【口呼吸のデメリット】鼻呼吸と入れ歯の噛み合わせの話

query_builder 2026/08/24

口呼吸には、脳の働きや唾液、入れ歯の安定への影響など、さまざまなデメリットが指摘されています。鼻呼吸が大切な理由と入れ歯の噛み合わせとの関係を、市川市本八幡の歯科医師が解説します。「気づくと口がぽかんと開いている」方はご参考に。

いま、あなたはどちらで呼吸していますか?

この文章を読んでいる今、ご自身の呼吸を少しだけ意識してみてください。安静にしているとき、正しい呼吸は鼻で吸って、鼻で吐く呼吸です。

普段、呼吸のしかたを意識する機会はほとんどありません。けれど、こんな心当たりはありませんか。

  • ・気がつくと口がぽかんと開いている
  • ・朝起きると喉がヒリヒリする、口の中がカラカラに乾いている
  • ・家族に「寝ているとき口が開いている」と言われた
  • ・唇が乾いて、口角が切れやすい

ひとつでも当てはまるなら、日中や睡眠中に口呼吸になっている可能性があります。


鼻呼吸が大切だといわれる理由

鼻は、体にそなわった高性能なフィルター

鼻腔は気道のいちばん最初の入り口です。空気中のほこりや細菌などの異物を取り除き、温めて、湿り気を与えてから肺へ送り届けています。

いっぽう口から吸い込んだ空気は、このフィルターを通りません。冷たく乾いた空気がそのまま喉に直接届くため、喉を傷めやすいと考えられています。

鼻水にも役目があります

わずらわしく感じる鼻水も、鼻や喉の粘膜を湿らせて乾燥から守るはたらきをしています。湿った粘膜は細菌をとらえて侵入を防ぎ、とらえた汚れは鼻水として体の外へ排出されます。

ゆっくりした呼吸は、気持ちを落ち着ける助けに

ヨガなどでは古くから呼吸法が取り入れられてきました。ゆっくりとした深い呼吸は自律神経のうち体を落ち着ける働き(副交感神経)を優位にし、気持ちを落ち着ける助けになると報告されています。反対に短く強い呼吸は、体を活動的な状態に切り替える方向に働くといわれています。呼吸のしかたを意識することは、日々の体調をととのえるうえでも価値のあることだといえます。


口呼吸には、どんなデメリットがあるのか

ここまでは、鼻呼吸が大切だといわれる一般的な理由をお話ししました。ここからは、歯科医師の立場から見えてくる口呼吸のデメリットについてお伝えします。

唇を閉じる力が弱くなると、口は開きやすくなります

加齢によって唇を閉じる力(口唇閉鎖力)が弱くなると、口が開いたままになりやすいといわれています。また、唇がうまく閉じられない状態(口唇閉鎖不全)のある方には、口呼吸をしている方が多いという報告もあります。ご自身が安静にしているとき、舌や唇がどこにあるかを意識したことがない方も多いと思います。安静時の舌や唇の位置については、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。

お口の働きは、ばらばらではなく一緒に落ちていきます

歯科には「口腔機能低下症」という病名があり、口腔衛生・口の乾燥・噛む力・舌と口唇の動き・舌の力・咀嚼機能・飲み込みの機能の7項目を評価し、3項目以上が該当すると診断されます。

つまり、噛む力も、唇を閉じる力も、飲み込む力も、それぞれ別々の問題ではなく、お口の働き全体として一緒に落ちていくものだと考えられているのです。「最近むせるようになった」ことと「奥歯がない」ことは、まったく無関係な出来事ではありません。

口が乾くと、むし歯・歯周病になりやすくなります

口呼吸が続くと、口の中が乾きやすくなります。特に口を開けたまま眠ると、眠っている間ずっと口の中を空気が通り続けます。唾液は、ただの水ではありません。

  • ・食べかすや細菌を洗い流す(自浄作用)
  • ・酸性に傾いた口の中を中性に戻す
  • ・溶けかけた歯の表面を修復する手助けをする
  • ・細菌の増殖を抑える成分を含む

唾液の働きが弱まると、むし歯や歯周病になりやすい環境に傾くと考えられています。むし歯と歯周病は、成人が歯を失う二大原因です。

歯を失うと、さらに口が閉じにくくなるという悪循環

歯を失うと、口元の形が変わります。前歯を失えば口を閉じにくくなり、奥歯を失って噛み合わせの高さが低くなると、口元がすぼまって唇が閉じづらくなる——歯科の臨床では、こうした変化がよく見られます。断定できる大規模な研究があるわけではありませんが、解剖学的には理にかなった変化です。

