片側の一番奥から奥歯が2本ないとき、選べる治療は限られます
片側の一番奥から連続して奥歯が2本ない場合、ブリッジは作れません。残る選択肢はインプラントか入れ歯ですが、どちらが良いかは残っている歯の状態で変わります。入れ歯の設計が支えの歯の寿命を分ける理由を、市川市本八幡の歯科医師が説明します。
「反対側で噛めているから、そのままにしている」
この状態で来院される方は、とても多くいらっしゃいます。痛みもなく、食事も一応できてしまうので、後回しになりやすいのです。
けれど、そのあいだにゆっくりと変化は進みます。いざ治そうと思ったときには、歯のない場所だけでなく、他の歯の治療も必要になっていることがあります。
まず知っておいていただきたいこと:ブリッジは作れません
ブリッジは、歯のない部分の両隣の歯を削って、つながった被せ物をかぶせる治療です。橋をかけるように、両側に土台が要ります。
一番奥の歯と、その手前の歯。この2本が続けてない場合、奥側に土台になる歯がありません。橋の片方の端を支えるものがないので、ブリッジは成立しないのです。
無理に作ろうとすると、手前の2本だけを削って土台にし、そこから奥へ橋を突き出す形になります。これは支えの歯にかなりの負担がかかる設計で、手前の2本のどちらかが神経を抜いた歯であれば、折れたり割れたりする危険があります。
そのため、選択肢はインプラントか入れ歯の2つになります。
奥歯を2本失うと、お口と体に何が起きるか
奥歯は「大臼歯」と呼ばれ、親知らずを除くと上下左右に2本ずつあります。噛む面が広く、根の本数も多い(上あごは3本、下あごは2本)、力を受け止めるための歯です。
この2本がないと、次のようなことが起こります。
反対側の歯に負担が集中します
片側でしか噛めなくなるので、噛める側の歯に力が集中します。使い続けた側の歯が先に傷んでいく、ということが起こります。
噛み合っていた相手の歯が伸びてきます
上下の歯は、噛み合うことでお互いの位置を保っています。片方がなくなると、噛み合う相手を失った歯が、空いた方向へ少しずつ移動します。
これが進むと、いざ入れ歯やインプラントを入れようとしたときに入れるすきまがなくなっています。そうなると、移動してきた歯を先に処置する必要が出てきて、治療の範囲も期間も費用も増えます。
放置すればするほど、治療が大がかりになるのはこのためです。
顔の左右のバランスが変わります
奥歯のある位置には、頬骨から下あごに向かって「咬筋」という太い筋肉が付いています。奥歯で噛むときに使う筋肉です。片側で噛まなくなると、その側の筋肉は使われず、たるみやすくなります。
かみ砕けないぶん、胃腸の負担が増えます
大臼歯の役割は食べ物をかみ砕くことです。十分にかみ砕けないまま飲み込むことになれば、そのぶん消化する側の負担が増えます。
治療の選択肢は3つです
① インプラント
歯を失った部分のあごの骨に人工の根を埋め、その上に土台と被せ物を作る治療です。
最大の利点は、残っている歯に頼らずに済むことです。入れ歯もブリッジも「残っている歯に助けを求める」治療ですが、インプラントは歯の根そのものを増やせる唯一の方法です。
ただし、次のような場合はできません。
- ・埋めるための骨の量が足りない
- ・糖尿病、骨粗鬆症、リウマチなど、全身の状態によっては適応にならない
- ・他の歯に歯周病や虫歯が広がっている場合は、まずそちらの治療が必要
外科処置が必要で、費用も自由診療です。またインプラントも、周りに炎症が起きれば抜けることがあります。
② 入れ歯(部分入れ歯)
取り外して使うものです。歯のない部分に人工の歯と歯ぐきの部分を作り、残っている歯に支えを求めます。保険のものと自由診療のものがあります。
入れ歯を選ぶ場合、いちばん大切なのは「設計」です。これは後で詳しくご説明します。
③ 何もしない
選択肢としては存在します。ただし前述のとおり、噛み合う相手の歯が移動してくるので、その動きを止める処置が必要になることがあります。「何もしない」を選ぶ場合も、経過を診ておく必要があります。
