【合わない入れ歯でやわらかい物ばかり|噛む力と健康寿命のお話】本八幡の歯科医師が解説

query_builder 2026/08/17

「食べられる物」が、いつのまにか減っていませんか?


お肉は薄切りだけ。おせんべいやお漬物は最初からあきらめる。りんごは薄く切って、それでも前歯では噛み切らない。

心当たりのある方は、食べ物のほうを入れ歯に合わせて選んでいる状態です。本来は逆で、入れ歯のほうをお口に合わせるものです。

健康のためにサプリメントを飲んだり、体に良いと聞いた食品を選んだりされている方は多いと思います。それはとても大切なことです。ただ、お口が噛める状態になっていないと、せっかく選んだ食べ物を体が十分に受け取れないことがあります。健康づくりの入口は、実は毎日の「噛む」にあります。


痛くないから、まだ大丈夫——そう思っているうちに


当院にご相談にみえる方の多くは、10年、20年と我慢を重ねてこられた方です。

ご両親の介護、お子さんやお孫さんのお世話。ご家族のことを優先しているうちに、ご自分の歯のことは「そのうち」と後回しになってしまう。歯医者に行く時間もお金も、まず家族に回してこられた方ばかりです。

そして、こんなふうにおっしゃいます。

・人前で口を開けて笑うのがためらわれる
・友人との会食や旅行の食事が、楽しみではなく心配ごとになった
・家族と同じ物を食べられず、自分だけ別のメニューにしている
・入れ歯が外れそうで、外食では奥歯を使わないようにしている


「痛くはないから」「この年になれば皆こんなもの」。そう思って過ごされる方がとても多いのですが、痛みがないことと、きちんと噛めていることは別の話です。


平均寿命と健康寿命には、10年前後の差があります


健康寿命とは、日常的・継続的な医療や介護に頼らずに、ご自身の心身で自立した生活ができる期間のことです。

厚生労働省が公表している令和4年(2022年)の数値では、健康寿命は男性72.57年・女性75.45年、平均寿命は男性81.05年・女性87.09年とされています。差し引くと、男性で約8年半、女性で約11年半。この期間は、程度の差こそあれ、どなたかの助けを借りて暮らす時間ということになります。

決して短くない年月です。だからこそ、この差をできるだけ縮めていく暮らし方が大切だと考えられています。

よく噛めない状態が続くと、体に起こると言われていること
歯を失ったまま、あるいは合わない入れ歯のままでいると、次のようなことが起こりやすくなると指摘されています。

1. 栄養が炭水化物に偏りやすくなる
噛みごたえのあるお肉や野菜、海藻を避けるようになると、麺類やおかゆ、パンなど飲み込みやすい物でお腹を満たしがちになります。たんぱく質やビタミン、食物繊維が不足しやすい食事になっていきます。

2. 体にふんばりが利きにくくなる
立つ、座る、重い物を持つ——こうした動作のとき、人は上下の歯を合わせて食いしばっています。奥歯で支えが取れないと、力を入れにくいと感じる方がいらっしゃいます。

3. 噛む刺激が減る
噛むことと脳の血流や認知機能との関連については、さまざまな研究が行われています。予防を保証できるものではありませんが、噛む習慣を保つことの意義は多くの専門家が指摘しているところです。


4. 舌や頬、飲み込む力が衰えやすくなる
やわらかい物ばかりの食事が続くと、舌や頬の筋肉を使う機会が減ります。飲み込む力が落ちると、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすくなり、誤嚥性肺炎のリスクが高まると言われています。こうしたお口の働きの衰えは「オーラルフレイル」と呼ばれ、近年とくに注目されています。

つまり、噛めるお口を保つことは、単に食事を楽しむためだけのものではありません。ご自分の足で出かけ、ご自分で食べるという毎日を、できるだけ長く続けるための土台でもあるのです。


こんなサインは要注意です


ひとつでも当てはまる方は、一度お口の状態を確かめてみてください。


・硬い物を無意識に避けている
・食事に以前より時間がかかる、または逆にあまり噛まずに飲み込んでいる
・入れ歯を入れると痛いので、食事のときだけ外している
・話していると入れ歯が浮く、外れそうになる
・入れ歯のバネがかかっている歯が、ぐらついてきた
・作り直しても、いつも同じところが当たって痛い
・入れ歯安定剤が手放せなくなっている
・顔の下半分に張りがなくなり、口元のしわが深くなった