口呼吸 → 口が乾く → むし歯・歯周病が進みやすくなる → 歯を失う → 口が閉じにくくなる → さらに口呼吸

という輪ができあがってしまうことがあります。この輪は、どこかで断ち切らないかぎり回り続けます。

眠っている間の口呼吸といびきについて

日中よりも注意していただきたいのが、眠っている間の口呼吸です。口を開けて眠ると舌が喉のほうへ落ち込みやすくなり、空気の通り道が狭くなって、いびきが起こりやすくなります。もし大きないびき、呼吸が止まっていると指摘されたことがある、日中に強い眠気があるという場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。

こちらは歯科ではなく医科(呼吸器内科・睡眠外来など)の領域です。心当たりのある方は、まず医科の受診をご検討ください。


合わない入れ歯でも、同じことが起こります

入れ歯を使っているから安心、とは言い切れません。診療の場でよく見受けられるのは、次のようなことです。

唾液が減ると、入れ歯は外れやすくなります

総入れ歯が歯ぐきにぴたりと吸いつくのは、接着しているからではありません。入れ歯と歯ぐきのあいだにある、ごく薄い唾液の層が、コップとガラス板が水で貼りつくのと同じ原理で入れ歯を保持しています。

ですから、口呼吸などで唾液が減ると、入れ歯が浮きやすく外れやすくなる、乾いた歯ぐきが擦れて痛みや傷が生じやすくなる、話しているときや笑ったときに動く感じがする、といったことが起こりやすくなります。「入れ歯が合わない」と感じている原因が、入れ歯の形だけでなく、口の乾きにもあるかもしれません。

人工歯はすり減ります

一般の入れ歯の人工歯はレジン(樹脂)でできており、長く使うほど摩耗します。しかも奥歯側のほうが前歯側より速くすり減るため、噛み合わせの高さが少しずつ低くなり、当たり方も変わっていきます。すると噛む力が前方に集中し、前歯のあたりの顎の骨がやせるのを早めると説明されています。入れ歯は「一度作ったら終わり」ではなく、定期的な点検と調整が必要なものだとお考えください。

噛み合わせの高さが下がると、お顔の下半分の高さや口元の印象にも関わってくることがあります。この点についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

合わない入れ歯は、余計な力で噛んでいます

合わない入れ歯を使っている方(平均67.7歳・21名)を対象に、噛むときの筋肉の働きを測った研究があります。噛み合わせを修正して高さを回復させたところ、より少ない筋肉の労力で、それまでと同じだけ噛めるようになりました(噛む力の最大値そのものは変わりませんでした)。

裏を返せば、合わない入れ歯のままでは、噛むたびに余計な負担がかかっているということです。痛みや不安定さを避けて、片側だけで噛むようになる方も少なくありません。

舌が、入れ歯を押さえてくれています

入れ歯が動くとき、無意識に舌で押さえている方がいらっしゃいます。これは悪い癖ではなく、体が入れ歯を安定させようと補ってくれている状態です。入れ歯そのものの安定が十分であれば、舌はその役目から解放され、本来の食べる・飲み込む・話すという働きに集中できます。こうしたことはご自身では気づきにくいものです。「もう慣れているから大丈夫」と思っている方ほど、一度見せていただく価値があります。


「もう年だから」と、ご自分のことを後回しにしていませんか

ここまで読んで、思い当たることがあった方もいらっしゃるかもしれません。ご家族の介護やお子さん・お孫さんのことで手いっぱいで、自分のことは後回し。歯が悪いのは分かっているけれど、通う時間もないし、いまさら治しても——。そう感じている方は少なくありません。

人前で口を開けて笑えない。やわらかいものばかり選んでしまう。せっかく旅行や会食に誘われても、食事のことを考えると気が重い。その状態が何年も続くと、噛まない食事に体が慣れてしまいます。やわらかいものを丸のみに近い形で食べる習慣が続けば、噛む力も、飲み込むための舌や喉まわりの筋肉も、使う機会が減っていきます。年齢を重ねてからの飲み込みにくさは、こうした日々の積み重ねと無関係ではありません。

呼吸も、噛むことも、飲み込むことも、すべて同じお口という場所で起きていることです。


こんなサインがあれば、一度ご相談ください

次の項目に心当たりがないか、確認してみてください。

  • □気づくと口が開いている/朝、口の中が乾いている
  • □いびきをかく、呼吸が止まっていると言われたことがある
  • □入れ歯が動く、外れる、痛くて奥では噛めない
  • □硬いものを避けるようになった
  • □食事のとき、むせることが増えた
  • □入れ歯のバネが見えるのが気になって笑えない
  • □長年、同じ入れ歯を調整せずに使っている
  • □他院で「インプラントは骨が足りないので難しい」と言われた

