保険の入れ歯で十分ですか?|保険でできること・自費で変わることを歯科医師が解説

query_builder 2023/10/14

「保険の入れ歯で十分なのかな」と迷っている方へ。保険の入れ歯でできることと難しいこと、合わなくなる理由、自費に変えると変わること・変わらないことを、費用・期間・リスクとあわせて、市川市本八幡の歯科医師が部分入れ歯を中心にまとめました。

今、こんなことに困っていませんか

  • □ 保険の部分入れ歯を使っているが、噛むとゆるんだり外れたりする
  • □ 家族のことを優先してきて、自分の歯のことは後回しにしてきた
  • □ 何度か作り直しているが、しっくりこない
  • □ ほかの歯科医院でインプラントは難しいと言われた
  • □ このまま保険の入れ歯を使い続けてよいのか、自費に変えるべきか迷っている

この記事では、保険の部分入れ歯の仕組みと制度上の決まりを踏まえたうえで、今の入れ歯が保険のままで十分かどうかを考えるための材料をまとめました。入れ歯の種類を写真で比べる説明は【奥歯の入れ歯|写真で見る種類と選び方】、部分入れ歯のバネの種類は【部分入れ歯のバネ(クラスプ)の種類】で詳しくご説明していますので、この記事では重ねてご説明しません。歯が1本も残っていない総入れ歯については【総入れ歯は主に7種類あります。】をご覧ください。ここでは部分入れ歯を中心にお伝えします。


保険の入れ歯のしくみとできること

保険の部分入れ歯は、大きく3つの部分でできています。歯ぐきに当たる部分(床・しょう)には、ピンク色のレジン(プラスチック)が使われます。人工歯は、レジンでできたレジン歯や、レジンとセラミックを混ぜた硬質レジン歯が中心です。そして、残っている歯に引っかけて入れ歯を固定するための金具(クラスプ、バネ)がつきます。

レジン(プラスチック)の床に金属のワイヤークラスプ(バネ)がついた部分入れ歯

クラスプにはいくつかの種類があり、選び方によって見た目や、支えにしている歯にかかる負担が変わります。クラスプの種類については、【部分入れ歯のバネ(クラスプ)の種類】でご説明しています。

保険の入れ歯は、保険診療です。決められた材料と設計の範囲内で、費用を抑えながら、噛む・話す・見た目を回復するという役割を担っています。作ったあとの調整や、割れたり欠けたりしたときの修理も、保険で受けられます。


保険の入れ歯の制度上の決まり

作り直しの決まり

保険の入れ歯には、作り直しの時期についての決まりがあります。前回、有床義歯(入れ歯)を作ってから原則として6か月が経過するまでは、新しく保険で作り直すことができません(遠隔地への転居で通院できなくなった場合や、急に歯の病気で失った歯の本数が変わった場合など、特別な事情があるときを除きます)。

これは作り直せる時期についての決まりであって、入れ歯の材料そのものの寿命を定めたものではありません。痛みや噛みにくさがあれば、6か月以内でも調整を受けることができます。

保険と自費を組み合わせられるか

保険診療と自由診療を、同じ治療の中で組み合わせること(混合診療)は、原則として認められていません。部分入れ歯では、たとえば「型どりは保険で、精密な人工歯だけは自費で」といった組み合わせ方は、制度上できません。

例外として、総入れ歯(歯が1本も残っていない方)の金属床については、保険と自費を組み合わせられる仕組み(選定療養)があります。ただしこの例外は総入れ歯に限られており、部分入れ歯には適用されません。


入れ歯が合わなくなる理由と、研究でわかっていること

入れ歯が合わなくなる理由は、大きく2つに分けて考えることができます。

  • ・保険・自費に共通する理由…歯を失ったところの歯ぐきの下の骨は、時間とともにやせていきます。支えにしている歯や歯ぐきそのものの変化、清掃の状態によっても、合い方は変わってきます
  • ・入れ歯の設計による理由…クラスプ(バネ)で歯に引っかけて支える入れ歯は、噛むたびに支えにしている歯へ横向きの力がかかりやすい構造です。また、床(しょう)の厚みや大きさによって、違和感の出方が変わります

