【がんと診断されてから歯科に慌てて来る方へ】—— 手術前に口の中を整えることで、治療の副作用と回復期間が変わる話

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「がんと言われた。治療が始まる前に、歯医者にも行っておいたほうがいいと聞いたけれど……」


「手術の前に歯科を受診するよう言われたが、なぜ必要なのか理由がよくわからない」


「口の中のことまで気が回らない。でも、もしかして重要なの?」


この記事を読んでいる方、もしくはご家族が、そのような状況にいるかもしれません。 結論から言います。

手術・がん治療の前に口の中を整えることは、治療の副作用を軽くし、回復を早め、場合によっては治療をより安全に進めることに繋がります。

「歯は後でいい」ではなく「歯は今すぐやっておくべきこと」なのです。

でも、がんの診断直後は精神的にも体力的にも余裕がない。何から手をつければいいか、わからないのも当然です。この記事では、なぜ必要か・何をすれば良いか・当院でできることを、できるだけわかりやすくまとめました。


<この記事でわかること>


・ なぜ手術・がん治療の前に歯科受診が必要なのか(医学的な理由)

・ 口の状態が悪いと、具体的に何が起きるのか

・ 治療前に歯科でやっておくべきことのリスト



⚠️ この記事の読み方について


この記事はがん・手術の治療方針についてアドバイスするものではありません。口腔ケアの重要性と、歯科でできることをお伝えするものです。治療の判断はすべて担当の医師にご相談ください。また、がん治療中・治療後の口腔ケアについては、主治医・歯科医師と連携して進めることが重要です。


なぜ手術・がん治療の前に歯科が必要なのか——3つの理由


「歯と手術は関係ないのでは」と思う方も多いですが、口の中の状態は手術・治療の経過に直接影響します。


理由① 口の細菌が、手術後の感染を引き起こすことがある


口の中には数百種類・数千億の細菌が常在しています。健康なときは問題なくても、全身麻酔の手術では口から気管に管を通す「気管挿管」が行われます。このとき口内の細菌が気管・肺に入り込み、術後肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こすリスクがあります。 歯石は石灰化した細菌の塊です。手術前に歯石を除去し、口腔内の細菌数を減らすことで、術後感染リスクを下げることができます。研究では、手術前に専門的な口腔ケアを受けた患者さんは術後肺炎の発症率が有意に低いことが示されています。


理由② がん治療の副作用が、口腔内の状態で変わる


抗がん剤治療を受ける方の40%以上に、口腔内の副作用(口内炎・口腔乾燥・味覚障害など)が生じると報告されています。そして口の中が不衛生だと、これらの副作用が重症化しやすくなります。 治療前に虫歯・歯周病を処置し、口腔内を清潔に保つことで、副作用の程度を軽くできる可能性があります。副作用が軽減されると食事がとりやすくなり、体力の維持・治療の継続がしやすくなります。 放射線治療が頭頸部に当たる方の場合は特に注意が必要です。放射線照射後に抜歯を行うと、顎骨壊死のリスクが高まります。そのため治療前に問題のある歯を処置しておくことが強く推奨されています。


理由③ 噛めないと、回復に必要な栄養が取れない


術後・治療中の回復には栄養が欠かせません。しかし口の状態が悪い(入れ歯が合わない・奥歯がない・噛み合わせが崩れている)と、食べられるものが限られ、十分な栄養が取れません。 「食べられない→体力が落ちる→回復が遅れる」という悪循環を防ぐために、しっかり噛める口を事前に整えておくことが大切です。入れ歯の調整・噛み合わせの確認は、治療開始前に行うべき準備のひとつです。


私は訪問歯科の経験から、入院中に口腔内の状態が急激に悪化するケースを多く見てきました。手術後は歯磨きの頻度が落ちる・唾液が減る・免疫が低下するという環境が重なり、口の中の細菌が爆発的に増えることがあります。手術前に口腔環境を整えておくことは、入院中の口腔環境を守ることにも繋がります。「歯医者は治療が終わってから」ではなく「治療が始まる前に」来ていただきたいです。



担当医から「歯科受診をするよう」と言われた方また、言われていなくても「手術が決まった」という方はご相談ください。  


 歯科医院では以下のことを行います。


・口腔内の精密な診査(虫歯・歯周病・粘膜の状態・入れ歯の確認)

・歯石除去・スケーリング(細菌の温床を除去)

・グラつく歯や折れるリスクがある歯の処置

・入れ歯の調整(治療中も快適に使えるよう整備)

・口腔衛生指導(入院中も自分でケアできるよう指導)




治療前・治療中・治療後——時期別にやっておくこと


治療開始2週間前までに(理想は1ヶ月前) 余裕があれば、治療開始の1ヶ月前から準備を始めるのが理想です。最低でも2週間前までに歯科を受診してください。(奥歯がない、虫歯や歯周病を放置している方はこの限りではありません。)


治療前に歯科でやっておくこと


✓  口腔内の全体診査(虫歯・歯周病・骨の状態・粘膜確認)