「インプラントが第一選択」は、いつでも正しいわけではありません
インターネットでは「奥歯2本なら第一選択はインプラント」と書かれていることも、「入れ歯のほうが良い」と書かれていることもあります。どちらも、条件付きなら正しいのです。
分かれ道になるのは、次の点です。
他の歯がすべて健康で、失った奥歯2本だけが問題の場合
この場合、インプラントが有力な選択肢になります。理由は明快で、残っている健康な歯に新たな負担をかけずに済むからです。骨の量と全身の状態に問題がなければ、ここでしっかり治しておくことで、お口の崩れが止まります。
他の歯にも不安がある場合
ぐらついている歯がある、歯周病が進んでいる、神経を抜いた歯が多い——こうした場合は話が変わります。
失った2本だけを治しても、次に別の歯を失えばやり直しになります。そのとき、インプラントやブリッジは作り直しが難しい治療です。10年20年という時間で見たときに、修理しながら使い続けられる設計のほうが有利になることがあります。
インプラントができない場合
骨の量、持病、費用。理由はさまざまですが、できない方は少なくありません。その場合は入れ歯が選択肢になります。「インプラントができないから妥協する」のではなく、入れ歯の中で設計を選ぶ、という考え方をしていただきたいのです。
なお、一番奥の1本だけの場合は
少し話がそれますが、一番奥の歯(第二大臼歯)1本だけを失った場合は、その部分にインプラントを入れないという判断もよくあります。手前の第一大臼歯まで噛み合っていれば噛む力は保たれますし、上あごではその奥に空洞があって骨の高さが足りないこと、下あごでは神経が近いこと、そして一番奥は歯ブラシが届きにくいことなどが理由です。
「2本ない」のか「1本ない」のかで、考え方が変わります。
入れ歯を選ぶなら、設計が支えの歯の寿命を分けます
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
片側の奥歯2本を補う入れ歯には、大きく2つの設計があります。この考え方は、保険の入れ歯でも自費の入れ歯でも同じです。(以下の写真は保険の部分入れ歯の例です)
設計A:失った側だけの、小さな入れ歯
手前の2本の歯にだけ支えを求める、コンパクトな入れ歯です。お口の中で邪魔になりにくく、違和感が少ないのが利点です。
設計A:片側だけの入れ歯。バネは手前の2本にかかっています
けれど、支えているのは手前の2本だけです。噛むたびに入れ歯が沈み込み、その動きがこの2本を繰り返し揺さぶります。
この2本のどちらかが神経を抜いた歯だと、被せ物が外れたり、歯が折れたりすることがあります。
設計B:反対側まで渡る入れ歯
前歯の裏側などに細い金属やピンク色の部分を這わせて、反対側のしっかりした歯にも支えを求める設計です。
設計B:反対側まで渡る入れ歯。バネは手前の1本と反対側の2本、計3本にかかっています
支える歯は、手前の1本と反対側の2本で計3本。噛む力が分散されるので、1本あたりの負担がぐっと小さくなります。
欠点は、お口の中で覆う範囲が広くなるぶん、違和感が出ることです。ただし多くの方は1〜2週間で慣れます。
患者さんには、この違いが見えません
見た目にはどちらも「奥歯の部分入れ歯」です。装着したときの快適さは、明らかに設計Aのほうが上です。
だから、「違和感が少ないほうがいい」というご希望に沿うと、設計Aになりがちです。そして数年後、支えの2本が傷んでいく。
入れ歯の大きさだけで設計を決めると、早く歯を失うことになります。快適さと、歯を守ることの両方を天秤にかけて決める必要があるのです。
バネを使わない選択肢:リーゲルテレスコープ
片側の奥歯が2本ない場合に当院でご提案することが多いのが、リーゲルテレスコープというドイツ式の入れ歯です。