「またゆるんできた」と感じても、ご自身だけのせいとは限りません。また、原因のすべてが保険の入れ歯にあるわけでもなく、歯ぐきの骨の変化や支えにしている歯の状態など、いくつもの要因が重なって起きています。

海外の研究をまとめた報告(46件の臨床研究をまとめた系統的レビュー)では、部分入れ歯で支えにしている歯は、支えにしていない歯に比べて、5年のあいだに抜歯になりやすさがおよそ2倍だったと報告されています。一方で、歯のぐらつきや歯ぐきの溝の深さ(歯周ポケット)は大きく変わらず、歯ぐきの炎症を示す指標だけが高くなっていました。また、5年後に入れ歯そのものが使えていた割合は、金属のバネを使った入れ歯で95.1%、二重の冠で支えるテレスコープ義歯で91.7%となっており、差はみられませんでした。どちらの入れ歯なら歯を守れる、と単純には言えず、支えにしている歯の本数や状態、入れ歯の設計、日々の手入れと定期検診によって結果は変わってきます。

国内の大学病院で部分入れ歯を作った方を追跡した調査(部分入れ歯236床・支えにしている歯856本)でも、支えにしている歯の5年後の残存率は、直接支えにしている歯で86.6%、間接的に支えにしている歯で93.1%、支えにしていない歯で95.8%でした。支えの歯が長持ちするかどうかには、歯ぐきから出ている部分に比べて根が十分に長いか、神経を取ってあるかどうか、歯ぐきの溝の深さ、支え方の種類、奥歯でしっかり噛み合わせられているかどうかなどが関わっていると報告されています。この調査は、保険の入れ歯と自費の入れ歯を区別したものではありません。


保険の入れ歯で十分かを確かめる目安

次のような状態にあてはまるかどうかで、今の入れ歯が生活に合っているかを確かめることができます。

  • ・食べたい物を、入れ歯を理由にあきらめていないか
  • ・話したり笑ったりするときに、金具(バネ)が気になっていないか
  • ・日常生活の中で、入れ歯が外れたりゆるんだりすることがないか
  • ・支えにしている歯に、痛みやぐらつきが出ていないか
  • ・作り直しても、しばらくすると合わなくなることを繰り返していないか

気になる項目があれば、一度、今の入れ歯と支えにしている歯の状態を確かめておくと安心です。診断の結果、「今のままで困っていない」という結論になることもあります。


自費の入れ歯に変えると、何が変わるか・変わらないか

自費の入れ歯に変えることで変わるのは、主に次の点です。

  • ・使う材料や設計を選べるようになります(床を金属で薄くする、金属のバネを見えにくくする、二重の冠で支える など)
  • ・支えにする歯の本数や状態に合わせて、支え方を考えられます
  • ・型どりや噛み合わせの記録、装着後の調整に、時間をかけられます
  • ・費用は高くなり、完成までの期間も長くなります

一方で、自費に変えても変わらないこともあります。

  • ・歯ぐきの下の骨がやせていくこと自体は止められません
  • ・日々の手入れと定期的な検診は、引き続き必要です
  • ・入れ歯の種類によっては、支えにする歯を削ることがあります
  • ・どの入れ歯でも、支えにしている歯の状態によっては、将来その歯を失うことがあります

自費の入れ歯の選択肢

部分入れ歯の自費の選択肢には、主に次の3つがあります。それぞれの詳しい説明は、リンク先の記事でご覧いただけます。

金属床の部分入れ歯

歯型の模型にのせた、床(しょう)の一部が金属の部分入れ歯

床(しょう)の一部を金属にすることで、レジンだけの床より薄く作れます。固定にはクラスプ(金属のバネ)を使います。詳しくは金属床義歯についての記事でご説明しています。

ノンクラスプデンチャー

金属のバネが見えない部分入れ歯

金属のバネの代わりに、歯ぐきに近い色の樹脂で歯を抱え込んで固定します。金属が見えにくいのが特徴です。自費の入れ歯です。費用は診察のうえでご案内します。詳しくは【ノンクラスプデンチャーの5年後】でご説明しています。