とくに「作り直しても同じところが痛い」という方は、入れ歯そのものよりも、かみ合わせや支えとなる歯の状態に原因があることがあります。同じ設計で作り直しを繰り返しても、同じ結果になりやすいのはこのためです。


噛める入れ歯にするための選択肢


入れ歯にはいくつかの種類があり、それぞれに向き不向きがあります。当院では、保険・自費のどちらかを勧めるのではなく、お口の状態とご希望を伺ったうえでご説明しています。



種類 費用 主な特徴 ご留意いただく点
保険の入れ歯 保険適用 費用の負担が軽く、比較的短期間で作れる。まず噛める状態を取り戻す選択肢として有効 プラスチックのため厚みがあり、熱が伝わりにくい。金属のバネが見えることがある。バネのかかる歯に負担がかかりやすい
ノンクラスプデンチャー 自由診療 金属のバネを使わず、見た目が目立ちにくい 素材がたわみやすく、支えの歯や歯ぐきに力が集中することがある。修理や調整に制約がある
金属床の入れ歯 自由診療 床の部分が薄く作れ、食べ物の温度が伝わりやすい 保険の入れ歯より費用がかかる。修理に制約がある。
テレスコープ義歯(ドイツ式) 自由診療 残っている歯に内側の被せ物をかぶせ、それを支えに入れ歯を固定する設計。バネを使わず、力を歯の軸方向に沿って伝える考え方で作られる 支えとなる歯を削る必要がある。費用と治療期間がかかる。残っている歯の状態によっては適応にならない

どれが良いかは、残っている歯の本数と状態、かみ合わせ、そして生活の中で何を優先したいかによって変わります。まずは保険の入れ歯で噛める状態を整えるという判断も、十分にあり得る選択です。


自由診療の費用・期間・リスクについて


当院のテレスコープ義歯および自費の総入れ歯は、いずれも自由診療(保険適用外)です。


・費用の目安(税込):テレスコープ義歯 165万円〜412万円(片顎・種類と支えとなる歯の本数により変わります)/総入れ歯 片顎143万円・上下275万円
・治療期間の目安:おおむね半年〜1年程度。歯の治療やかみ合わせの調整が必要な場合はさらにかかることがあります
・主なリスク・デメリット:支えとなる歯を削る必要があります/治療期間中は仮の入れ歯を使用します/完成後もかみ合わせの調整と定期的な検診が必要です/清掃が不十分だとむし歯や歯周病が起こり、支えの歯を失うことがあります/顎の骨がやせることで、年数の経過とともに調整や修理が必要になります/残っている歯の状態によっては適応にならない場合があります


費用は診察・検査のうえで総額をお示しし、契約時に確定します。金額だけで判断されるものではありませんので、まずは今のお口がどういう状態なのかを知っていただくところから始めてください。


よくあるご質問


Q. この年齢から治療を始めても意味がありますか。
A. 年齢そのものよりも、残っている歯とかみ合わせの状態が判断の材料になります。80代で新しく入れ歯をお作りになる方もいらっしゃいます。


Q. 歯がほとんど残っていません。それでも相談できますか。
A. はい。残っている歯が少ない場合や、まったくない場合の選択肢もご説明できます。

Q. 他院でインプラントは難しいと言われました。
A. 骨の状態や持病の関係でインプラントが難しい方に、別の設計をご提案できる場合があります。適応は慎重に判断しますので、まずは検査でお口の状態を確認させてください。


まずは、今のお口の状態を知るところから


やわらかい物しか食べられない毎日は、慣れてしまうと当たり前になります。けれど、ご家族と同じ食卓で同じ物を食べられること、旅行先の食事を楽しみにできること——それは、これからの時間を自分らしく過ごすための、決して小さくない条件だと思います。

イーストワン歯科では、入れ歯やかみ合わせについてのご相談を承っています。「何年も放っておいてしまった」「どこから話せばいいか分からない」という状態のままで結構です。まずはお口の中を拝見し、今どうなっているのかをご説明するところから始めます。

ご予約・ご相談は、ホームページの予約フォーム、またはお電話で承っております。


※本記事でご紹介した自費の入れ歯治療は自由診療(保険適用外)です。費用・期間は目安であり、お口の状態により異なります。治療には上記のリスク・デメリットを伴い、すべての方に同じ結果をお約束するものではありません。適応の可否は診察・検査のうえで判断いたします。

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イーストワン歯科本八幡

住所:千葉県市川市八幡3-19-1

京成八幡WESTCOURT 2F

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