・日本補綴歯科学会.ノンクラスプデンチャーに関する現時点における(社)日本補綴歯科学会としての見解.
  • ・Fueki K, Ohkubo C, Yatabe M, et al. Clinical application of removable partial dentures using thermoplastic resin—Part I: definition and indication of non-metal clasp dentures. J Prosthodont Res. 2014;58(1):3-10.

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応や結果には個人差があります。実際の診断・治療方針は、必ず歯科医師の診察を受けたうえでお決めください。

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