テレスコープ義歯(ドイツ式入れ歯)

テレスコープ義歯(左)と、支えの歯にかぶせる金属の内冠(右) ふたと胴体を重ねた金属製の筒。内冠と外冠がはまり合う仕組みのたとえ

支えにする歯に金属の内冠(ないかん)をかぶせ、入れ歯側の外冠(がいかん)を、ふたと胴体のように重ねて固定します。金属のバネを使わず、歯を包み込んで支える設計です。詳しくはドイツ式入れ歯(部分入れ歯)のページをご覧ください。

歯が1本も残っていない方の総入れ歯については、【総入れ歯は主に7種類あります。】とドイツ式入れ歯(総入れ歯)のページをご覧ください。インプラントとの比較はインプラントと入れ歯、条件で選ぶ考え方でご説明しています。


当院の進め方

当院では、まず今お使いの入れ歯と、支えにしている歯の状態を診ることから始めます。ご相談は、次の2つの段階からお選びいただけます。

  • ・無料メール相談…院長が直接メールでお答えします。診察・レントゲン撮影は行いません
  • ・来院相談(5,500円)…パノラマレントゲンでお口全体を確認し、概算の治療計画をご説明します

ご予約は、当院ホームページまたはお電話で承っております。テレスコープ義歯や自費の総入れ歯を選ばれる場合は、仮の入れ歯を使いながら進めますので、歯がないまま過ごす期間はつくりません。


費用と治療期間の目安(すべて税込・自由診療)

保険の入れ歯は保険診療です。以下は、自費をご検討になる場合の費用の目安です。正確な金額は、診察と検査のうえでお見積りをお出しします。最新の料金は料金ページでご確認いただけます。

項目 費用
無料メール相談 無料
来院相談(パノラマレントゲンでお口全体を確認) 5,500円
精密検査・治療計画・お見積り 33,000円
コーヌステレスコープ 1,810,000円〜4,120,000円
リーゲルテレスコープ 2,190,000円〜3,670,000円
レジリエンツテレスコープ(残っている歯が少ない場合) 1,650,000円〜2,970,000円
総入れ歯(上下) 2,750,000円
総入れ歯(片顎のみ) 1,430,000円
金属床義歯(部分入れ歯) 880,000円〜1,320,000円
ノンクラスプデンチャー(部分入れ歯) 自費の入れ歯です。費用は診察のうえでご案内します
  • ・上下両方のあごにドイツ式入れ歯(部分入れ歯)を作る場合は、合計金額から10%を割り引きます
  • ・むし歯・歯周病の治療や抜歯が必要な場合は、別途保険診療の費用がかかります
  • ・完成後の調整は3回まで費用に含まれます。4回目以降の調整と、噛み合わせが安定したあとの定期メインテナンスは別途費用がかかります
  • ・入れ歯の自由診療の費用は、医療費控除の対象になります(詳しくは国税庁の案内をご確認ください)

※2026年9月時点の費用です。改定する場合があります。

治療期間の目安

  • ・テレスコープ義歯・自費の総入れ歯…およそ6か月〜1年
  • ・金属床の部分入れ歯…およそ6か月〜10か月(抜歯した場合は、さらにかかります)

知っておいていただきたいリスク・副作用(自費の入れ歯)

  • ・慣れるまで時間がかかります…違和感や話しにくさが出ることがあります
  • ・調整や作り直しが必要になることがあります…歯ぐきの下の骨は年月とともにやせていくため、裏打ち(内側の作り直し)や調整が必要になることがあります
  • ・テレスコープ義歯は支えにする歯を削ります…内側の冠が外れることや、外側の歯の表面の修理が必要になることがあります
  • ・金属床の部分入れ歯・ノンクラスプデンチャーは、金属のバネや樹脂で歯に引っかけて支えるため、支えにしている歯に負担がかかることがあります。ノンクラスプデンチャーの樹脂はたわみやすく、時間とともに合いにくくなることがあります
  • ・清掃が不十分だと、支えにしている歯がむし歯や歯周病になることがあります
  • ・装着後も、定期的な検診が必要です
  • ・保険の入れ歯に比べて、費用は高く、治療期間も長くなります