3つ以上当てはまる場合、噛み合わせの高さや入れ歯の適合を一度見直す価値があります。


今日からできること

口呼吸が気になる場合、まずご自身で試せることがあります。

鼻づまりがあるなら、まず耳鼻咽喉科へ

鼻で息ができない状態のまま口を閉じようとしても、閉じられません。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎など、耳鼻科の治療で改善するものが原因のことがあります。順番として、まず鼻の通りを確保することが大切です。

よく噛んで食べる

噛むこと自体が、唾液を出す最も確実な刺激です。やわらかいものばかりの食事が続くと、唾液の分泌も口のまわりの筋肉も使われにくくなります。噛める状態を取り戻すことは、口の乾きへの対策にもなります。

寝室の乾燥を防ぐ

冬場やエアコンをつけたままの就寝時は、加湿を心がけてください。それだけでも、朝の口の乾き方は変わります。


入れ歯には、いくつもの選択肢があります

「入れ歯」とひとくちに言っても種類はさまざまです。それぞれに向き不向きがあり、費用も大きく違います。入れ歯の種類全体についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。

保険の入れ歯

保険診療です。床がプラスチックで厚みが出やすく、バネが見えることがあります。費用は保険適用となります。

ノンクラスプデンチャー

金属のバネがなく見た目が自然です。ただし土台が歯ぐきに沈み込みやすく、支えの歯に負担がかかる場合があります。修理がしにくい点にも注意が必要です。自由診療で、費用は診察のうえでご案内します。

金属床の入れ歯

床が薄く、食べ物の温度が伝わりやすいのが特徴です。バネの構造は保険の入れ歯と同じです。自由診療(部分入れ歯)で、費用は880,000円〜1,320,000円、治療期間の目安は6か月〜10か月です(抜歯などが必要な場合はさらにかかります)。バネをかける歯に負担がかかること、慣れるまで違和感があること、将来調整や修理が必要になる場合があることなど、注意点もあります。

ドイツ式テレスコープ義歯

残っている歯に内冠をかぶせ、その上から入れ歯をはめ込む方式です。バネを使わず、残った歯全体で支える設計です。費用は高く、支えとなる歯を削る必要があります。自由診療です。

大切なのは「どれが優れているか」ではなく、残っている歯の本数・骨や歯ぐきの状態・ご予算・通える回数に対して、どれが合うかです。


ドイツ式テレスコープ義歯という選択肢について

当院が力を入れているのが、ドイツ式のテレスコープ義歯です。バネで隣の歯に引っかけるのではなく、残った歯に内冠をかぶせ、その上に入れ歯をはめ込む構造をとります。歯を包み込むように支えるため装置が安定しやすく、しっかり噛める状態を目指せる設計です。インプラントが難しいと言われた方の選択肢のひとつにもなります。詳しくはドイツ式入れ歯(部分入れ歯)のページをご覧ください。残っている歯が3本以下と少ない場合の選択肢についてはこちらの記事もご参照ください。

テレスコープ義歯の入れ歯(左)と、残っている歯にかぶせる金属の内冠(右)

費用・期間・リスクについて(お読みください)

・自由診療(保険適用外)です。正確な金額は診察と検査のうえで確定します。最新の料金は料金ページでご確認いただけます。

項目 費用
来院相談5,500円
精密検査・治療計画・お見積り33,000円
コーヌステレスコープ1,810,000円〜4,120,000円
リーゲルテレスコープ2,190,000円〜3,670,000円
レジリエンツテレスコープ(残っている歯が少ない場合)1,650,000円〜2,970,000円
総入れ歯(片顎)1,430,000円
総入れ歯(上下)2,750,000円

・治療期間の目安:おおむね6か月〜1年、通院回数20〜40回程度。歯周病や根の治療が必要な場合はさらにかかります。

・リスク・副作用

  • ・支えとなる歯を削る必要があります
  • ・完成後、慣れるまで違和感や発音のしにくさを感じることがあります
  • ・支えとなる歯が虫歯や歯周病になると、修理や作り直しが必要になる場合があります
  • ・毎日の清掃と定期検診が欠かせません
  • ・お口の状態によっては適応とならないことがあります