✓  歯石除去・クリーニング(細菌数を下げる)

✓  虫歯の応急処置(痛みが出そうな歯を先に処置)

✓  グラグラの歯・折れるリスクの高い歯の確認と処置

✓  入れ歯の確認・調整(治療中も使えるか確認)

✓  自宅でのケア方法の指導(歯ブラシ・洗口液など)

✓  骨粗鬆症薬・血液サラサラの薬など服用中の薬の確認


治療中(入院・通院治療期間)


治療中は口腔内の状態が変化しやすい時期です。自己ケアと専門的ケアの両方が重要です。


治療中に気をつけること


✓  毎食後の歯磨き・うがいを継続する(軟らかい歯ブラシで)

✓  口腔乾燥には保湿ジェル・こまめな水分補給で対応

✓  口内炎が出た場合は早めに医師・歯科に相談

✓  入れ歯は使用後に必ず清潔にする

✓  口の中の痛み・腫れ・出来物は放置しない


治療後(回復期・維持期)


治療が一段落したら、できなかった歯科治療を再開します。定期的な歯科管理が、再発予防・全身の健康維持にもつながります。


✓治療中に先送りした虫歯・被せ物の処置を行う

✓放射線治療を受けた方は、照射後の抜歯リスクについて歯科医師に確認する

✓3〜4ヶ月ごとの定期クリーニングを継続する

✓口腔乾燥が続く場合は、かかりつけ歯科医師に相談する


特に注意が必要な方——優先して歯科を受診してほしいケース


次のいずれかに当てはまる方は、特に早めの歯科受診をお勧めします。


・  頭頸部・口腔・食道のがん治療を受ける方:放射線照射範囲に顎が含まれる場合、治療前の歯科処置が特に重要。


・骨粗鬆症の薬(ビスフォスフォネート系・デノスマブ)を服用中の方:抜歯後の顎骨壊死リスクがあるため、必ず事前に歯科医師に申告を。


・血液をサラサラにする薬(ワーファリン・抗血小板薬など)を服用中の方:処置前に薬の管理が必要なため、服用薬一覧を持参してください。


・糖尿病がある方:感染リスクが高く口腔ケアの効果が出にくい場合があります。血糖コントロールの状況も合わせてお伝えください。


・現在、歯が大きくグラついている・膿が出ている方:手術前に対処が必要な可能性があります。早急に歯科受診を。


・かなり長期間(数年以上)歯科に行っていない方:自覚症状がなくても、歯石・歯周病が進行している可能性があります。


<よくいただくご質問>


Q.  治療開始まで時間がありません。それでも歯科に来る意味がありますか?


A.  あります。1回のクリーニングでも、口腔内の細菌数を大幅に減らすことができます。「もう遅い」ということはありません。時間がない旨を初診でお伝えください。優先的に対処すべき処置に絞って、対応します。


Q.  治療開始まで時間がありません。それでも歯科に来る意味がありますか?


A.  あります。1回のクリーニングでも、口腔内の細菌数を大幅に減らすことができます。「もう遅い」ということはありません。時間がない旨を初診でお伝えください。優先的に対処すべき処置に絞って、短時間で最大の効果を出せるよう対応します。


Q.  抗がん剤治療中です。今から歯科に行っても大丈夫ですか?


A.  治療中も歯科ケアは重要ですが、白血球が下がっている時期(骨髄抑制期)は処置に注意が必要です。主治医に「歯科を受診したい」とお伝えし、処置が可能な時期を確認した上でご来院ください。クリーニング・口腔衛生指導は多くの場合対応可能です。


Q.  骨粗鬆症の薬を飲んでいます。抜歯は安全ですか?


A.  ビスフォスフォネート系薬剤・デノスマブを使用中の方は、抜歯後に顎骨壊死が起きるリスクがあります。抜歯が必要な場合は、主治医・処方医と連携した上で慎重に対応します。まず服用中の薬の名前・用量を確認の上、歯科受診時に必ずお伝えください。


まとめ—


「口の準備」は治療の準備 この記事でお伝えしたことを整理します。


・手術・がん治療の前に口腔内を整えることは、術後感染リスクの低減・副作用の軽減・回復の促進に繋がる。「歯は後でいい」ではなく、治療開始前に行うべき準備のひとつ。

・治療前2週間〜1ヶ月前が理想。時間がない場合も「1回のクリーニングだけでも」する価値がある。

・頭頸部がん・骨粗鬆症薬服用中の方は特に早めの歯科受診が重要。

・治療中・治療後も継続的な口腔ケアが回復と再発予防を支える。


がんの診断は、本人にとっても家族にとっても、大きなショックです。そのなかで「歯医者にも行って」と言われても、正直なところ後回しにしたくなる気持ちはよくわかります。でも、口の中を整えることは治療の「準備」のひとつです。少しでも体への負担を減らし、回復を助けるために——当院でできることを全力でお手伝いします。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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