支えとなる歯に金属の内側のかぶせ物を装着し、入れ歯側には小さな鍵が組み込まれています。お口に入れてから鍵を閉じると、しっかり固定されます。外すときは鍵を開きます。
支えとなる歯3本に、内側のかぶせ物を装着した状態
入れ歯をはめて、鍵を開いている状態
鍵を閉じた状態。金属のバネは外から見えません
- ・金属のバネがないので、外から金属が見えません
- ・バネで歯を引っ掛けるのではなく、かぶせ物で包んで支えるので、噛む力を歯の根の方向へ受ける設計にできます
- ・取り外して洗えるので清潔に保てます
- ・修理しながら長く使える場合が多く、支えの歯を1本失っても、多くの場合は作り直さずに対応できます
以前この入れ歯をお作りした方が、「アワビが食べられた」と喜んでくださったことがありました。奥歯で噛めるということは、食べられるものの幅が変わるということです。
ただし、支えとなる歯を削って内側のかぶせ物を装着する必要があり、元には戻せません。費用も期間もかかります。すべての方に最適な方法ではありませんので、削る範囲と残せる可能性を比べたうえで、適応を慎重に判断しています。
こんなサインが出ていたら、一度ご相談ください
- □ 片側の奥歯が2本以上なく、反対側だけで噛んでいる
- □ 今の入れ歯が、噛むたびに沈む・動く感じがする
- □ 入れ歯を支えている歯が、ぐらついてきた
- □ 噛み合っていた上(または下)の歯が、伸びてきた気がする
- □ 食事のとき、無意識に片側だけで噛んでいる
- □ やわらかい物ばかり選んでいて、旅行や会食が憂鬱
- □ 「あと数本抜いたら総入れ歯ですね」と言われたことがある
- □ 他院でインプラントは難しいと言われた
とくに「噛み合っていた相手の歯が伸びてきた」は、早めの対応が必要なサインです。伸びきってしまうと、入れる場所を作る治療から始めることになります。
費用・治療期間・リスク(自由診療)
ご相談の段階
- ・無料メール相談:ホームページのフォームから。費用はかかりません
- ・来院相談 5,500円(税込):レントゲン(パノラマ)を含み、お口の状態と考えられる選択肢をご説明します
自由診療の費用の目安(すべて税込)
- ・精密検査・診断:33,000円
型取り・噛み合わせの記録などをもとに治療計画を確定します。 - ・ドイツ式テレスコープ義歯:片あご 1,650,000円〜4,120,000円
種類・支えとなる歯の本数によって変わります - ・総入れ歯:片あご 1,430,000円/上下 2,750,000円
診断のうえで総額を確定してご提示し、治療開始後に追加のご請求はいたしません。最新の料金は料金ページをご確認ください。ご契約後、3回に分けてのお支払いをご案内しています。
保険の部分入れ歯をご希望の場合は、保険診療で作製します。金属床義歯は自由診療となり、設計と範囲によって費用が変わるため、診察のうえでご案内します。
治療期間の目安
ドイツ式テレスコープ義歯の場合、おおむね6か月〜1年、通院は20回以上になることが一般的です。虫歯や歯周病の治療、根の治療から始める場合はさらに期間がかかります。
実際の症例(治療当時の費用です)
症例:下あごの一番奥と、その手前の大臼歯2本を失った部位にリーゲルテレスコープを製作
治療期間 約4か月/費用 1,320,000円
※治療当時の費用で、現在の費用と異なります。実際の費用は診査・診断のうえでご案内します。
リスク・副作用(必ずお読みください)
- ・テレスコープ義歯では、支えとなる歯を削る必要があります
- ・支えとなる歯も天然の歯である以上、将来的に虫歯・歯周病・破折などで失われる可能性があります
- ・保険が使えず、費用のご負担が大きくなります
- ・治療期間が長く、通院の回数が必要です
- ・新しい入れ歯に慣れるまで数週間かかることがあり、その間は複数回の調整が必要です
- ・装着当初は違和感や発音のしにくさが生じることがあります
- ・出し入れの練習が必要です