参考として、テレスコープ義歯を長期間追跡した海外の調査(463名・554床)では、支えにしている歯の本数と、定期検診に通っているかどうかが長持ちに影響していました。修理が必要になった例としては、外側の歯の表面の修理が26.9%、内側の裏打ち(床の調整)が34.8%、内側の冠が外れたケースが20.6%と報告されています。


よくあるご質問

Q. 今の保険の入れ歯を、このまま使い続けてもよいですか?

はい。困っている点が少なければ、無理に変える必要はありません。気になる症状があれば、一度診させてください。

Q. 保険と自費を組み合わせることはできますか?

部分入れ歯では、一部だけを自費にするといった組み合わせ方はできません。総入れ歯(歯が1本も残っていない方)の金属床に限り、保険と組み合わせられる仕組み(選定療養)があります。

Q. 入れ歯は何年くらいもちますか?

個人差が大きく、年数を一概にお答えすることはできません。支えにしている歯の状態や、手入れ、定期検診の頻度によって変わってきます。

Q. 今使っている保険の入れ歯から、自費の入れ歯に作り替えることはできますか?

お口の状態を拝見したうえで、金属床の部分入れ歯やテレスコープ義歯へのお作り替えをご提案できる場合があります。まずはご相談ください。

Q. 相談だけでも大丈夫ですか?

はい。その日に治療を決める必要はありません。院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


まとめ

  • 1.保険の入れ歯は、レジンの床と人工歯、クラスプ(バネ)でできた保険診療です
  • 2.入れ歯の作り直しには原則6か月という決まりがありますが、これは材料の寿命を示すものではありません
  • 3.部分入れ歯では、保険と自費を組み合わせることはできません(総入れ歯の金属床のみ例外があります)
  • 4.合わなくなる理由には、歯ぐきの骨がやせるなど保険・自費に共通するものと、入れ歯の設計によるものがあります
  • 5.保険で十分かどうかは、優劣ではなく、ご自身の条件で判断するものです

家族のことを優先して、ご自身の歯のことを後回しにしてこられた方も、まずは今のお口の状態を知ることから始めてみてください。支えにしている歯の状態を拝見し、考えられる選択肢と、それぞれの費用・期間・気をつけたい点をご説明します。

ご相談の流れ

  • 1.ホームページの予約フォーム、またはお電話でご予約ください
  • 2.今お使いの入れ歯があれば、お持ちください
  • 3.レントゲンでお口全体を確認し、今の状態と考えられる選択肢をご説明します(来院相談 5,500円)
  • 4.それぞれの費用・期間・気をつけたい点をお伝えします。お持ち帰りいただき、ご家族とご相談のうえでお決めください

まずはメールでという方のために、院長が直接お答えする無料メール相談もご用意しています。


参考文献

  • ・Drummond LB, Bezerra AP, Feldmann A, Gonçalves TM. Long-term assessment of the periodontal health of removable partial denture wearers: A systematic review and meta-analysis. J Prosthet Dent. 2025;134(5):1664-1685.
  • ・Tada S, Ikebe K, Matsuda K, Maeda Y. Multifactorial risk assessment for survival of abutments of removable partial dentures based on practice-based longitudinal study. J Dent. 2013;41(12):1175-1180.
  • ・Wöstmann B, Balkenhol M, Weber A, Ferger P, Rehmann P. Long-term analysis of telescopic crown retained removable partial dentures: survival and need for maintenance. J Dent. 2007;35(12):939-945.
  • ・「有床義歯の取扱いについて」昭和56年5月29日保険発第44号
  • ・「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」平成18年3月6日厚生労働省告示第107号

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の治療効果を保証するものではありません。治療の適応や結果には個人差があります。実際の診断・治療方針は、必ず歯科医師の診察を受けたうえでお決めください。

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