すべての方にお勧めするものではありません。適応は慎重に判断しています。


鼻呼吸・飲み込みのトレーニング器具について

日常のセルフケアとして、口や舌のまわりの筋肉を使うトレーニング器具「エントレ」を当院でお取り扱いしています。使い方や、どのような方に向くかは院内でご説明しますので、気になる方はお声がけください。

口腔機能トレーニング器具「エントレ」本体とケースの写真

ただし器具はあくまで補助です。噛み合わせや入れ歯そのものに原因がある場合は、まずそちらを整えることが先になります。効果には個人差があり、すべての方に同じ結果が得られるとお約束できるものではありません。

お渡しする際は、噛み合わせやお口の状態を確認したうえで、使い方や続ける目安をご説明します。


よくあるご質問

Q. 鼻から吸って口から吐くのは、口呼吸になりますか

安静にしているときは、鼻から吸って鼻から吐くのが自然な呼吸です。ただし、話しているときや運動しているときに口から息を吐くのは、呼吸として普通に起こることです。呼吸の分類は主に「どこから吸うか」で判断されることが多く、吐く息をどちらから出すかについての厳密な学術的な決まりがあるわけではありません。気になる場合は、安静にしているときに口が開いていないかを目安にしてみてください。

Q. 口呼吸を治せば、集中力は上がりますか

上がるとは言い切れません。健康な成人9人を対象にした小さな研究で、口呼吸をしているときのほうが、鼻呼吸のときよりも脳の前頭前野(考えたり集中したりするときに働く部分)で酸素の負荷が大きくなっていた、という報告はあります。ただしこれは「脳に届く酸素の量が減った」という意味ではなく、酸素の使われ方・交換の負担が増えていたというものです。被験者9人の短時間の実験ですので、「鼻呼吸にすれば頭が良くなる」「集中力が上がる」と言い切れる根拠ではありません。

Q. 口呼吸を治せば、入れ歯の問題も解決しますか

順番は逆のことが多いです。噛み合わせの高さや入れ歯の適合を整えることで、口が閉じやすくなるケースがあります。また鼻づまりなど耳鼻科の領域が原因の場合もありますので、必要に応じて耳鼻咽喉科の受診をお勧めすることもあります。

Q. いびきや呼吸が止まっていると言われました。歯医者に相談すればいいですか

まずは医科(呼吸器内科や睡眠外来など)の受診をおすすめします。日中に強い眠気があるなどの場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。まず医科で原因を確かめることが先になります。

Q. 口が乾くので、入れ歯安定剤を毎日使っています。よくないでしょうか

一時的にお使いになるのは差し支えありませんが、毎日手放せない状態は、入れ歯が今のお口に合っていないサインでもあります。一度、調整が必要かどうかを確認されることをおすすめします。入れ歯安定剤についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています。

Q. 歯がボロボロで、恥ずかしくて行けません

どのような状態でも、そのまま拝見します。責めることはありません。

Q. すぐ治療を決めなければいけませんか

いいえ。ご説明した内容をお持ち帰りいただき、ご家族と相談してからで構いません。

Q. 60代・70代からでも相談できますか

はい、十分にご相談いただけます。年齢にかかわらず、今のお口の状態に合った方法を一緒に考えることができます。「もう年だから」とためらう必要はありません。今の状態を知ることから始めていただければと思います。


まずは、今のお口の状態を知ることから

呼吸のしかたも、噛むことも、飲み込むことも、毎日休みなく続いていることです。だからこそ、少し整えるだけで日々の心地よさが変わります。

当院では、今のお口のお悩みや呼吸のこと、これからの治療への疑問など、どんなことでもお気軽にお話しいただける相談の場をご用意しています。ご自身のお口の状態に合った進め方を、順を追ってわかりやすくご説明いたします。

当院のご相談は次のとおりです。

  • ・無料メール相談:ホームページのフォームからお気軽にお問い合わせください。診察・レントゲン撮影は行いません
  • ・来院相談 5,500円(税込):パノラマX線撮影を含み、現状と考えられる選択肢、おおよその費用をご説明します
  • ・精密検査・診断 33,000円(税込):詳しい検査と確定した治療計画のご提案

ご予約はホームページの予約フォーム、またはお電話で承っております。「口が開いてしまうのが気になる」「入れ歯が何年も同じままだ」——それだけで十分な受診理由です。

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療効果を保証するものではありません。効果や経過には個人差があります。紹介した研究結果は集団の傾向を示すものであり、個々の方に同じことが起こることを示すものではありません。掲載の費用は自由診療(保険適用外)の目安であり、実際の費用は検査・診断のうえでご案内します。最新の料金はホームページの料金ページをご確認ください。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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