- ・清掃が不十分だと、支えの歯に虫歯や歯周病が起こります。定期的な検診と清掃が欠かせません
- ・あごの骨は年月とともに変化するため、将来的に調整や修理、作り替えが必要になる場合があります
- ・使用する材料によっては、金属アレルギーが生じる可能性があります
- ・残っている歯の本数や歯ぐきの状態によっては、適応にならない場合があります
- ・自由診療は医療費控除の対象となる場合があります。詳しくは所轄の税務署にご確認ください
よくあるご質問
Q. 反対側で噛めているので、急いで治す必要はありませんか。
A. 痛みがないので急ぎに感じにくいのですが、噛み合っていた相手の歯が移動してくるため、時間が経つほど治療が大がかりになります。移動しきってからでは、入れる場所を作る治療から必要になります。
Q. インプラントと入れ歯、結局どちらが良いのですか。
A. 残っている他の歯の状態によって変わります。他の歯がすべて健康なら、残った歯に負担をかけないインプラントが有力です。他の歯にも不安がある場合は、修理しながら使える設計の入れ歯が有利になることがあります。レントゲンと模型を見ないと、どちらとも申し上げられません。
Q. ブリッジは本当にできないのですか。
A. 一番奥とその手前の2本が続けてない場合、奥側に土台になる歯がないため、通常のブリッジは作れません。手前の2本だけを土台にして奥へ橋を突き出す形は、支えの歯への負担が大きく、おすすめできる設計ではありません。
Q. 違和感の少ない小さな入れ歯にしたいのですが。
A. お気持ちはよく分かります。ただ、小さな入れ歯は手前の2本だけで支えることになり、その2本の寿命を縮めることがあります。違和感と、歯を守ることのどちらを優先するかを一緒に考えさせてください。
Q. インプラントは難しいと言われましたが、他に方法はありますか。
A. 骨の量や持病でインプラントが難しい方でも、残っている歯を活かす入れ歯の設計ができる場合があります。ただし残っている歯の状態によりますので、診査が必要です。
Q. 歯を削るのが不安です。
A. 削る量や範囲は方法によって異なります。削らずに済む選択肢も含めて、利点と欠点をご説明したうえで、一緒に決めていきます。
最後に
同じ「片側の奥歯が2本ない」でも、残っている歯の状態、骨の状態、ご年齢、これからどう過ごしたいかによって、最適な方法は変わります。お知り合いの方と同じ場所・同じ本数がなくても、答えが同じとは限りません。
当院では、ご相談を2つの段階に分けています。
- 1.無料メール相談 … 費用はかかりません。今のお悩みをお送りください
- 2.来院相談(5,500円・パノラマレントゲン込み) … お口を拝見し、考えられる方法と概算をお伝えします
いきなり治療をお勧めすることはありません。「今のまま経過を見ましょう」というご説明で終わることもあります。
千葉県市川市・本八幡のイーストワン歯科本八幡です。成田市・佐倉市・市原市・江戸川区など、少し離れた地域からもお越しいただいています。
これからの時間を、食べたいものを食べて、人と会って、笑って過ごすために。ご予約・ご相談は、当院ホームページの予約フォーム、無料メール相談、またはお電話で承っております。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療方針を示すものではありません。効果や治療結果には個人差があり、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。テレスコープ義歯をはじめとする自由診療は保険適用外で、費用は全額自己負担となります。実際の費用・期間・適応は、診査・診断のうえでご案内いたします。記事中の症例の費用は治療当時のものです。
イーストワン歯科本八幡
住所:千葉県市川市八幡3-19-1
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